瀬戸内海の孤島での過酷な生活を台詞を廃した力強い映像で見せるドラマ。
裸の島
1960
日本
96分
カラー
<<解説>>
国際的にも大きな評価を得た新藤兼人監督の代表作のひとつ。監督自ら製作も兼ね、低予算で作り上げられた。出演者とスタッフがロケ地で合宿して撮影に臨んだと言われていて、近年の撮影でもその撮影スタイルがとられている。電気も水道もない孤島で、厳しい自然と戦いながら生活する一家の姿を、ドキュメンタリー的な手法と距離感で見せるという試みも意欲的。説明的な台詞は廃されており、声を発する場面はあるにしても、掛け声や笑い声程度。すべては言葉で語らず、リリシズムにあふれる映像に語らせている。
水の入った桶を竿で担ぎ、急斜面を上っていく夫婦。まるで何かの拷問か罰を受けているかようなその光景は、照り付ける日差しの強さや、汗の臭いまでしてきそうな迫真性がある。その一方で、海岸に寄せては引いていく波に、元気いっぱいに駆け回る子供たちの姿。そうした夫婦の労働への報酬のとも言える光景を巧みに織り込んでいく。出演者とスタッフが現場で肌身に感じた自然の厳しさと優しさが、掛け値なしの裸の真実としてフィルムに焼き付けられているようである。
<<ストーリー>>
瀬戸内海の孤島。そこに暮らす夫婦とその二人の子供の姿があった。
夏。隣の島から水をくみ、船で運ぶ夫婦。この島には水がないのだ。炎天の下、山を登り、斜面の畑に水をやる。そしてまた、水をくみに隣り島へと渡る。それが一日に幾度となく繰り返される。
秋が過ぎ、厳しい冬も過ぎ、春には作物の収穫。そして、季節は巡り、再び夏が訪れる……。