考古学者で冒険家のインディ・ジョーンズ博士の
モーゼの十戒の石版を収めたと伝えられる契約の箱“聖櫃”をめぐる冒険。
「インディ・ジョーンズ」シリーズの第1作。
レイダース
失われた《聖櫃》(アーク)
RAIDERS OF THE LOST ARK
1981
アメリカ
115分
カラー
<<解説>>
考古学者にして冒険家という魅力的なキャラクター、インディ・ジョーンズを生み出した人気シリーズの一作目。アイデアを出した『スター・ウォーズ』のルーカスが製作総指揮し、『未知との遭遇』のスピルバーグが監督を担当。主演は、『スター・ウォーズ』で出世したハリソン・フォードで、知性と野性味を兼ね揃えた主人公を好演。彼にとっても、スピルバーグにとっても、キャリアを語る上で代表的なシリーズとなった。
秘宝を求めて世界を飛び回る考古学者インディ・ジョーンズの大冒険を、ユーモアを交ええながら息をつかせぬテンポで描くアドベンチャー。1930年代という世界大戦前夜の激動の時代を舞台に、ナチスとオカルトという戦争秘話的な設定、大玉トラップのような派手なギミック、秘宝の隠し場所に至るまでの謎解き等、冒険心をくすぐる内容満載で、家族そろって楽しめる作品に仕上がっている。なお、時系列的には、第2作『魔宮の伝説』と第3作『最後の聖戦』の間に位置する物語である。
81年の一作目(本作)を皮切りに、80年代に計三作製作された後、2008年にファンの声に応えて十九年ぶりの続編が製作されたことを思えば、非常に息の長いシリーズである。しかも、『スター・ウォーズ』のように熱狂的なファンに支えられていのではなく、幅広い層から愛され支持されている点では、映画史的にも稀有なシリーズと言える。その所以は、何度も観ていて展開が分かっているのに、また、特に新しい発見があるわけでもないのに、いつも同じところでハラハラドキドキさせられるほどの理屈を超えた面白さである。主人公インディの魅力ももちろん重要だが、肝はなんといっても、徹底的に計算しつくされたアクションやチェイス・シーンではないだろうか。本作は二作目以降より派手さで劣りはするものの、時にコミカル、時にスリリリングなインディの活躍に、チャップリン、キートン、ロイドのような無声映画のヒーローに通ずる普遍性が垣間見えるようである。
<<ストーリー>>
1936年。考古学の教授でオカルトの権威、そして、貴重な古代遺物の収集家という多彩な顔を持つインディアナ(インディ)・ジョーンズ博士は、ある日、友人のマーカスから、陸軍情報部からの客を紹介された。陸軍情報部がインディに会いに来たのは、傍受にしたナチスのカイロ=ベルリン間の無線に、インディがシカゴ大で師事したレイブンウッド教授の名を見つけたからである。
陸軍情報部のマスグローブとイートンの話によれば、ナチスは最近、特別考古学チームを結成して、世界中の宗教遺物を漁っているのだという。陸軍情報部は、レイブンウッドの名と一緒に無線に乗ってきた“タニス開発”、“ラーの杖の冠”などの言葉の意味するところが分からなかったが、インディはそれらの言葉を聞いて驚愕した。カイロ郊外のタニスの町には失われた聖櫃(アーク)があるという伝説があった。聖櫃とは、十戒の破片が収められた契約の箱である。聖櫃はエジプトのファラオによって、エルサレムからタニスへ持ち帰られ、魂の井戸という秘密の部屋に隠したという説があり、その秘密の部屋を指し示すのがラーの杖の冠なのである。聖書によれば、聖櫃は山をも崩し、全土を廃墟と化すという。ナチスが興味を持つのも不思議ではなかった。
ナチスは、レイブンウッドが持っているラーの杖の冠(太陽の形し、真ん中に水晶がはめ込まれたメダル)を手に入れようとするはずである。インディはネパールに飛び、ある一軒の酒場を尋ねた。店を一人で切り盛りする女主人は、レイブンウッドの娘マリオンだった。かつて、インディに捨てられたことを恨んでいるマリオンは、再会を喜ぶどころかインディの顔面に一発。レイブンウッドから預かっているはずのラーの杖の冠を手に入れたいインディは、怒りを爆発させるマリオンをなだめるのだった。その時、ナチスの手先のトートという男が手下を連れた酒場に現れ、ラーの杖の冠を寄越すようマリオンに迫った。インディはトートたちと撃ち合い、マリオンを連れて酒場を脱出。いったんトートの手に渡ったラーの杖の冠も回収するが、酒場は無残に焼け落ちてしまったのだった。
唯一の財産である酒場を失ったマリオンは、成り行きからインディの旅の道連れとして、一緒にカイロへ向かった。インディはナチスの情報を得るべく、友人の発掘屋のサラと会った。案の定、サラはナチスに請われてタニスの発掘を手伝っていた。サラは、ナチスには頭の切れるフランス人考古学者がついていると告げた。その考古学者とは、インディの入手した秘宝をいつも横取りするライバル、ベロックだった。サラは、マリオンの持っていたラーの杖の冠の謎を解くことに協力することを約束するが、もし聖櫃を見つけても近づかないようインディに警告した。聖櫃には常に死が付きまとうというのだ。
インディとマリオンは、カイロの街を歩いていたところ、突然、現地人からの襲撃を受けた。インディが襲撃者と格闘しているうちに、籠の中に潜んでいたマリオンはさらわれしまった。現地人に担がれっていった籠は、弾薬を積んだトラックの荷台へ押し込まれた。インディはトラックを止めようと運転手を撃つが、そのはずみでトラックが横転して爆発してまった。一瞬で炎に包まれたトラックを前にインディはなすすべがなかった。
マリオンを失い意気消沈していたインディは、酒場でベロックと会った。彼が現地人を雇ってインディを襲わせたのだ。「二人は似たもの同士、私は君の影絵だ」と語るベロック。彼は、聖櫃を通信機、つまり、神と話し合える無線装置だと考え、その発見に自信を見せていた。ベロックの挑戦的な態度に我慢ができなくなったインディが思わず銃に手をかけたところへ、サラが迎えにやってきた。
サラの話では、ベロックはラーの杖の冠の表面の複製を持っているという。どのようにして複製を作ったのかは不明だが、事実だとしたら、ベロックに魂の井戸が発見されるのは時間の問題だった。タニスのある地図の間に、ある決まった時間に決まった高さでラーの杖の冠を設置すると、光が魂の井戸の場所を指し示すのである。サラの友人にラーの杖の冠に刻まれた古代文字を読んでもらい、それを設置する高さが判明。だが、古代文字には裏面に続きがあった。裏面の言葉を読むことで、ずっと低く設置しなければならないことが分かった。ということは、表面の複製しか持っていないベロックは、間違った場所を掘っているということになる。インディに運が向いてきた。
インディとサラはタニスの発掘現場に忍び込み、地図の間に正しい高さでラーの杖の冠を設置した。地図の間に光が差し込むと、ラーの杖の冠の中心の水晶を通した光が、街の模型のある一点を指した……。