グループ・セラピーの内部で起きた猟奇殺人事件を追う医師。
事件の背後に医師と関係を持った謎の女性が浮上する。
薔薇の素顔
COLOR OF NIGHT
1994
アメリカ
121分
カラー
<<解説>>
ブルース・ウィリスを主演に据えたサイコ・スリラー。主人公の分析医が参加した集団セラピーの周囲で巻き起こる猟奇的な殺人事件を描いていく。エロティックな描写が過激であったため、レーティングや編集に紆余曲折があったという曰くつきの作品である。
『羊たちの沈黙』から流行したサイコものに、『氷の微笑』から流行したエロティック・サスペンスの要素を加えるという安易な企画意図が窺えるB級臭の高い作品ながら、オリジナリティのあるものに仕上がっている。集団セラピーという舞台は、そういうものの存在があまり知られていなかっただけに新鮮であった。しかし思えば、登場人物にまともな人が一人もいないという異常なシチュエーションなのである。なにせ、主人公でさえ犯人と疑ってかからいといけないくらいで。そんな基盤の揺らいだまま展開する物語が赤裸々にしていくのは、性的倒錯をはじめとしたアブノーマルの見本市。終盤にかけてはセンセーションを通り越して、何でもありのような様相を呈してくるが、それでも予想外の真相は、見終わってから気付く邦題の良さと合わせて語り草になるのでは。
しかし、そんなセンセーショナルな内容を吹き飛ばすくらいに目を引いたのは、ヒロインを演じたジェーン・マーチ。東洋系で日本人好み童顔の彼女が、『ラ・マン 愛人』で与えた衝撃を再び。裸エプロンあたりまえの脱ぎっぷりは強烈で、公開までの騒動にもうなずけるものがある。一方、ジェーン・マーチに喰われ気味のブルース・ウィリス。一見地味であるが、事件に翻弄される主人公の感情を丁寧に表現した芝居は、彼のキャリアの中では悪くないものである。
<<ストーリー>>
精神分析医のビル・キャパは、患者に目の前で投身自殺され、彼女の流した血の色、すなわち赤色に対して拒絶反応を示すようになってしまった。ショックを癒すため、ビルは同じ分析医の親友ボブのもとを訪れ、彼の開いている集団セラピーに参加することにした。
ボブはセラピーに参加している患者から命を狙われている、などと言っていたが、それが現実となり、数日後、彼はナイフでめった刺しにされた遺体で発見された。ビルはセラピーを続けながら、五人の患者の中からボブを殺した犯人を探すことを決意した。
ビルはセラピーの患者の一人である自閉症の少年リッチーに興味をひかれ、彼の母親に話を詳しく聞いてみることにした。だが、ビルがリッチーの実家を訪ねても、なぜか母親はまったく取り合おうとしなかった。
数日後、セラピーの患者の一人、神経質で被害妄想の気のあった画家のケイシーが惨殺された。ケイシーは人物画を残していたが、その絵の顔の部分は切り抜かれていた。
セラピーでの患者の治療にあたり、その周辺で巻き起こる猟奇的な事件に追うビルだったが、一方の私生活では、町で知り合ったローズという恋人と楽しい日々を送っていた。ローズにはどこか謎めいたところがあり、何か秘密がありそうだった。だが、ビルはそのローズの怪しげな魅力に引き込まれていくのだった……。