酸性雨の降り注ぐ近未来のロサンゼルスを舞台に、
賞金稼ぎ“ブレードランナー”と人造人間“レプリカント”の対決を描く。
後の未来観に多大な影響を与えたSFアクションの金字塔。

ブレードランナー

BLADE RUNNER

1982  アメリカ/香港

117分  カラー



<<解説>>

監督二作目の『エイリアン』のヒットで、一躍人気監督の仲間入りを果たしたリドリー・スコットの三作目。人間と人造人間との対立を描くことで、「人間とは何か?」という哲学的な問いを投げかけたフィリップ・K・ディックのSF小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」が原作。題名はウィリアム・S・バロウズの作品から拝借したものだが、作品の内容とは無関係である。
とにかく秀逸な映像化である。超高層ビルの林立する都市に隙間に東洋的なイメージが散りばめられた近未来のロスは、これまでのSFが提示してきた極端にきらびやか、あるいは、極端に荒れた果てた未来観とは全く異なっていた。これまでにない確かな手触りが感じられる生々しさで描かれていて、整然と猥雑が有機的に入り乱れる様は、荒廃と呼ぶにはあまにも美しく、デストピア的未来像に革新を与えた。
演技で注目すべきは、助演のルトガー・ハウアーであろう。思想家のような神妙に面持ちでレプリカント(人造人間)のリーダーを演じ、主演のハリソン・フォードを食ってしまっている。主人公のブレードランナーを演じているは、もちろんフォードなのだが、勧善懲悪ではないため、対するレプリカント側にも感情移入できるような描かれ方をされている。そのため、フォードよりもハウアーの印象が強い作品となっている。特に主人公に対するハードボイルド風のナレーションがなくなった後のバージョンでは、さらにその傾向が強いようである。
革新的な作品にはよくある話ではあるが、試写での観客の惑いが不安視され、監督にとって不本意な変更が加えられての劇場公開となった。そのため、本作には、公開後に様々な手直しを施された複数のバージョンが存在している。まず、初めにビデオ・リリースされた『インターナショナル・バージョン 完全版』では、劇場版でカットされたシーンが復元されている。続いて、92年にビデオ・リリースされた『ディレクターズ・カット 最終版』では、監督が本来発表したかったもの、という体で、説明的なナレーションを削り、劇場版で追加されたラストが変更されている。2007年には、『最終版』をベースに最新技術で映像を刷新した『ファイナル・カット』が公開された。
2011年現在、リドリー・スコットによる続編の企画の話題が持ちあがっている。




<<ストーリー>>

2019年のロサンゼルス。“ブレードランナー”と呼ばれる賞金稼ぎだったデッカードは、かつての上司から、脱走した四体のレプリカントの始末を命ぜられた。レプリカントとは、人間に代わって危険な仕事や重労働に従事させるために発明さたれ人造人間である。デッカードはレプリカントを見つけ出す技術を持つ腕利きだった。
デッカードはまず、レプリカントの発明者であるタイレル博士を訪ねた。そこでデッカードは、女性型のレプリカントのレイチェルと出会った。デッカードはレイチェルをテストし、彼女がレプリカントであることを知った。だが、偽の記憶を与えられているレイチェルは、そのことに気付いていないようだった。
デッカードは標的のレプリカントの一体、ゾーラを見つけ出し、射殺することに成功した。その時、デッカードは別のレプリカントのレオンに襲い掛かられるが、危ないところをレイチェルに助けられた。二人は愛し合うようになったが、デッカードはレイチェルの始末も命ぜられてしまった……。