二匹の犬と一匹の猫が遠く離れた我が家を目指して旅に出発。
「三匹荒野を行く」をリメイクしたファミリー向け動物ロードムービー。

奇跡の旅

HOMEWARD BOUND:
THE INCREDIBLE JOURNEY

1993  アメリカ

85分  カラー



<<解説>>

飼われている家から遠く離れた牧場に一時的に預けられた二匹の犬と一匹の猫が、自力で我が家目指して旅する姿を描く動物映画。63年のディズニーの実写映画『三匹荒野を行く』のリメイクである。物語はほぼオリジナル通りだが、リメイクに伴い、舞台がイギリスからアメリカに変更になった。オリジナルは、ドキュメンタリー・タッチで、ナレーションに状況を語せるというものだったが、本作は擬人化した動物たちの視点で描かれ、アテレコによって彼らに台詞をあてるという手法をとっている。犬や猫の声のキャストは、マイケル・J・フォックス、ドン・アメチー、サリー・フィールド。続編も作られた。
おしゃべり動物映画は、いつのまにやらファミリー・ピクチャの定番となっているようである。もちろん、動物の擬人化は昔からあったものの、これまでそれはアニメの専売特許であった。それが、CGの発展と共に実写に移行していったといったといったところだろう。『ベイブ』、『ドクター・ドリトル』、『キャッツ&ドックス』。どれもシリーズ化された人気作だ。これらはCG時代以降の作品であり、あたかもしゃべっているように動物たちの口元をCGで動かしている。後者になるにつれ、表情や動きまでCGで描かれ、ほとんどアニメに近づきつつあるのが最近の傾向だろう。
本作『奇跡の旅』は先に挙げた作品とは違い、CGによる口パクは行っていない。理由として考えらせれるのは、製作された93年時点ではまだCGで口の動きを自然に見せられるほど技術が発展してなったか、製作費の都合かである。CGを大々的に取り入れた『ベイブ』の後に公開された続編も口パクを行っていないところをみると、予算の都合である可能性が高い。もし、技術も予算もあったとしたら、CGによる口パクを取り入れていたのかもしれないが、結果としては、台詞と演者との同調をCGではなく動物の演技に依存することになったことが功を奏し、数多のおしゃべり動物映画の中でもリアリティの感じられる作品に仕上がることになった。
おしゃべり動物映画というと、古くは『ドン松五郎の生活』というのもあったが。天才犬の物語であって動物の擬人化とは少し違う。また、『奇跡の旅』と同年に公開された『ワンダフル・ファミリー ベイビー・トークB』(赤ちゃんがしゃべる映画『ベイビー・トーク』の最終作)がまったく同じ手法で動物に台詞をしゃべらせているが、動物映画という意味では少し違うのでこれも置いておこう。するとおそらくは、本作『奇跡の旅』はおしゃべり動物映画の系譜の先頭の方に記される作品となるだろう。そして、CGに頼らず、動物の芝居が楽しめ、リアリティのあるおしゃべり動物映画としては、最初で最後の作品と言えるだろう。
おしゃべり動物映画としては、大人でも比較的感情移入しやすいため、困難にぶつかりながらも互いに励ましあいながら果てしない旅を続ける犬猫のたくましさには心を打たれることだろう。また彼らの健気な姿は、動物を安易な飼ったり捨てたりする人間の身勝手を浮き彫りにし、身につまされるところもあるかもしれない。推して知るまでもなく、欧米的な犬第一主義が貫かれていて、主人公の一人であるはずの猫の扱いがひどいことも書き添えておく。中盤の猫の滝つぼ落ち(もちろんスタンド)は『子猫物語』のチャトランも真っ青なので、猫好きの方は覚悟を。なお、エンドクレジットによれば、「撮影は動物愛護団体の監視のもので行われた」そうである。



<<ストーリー>>

飼い主に捨てられたブチ犬のチャンスは、あずけられた収容所で悲しみの底にあった。だが、チャンスはジェイミー少年の一家に拾われ、彼らの新しい家族として迎えられることに。先に飼われていたゴールデンレトリバーの老犬シャドーとヒマラヤンのハーシーも新しい家族となった。
ある日、チャンスたち三匹は、人間のとある事情で知り合いの牧場に預けられることになった。牧場主が出掛けたままいっこうに帰って来ないため、チャンスはまた捨てられてしまったと思い込んで落胆した。一方シャドーは、自分たちには家族を守る使命がある奮い立ち、自力で我が家に帰ること決意した。シャドーが直感で家の方向を指した。
牧場主からチャンスたちがいなくなったと連絡を受けた一家は、レンジャーにチャンスたちの捜索を依頼した。その頃、荒野を旅していた三匹は、流れの急な川に差し掛かっていた。シャドーとチャンスは得意の犬掻きで川をり切るが、泳ぎの苦手なハーシーは流されてしまった。シャドーが必死で追いかけるも、ハーシーはみるみるうちに滝壷に吸い込まれていった。
シャドーは、ハーシーを助けられなかったことを悔んだ。そんなシャドーの責任感の強さに、チャンスは心を打たれるのだった……。