警察が企業に買収された近未来のデトロイト。
殉職後、サイボーグとしてよみがえった警官の活躍を描く
SFバイオレンス・アクション。
ロボコップ
ROBOCOP
1987
アメリカ
102分
カラー
<<解説>>
ルトガー・ハウアーとのコンビでオランダで活動していた監督ポール・バーホーベンがハリウッドに招かれて撮影した二作目。『トータル・リコール』や『インビジブル』などでSFの監督というイメージのあるバーホーベンだが、本作が初のSF作品である。ロボット警官という漫画的な幼稚な設定と、B級レベルの低予算ながら、それらの制限を超える高次の作品に仕上がり、世界的に大ヒット。バーホーベンはヒットメーカーの仲間入り果たした。バーホーベンの手によるものではないが、ヒットを受けて、続編が二作作られた。また、この頃のヒット映画の多分に漏れず、2011年現在リメイク計画が進行中である。
バーホーベンの作品を語るうえで、“変態”というワードが良く用いられるが、カナダの変態クローネンバーグにも相通ずる悪趣味さが、本作にはいかんなく発揮されている。まず目を引くのは過剰なバイオレンスである。ピーター・ウェラー扮する主人公の刑事の殉職シーンは、射殺というより人体破壊というような惨いもの。ロボット警官の実験台にされた会社員が会議の席上で惨殺されるシーンも、場違いさという点での衝撃度が強い。このようにヒジュアルで不快感を煽る一方で、ドラマで倫理観に訴えかける場面も多くあり、中でも主人公目線で描かれるのロボコップの誕生のくだりは秀逸である。その冷めたような客観性が、一人の人間の体が企業に物のように利用されるという事態のグロテスクさを際立たせていて、非常に胸糞が悪い。
バーホーベンという人はユーモアの使い方もひねくれているようである。劇中にた度々、ニュース番組やCMのパロディがインサートされるが、その笑いは、悲劇的でシリアスな物語を和らげる効果で使われるのではなく、むしろ、主人公を貶めるような毒のある笑いであり、物語の悲惨さを深めているのである。このモキュメンタリー的な手法は、ドキュメンタリーから映像制作のキャリアをスタートさせたバーホーベンならではであり、後の『スターシップ・トゥルーパーズ』でも本作以上に効果的に用いられている。なお、余談だが、もともと『ロボコップ』は、『スターシップ・トゥルーパーズ』の原作である「宇宙の戦士」の企画からスタートしたそうである。
“グロくて、不快”(もちろん、バーホーベン映画のへの最高の賛辞である)な映画であるが、そういった中身に反して、対外的には、ロボコップというキャラクターは、そのデザインや動きを含めて、ポップなものとして親しまれている。今や、『ターミネーター』のT−800と並ぶSFアイコンであるロボコップは、パロディの定番であり、かつては日本のテレビCMのキャラクターに起用されたことすらあった。しかし、公開当時の観客にも、ロボコップのデザインに関しては実はさほど新鮮味がなく、お馴染みのものであった。というのも、日本で子供向けのSFドラマに「宇宙刑事ギャバン」というものがあり、その主人公のデザインから許可を得て、引用されたものだったからである。しかし、ロボコップは、関節を動かす際のモーター音や、角を曲がるときは直角に方向を変えるロボ的動作などの印象深い要素を加えることで、オリジナリティのあるキャラクターに仕上げている。
<<ストーリー>>
荒廃し、犯罪都市と化した近未来のデトロイト。病院、刑務所、宇宙探査と、他の企業が手をつけない事業を成功させ、成長を続けてきたオムニ社は、デトロイト市警から警察事業の運営権を取得した。その目的は、オムニ社がデトロイト郊外に建設を計画しているデルタシティの治安維持に利用することであった。
オムニ社の社長のリチャード・ジョーンズは、重役がせいぞろいした会議で、警察への強力な助っ人として、食事も休憩もいらない未来の警官ロボットED209を発表した。それは、軍用への転用も見越した社長肝いりのプロジェクトだった。だが、オールドマン会長を前にしたデモは故障により失敗。被験者がED209に撃ち殺されるという惨事となった。
社長の座を虎視眈々と狙っていた副社長ロバート・モートンは、社長の失態をチャンスとばかり、自分で進めていたロボコップ計画の完成を急いだ。計画に参加するボランティアの候補となる警官が、既に危険部署に送り込まれている頃であった。
デトロイト市警西分署に、比較的平穏なサウスサイドから若い警官アレックス・マーフィが転任してきた。彼は、ベテラン婦警のアン・ルイスとコンビを組むことになった。ルイスは、拳銃をくるくると回しながらホルダーに納めるマーフィの癖に気づいた。マーフィによれば、息子が夢中になっているヒーロードラマ「TJレイザー」の主人公の真似だという。
マーフィの就任初日のパトロール中、強盗事件発生の無線連絡を受けた。犯人は、警官殺しで世間を騒がしているクラレンス・ボディッカーの一味で、彼らの犠牲者は既に三十数名に上っていた。偶然、現場付近にいたマーフィとルイスは、ボディッカー一味を執念深く追跡し、彼らのアジトを突き止めた。マーフィは果敢にもアジトに乗り込んでいき、一味の一人を追いつめた。が、周囲に潜んで潜んでいたボディッカーたちに囲まれるとなすすべなく、銃で執拗にいたぶられたあげくに頭を撃ち抜かれしまった。ルイスは、無惨な姿で倒れていたマーフィを病院に運んだが、彼が署に戻ってくることはなかった。
マーフィ巡査殺害事件から数日後、西分署にモートンとオムニ社の研究員がやってきた。彼らに誘導されて署に入ってきたのは、銀色に輝く鋼鉄の体を持つロボット警官、ロボコップだった。驚くべき客に色めき立つ署員を後目に、研究員たちは留置所の奥にロボコップの休憩所を設置した。ロボコップは三つの指令を守るようプログラミングされていた。1、市民に奉仕すること。2、その安全を守ること。3、法を順守すること。実は、4つめの指令もあったが、極秘事項扱いとなっていて、彼自身もその内容は知らなかった。
ルイスがロボコップと出会ったのは、射撃場だった。他の警官は、ロボコップの百発百中の射撃の腕にあっけにとられていた。だが、ルイスは、ロボコップが銃をくるくると廻しながら腿のホルダーに収めるしぐさを見逃さなかった。
かくして、ロボコップは西分署の一警官として治安維持のために働くことになった。初日の一晩のうちに強盗、レイプ、立てこもり事件の現場に現れ、彼のいでたちに仰天し、圧倒される犯人を次々と逮捕していった。ロボコップの大活躍はたちまち市民に知られることになり、子供たちからヒーロー的に人気も集めるようになっていった。
ある夜、休憩所で休息をとっていたロボコップは、ボディッカー一味に殺される夢を見た。その夢が肉体的反応となって現れ、彼は激しく体を引きつらせなが目を覚ました。異変に気付いた研究員たちがロボコップを落ち着かせようとするが、彼は立ち上がり署を出て行こうとした。ルイスはロボコップの前に立ちはだかり、名前を尋ねたが答えはなかった。「マーフィ、あなたなのね?」とルイスに言われ、たじろぐロボコップ。だが、ルイスのその言葉が、ロボコップの何かを呼び覚ましたようだった。
ルイスや追ってきた警官を無視して深夜の街に出て行ったロボコップは、ガソリンスタンドで強盗事件な遭遇した。犯人は現れたロボコップの声を聴いてそれが誰かに気付と、恐れおののき「死んだはずだ。殺したのに」と叫んだ。署に戻ったロボコップは、データ室に直行し、先程の強盗犯の顔を照会した。強盗犯は、ボディッカーの仲間のアンソニーだった。さらに彼らの犯歴を調べたロボコップは、マーフィという名の警官がボディッカーに殺されていることを知った……。