実際に起きた作家アガサ・クリスティ失踪事件の真相に迫るミステリー。
アガサ
愛の失踪事件
AGATHA
1979
アメリカ
105分
カラー
<<解説>>
1962年にミステリー作家のアガサ・クリスティが十一日間失踪した事件を、ダスティン・ホフマン、『ジュリア』のヴァネッサ・レッドグレーヴ、後のジェームズ・ボンドのティモシー・ダルトンで映画化した作品。アガサの失踪の間に何が起こっていたのかは謎のままであるが、その謎の部分を残された手がかりもとに憶測したものであり、そこに描かれていることはほとんどフィクションである。フィクションとは言っても、ミステリー仕立ての大胆な展開は、故人の名誉を傷つけやしないかとハラハラさせるほどであるが、偉大な作家であると同時に一人の女性であったアガサに迫る人間ドラマとして、うまく成立している。古きよきイギリスを見事に再現した格調高い雰囲気も楽しめる。
<<ストーリー>>
押しも押されぬ人気推理小説家アガサ・クリスティは、最近、夫のアーチボルドの態度が冷たいことに悩んでいた。新作「アクロイド殺し」の出版記念パーティの後、アガサはアーチボルドから秘書のナンシー・ニールとの結婚を考えていると打ち明けられた。夫一筋だったアガサはショックを受けて車で家を飛び出し、行き着いたある村で事故を起こしてしまった。
翌日、アガサの車が発見されるが、事故現場に彼女の姿はなかつた。マスコミがアガサ・クリスティ失踪事件として騒ぎ立てていたころ、当人はミス・ニールが湯治に通うハロゲートにいた。彼女は夫の愛人の姓をかたってデリース・ニールと名乗り、ホテルに留まった。
独特の切り口の記事で人気のコラムニスト、ウォーリー・スタントンは、持ち前の強力な捜査能力を駆使してハロゲートをを突き止めた。現地に赴いたスタントンは、パーティで一度だけ顔を見たことのあるアガサをすぐに認め、彼女に近づいた。だが、スタントンは、悲しげで影のあるアガサに強くひかれてしまい、夫を亡くしたと語る彼女を慰めるのだった。
治療を受けていたアガサは、部屋の隅に置かれる奇妙な椅子に目をとめた。それは、電気治療をおこなう装置だった。回路をつなぎ変えれば人も殺せると知ったアガサは、ある計画を思い付き、密かに実行に移していった……。