永遠の命が得られると伝えられる聖杯をめぐり、
ジョーンズ博士とその父がナチスと戦いを繰り広げる冒険活劇。
シリーズ第3作。

インディ・ジョーンズ
最後の聖戦

INDIANA JONES AND THE LAST CRUSADE

1989  アメリカ

127分  カラー



<<解説>>

『レイダース 失われた《聖櫃》』、『魔宮の伝説』に続く、“インディ・ジョーンズ”シリーズの第3弾。公開当時は最終作という触れ込みであり、題名にもその意志が織り込まれている。実際、シリーズの数々の謎が説明されたり、主人公の家族を登場させたり、永遠の命という究極的な秘宝を登場させるなど、集大成的な内容となっている。ショーン・コネリーの出演が話題となったが、それも「007」を意識して企画された作品の総決算とも言える。しかし、結局、本作は最終作とはならず、2008年に四作目『クリスタル・スカルの王国』が公開されている。ちなみに時系列的には、本作は『レイダース』の後の物語である。
アバンタイトルでは、少年時代のインディが登場し冒険を繰り広げる。ここで、蛇嫌い、鞭の使用、顎の傷(H・フォード自身のもの)、フェルト帽といったインディの設定や特徴を一気に説明してしまうファン・サービスが楽しい。少年時代のインディは、当時子役として人気で、没後も根強い人気のリバー・フェニックスが好演し、非常に印象深いシーケンスとなっている。数年後のテレビシリーズ「若き日の大冒険」も、彼の存在感のある芝居なくしてありえなかったのではないだろうか。
本編始まり、いよいよインディの父親、S・コネリーが登場するのだが、はじめの頃はさっぱり役に立たず、そればかりかインディの足をひっぱるほどで、ボンドを期待していた観客に対する嬉しい裏切りとなっている。もちろん、ここぞというところでは、老練を発揮してキメてくれるだが。また、全二作ではジョーンズの相棒は美女であったが、このパターンも裏切られる。ヒロイン不在の代わりに、父ヘンリーとの漫才のような洒落た掛け合いを見せながら冒険が繰り広げられる。そこに描かれるのテーマは男女の愛情ではなく、親子の愛情であり、それが本作のテーマのひとつとなっている。
相変わらず息をつかせぬアクションの連続で楽しませてくれるが、今回は、『レイダース』の巨大な丸い岩や、『魔宮の伝説』のトロッコのような派手なギミックは用意されていない。男性が夢見る理想的なかっこいい大人をそのまま体現したようなジョーンズ親子を活躍させることで、見た目の派手さよりも、洗練された大人の冒険を描くことを目指しているようだ。クライマックスにしても前作までのおどろおどろしさはなりを潜めて、静謐で展開で神聖な雰囲気をかもし出している。そして、迎えるラストシーンもさわやか。子供向けのアトラクション映画から、大人が鑑賞してもお釣りが来る粋な“ロマン”へと脱皮したといったところだろうか。



<<ストーリー>>

1912年のユタ州。13歳のインディ・ジョーンズ少年は、砂漠の洞窟で男たちが、考古学的に貴重なコルナドの十字架を盗み出すのを目撃した。盗掘者たちから十字架を奪い取ったインディは、自宅にいる考古学者の父ヘンリーに報せようとするが、結局、盗掘者たちに奪い返されてしまうのだった。十字架の代わりにインディの手に残ったのは、彼の勇気を見込んだ盗掘者の頭から受け取ったフェルト帽だった。
それから、26年後のポルトガル海岸沖。激しい荒波に洗われる船の甲板の上で、考古学者のインディは、あの時の盗掘者たちと対峙していた。インディは今度こそ盗掘者たちから十字架を取り戻し、少年時代の雪辱を晴らしたのだった。
冒険を終えて大学に戻ったインディに、ウォルター・ドノバンという富豪が接触してきた。ドノバンの邸に招かれたインディは、十二世紀のものと思われる古い石版を見せられた。アンカラの北の銅の採掘場で掘り出されたというその石版にはラテン語が刻まれており、その内容は、キリストの血を満たした器=聖杯の在り処を示しているようだった。石版には、聖杯が眠る太陽の神殿に至る道筋が記されていた。それは砂漠を越えた先にある三日月渓谷という場所だったが、肝心の地名の記された部分が欠落していた。
ドノバンは調査隊を組織して聖杯捜索に乗り出したが、聖杯の手がかりを持った調査隊の隊長が蒸発してしまったのだという。隊長の捜索を依頼されたインディは、それを断り、父ヘンリーを適任者として推薦するが、消えた隊長というのがそのヘンリーだと知らされると、従わざるを得なくなった。
インディがヘンリーの家を訪ねると、室内は荒らされつくされていた。インディがヘンリーから郵便が届いていたことを思い出し、包みを解いてみると、聖杯の研究に関するすべてを記した手帳が出てきた。敵の狙いはこの手帳に間違いないようだ。郵便はベニスから送られたものだった。インディは友人の博物館長マーカス・ブロディと共にベニスに飛んだ。
ベニスに到着したインディは、ドノバンから紹介された美女エルザ・シュナイダー博士と会った。彼女は街の図書館でヘンリーの調査に協力していたのだった。アーサー王物語に残された伝説によれば、聖杯捜索に向かった騎士三兄弟のうち、生きて戻ったのは一人だけだったという。石版の欠けた部分は、生き残りの騎士の墓にあると考えられていた。ヘンリーは騎士の墓を手がかりを見つけたようだったが、その直後に姿を消したのだという。
この図書館はかつては教会であり、窓には十字軍遠征戦利品であるステンドグラスが嵌っていた。ステンドグラスに記されたローマ数字が手ががりだと考えたインディは、床に巨大なローマ数字が記されていることに気付き、床石を砕いた。床下には水路が伸びていて、インディの予想通り、その先は地下墓所で騎士の棺が納められていた。棺には石版と同じ図柄が刻まれていた。その時、何者かが水路が火を放ち、インディとエルザは炎に囲まれた。
命かながら外に這い出したインディたちは、男たちから執拗に追いかけられことになった。インディは追っ手の一人を捕まえ、命を狙う理由を質した。カジムと名乗るその男は、聖杯の秘密を守るために活動する“十字剣結社”の一員だった。インディの狙いが聖杯ではなく父親の捜索だと知ったカジムは、ヘンリーがオートストラリアのブルンワルド城に幽閉されていることを教えた。
シュナイダーと共にブルンワルド城に向かったインディは、城の中がナチの作戦基地になっているのを見た。ヘンリーを発見して、一緒に城を脱出しようとしたインディだったが、ナチのフォーゲル大佐に見つかり、シュナイダーを人質に取られてしまった……。