時速80キロを速度が落ちると爆発する爆弾が新幹線に仕掛けられた。
捜査当局と犯人グループの駆け引き描くオールスターキャストの犯罪サスペンス。

新幹線大爆破

1975  日本

152分  カラー



<<解説>>

新幹線に爆弾が仕掛けられるというテロ事件の顛末を、高倉健、宇津井健、千葉真一、丹波哲郎をはじめとしたオールスター・キャストで描いたサスペンス映画。70年代のハリウッドにおけるパニックものの流行に乗った体の作品である。
高度経済成長の象徴、新幹線を標的にしたテロリズム、というセンセーショナルな内容であったが、あまりヒットせず、今では知る人ぞ知る作品になってしまった。ただし、輸出された海外では評価が高く、特にフランスではヒットした。後の作品への影響力も高く、模倣やオマージュが多数作られた。ある時速になると爆弾のスイッチが入るという秀逸な設定は、大ヒット作『スピード』の設定のもとになったとも言われている。
列車が爆破されるといった内容だけに国鉄の撮影協力が得られず、ミニチュアやゲリラ撮影で新幹線の走行シーンを再現したという話は有名。そうしたハンデを負っているにしては、映像面のディテールは及第点である。しかし、脚本については、国鉄の協力が得られなかったことに起因するのか、はたまた、協力を得られないことを逆手にとって好き放題やったのか、サンペンスとしては荒く、突込みどころが多いものになっている。そんな荒削りなところに愛着を抱く熱狂的なファンも少なくない。
脚本は大味だが、ハリウッドの王道スタイルを取り入れることで、エンターテインメント性が非常に高い作品に仕上げている。新幹線社内での乗員乗員の混乱。捜査当局とと犯人グループとの駆け引き。そして、それらの間に挟まる運転指令室。事件の当事者それぞれの表情をつぶさに捉え、事件に緊張と迫真性を持たせるスタイルは、まさにハリウッドのパニック映画のそれである。
ただハリウッドのスタイルを踏襲するだけでなく、情に訴えるといった日本的なドラマも取り入れている。それは、事件を起こした犯人の心情に深く入り込んだところである。犯行にいたるまでの犯人の窮状や彼らの強い絆を描いた上での、本当は爆破を望んでいないリーダー(高倉)の逃走劇は同情を禁じえない。犯人以外にも人間ドラマは描かれている。それは、乗客が第一の被害者なら、第二の被害者である運転指令室で展開される。失態の多い現場にやきもきさせられ、それでも、乗客の命を賭けるという決断を迫られる指令室長(宇津井)の苦悩が、ドラマのクライマックスになっている。
本作の公開からわずか二ヵ月後に公開された『動脈列島』は、新幹線がテロの標的になるという設定が本作と共通していた。こちらは、比較的エンターテインメント性は薄く、社会サスペンスに徹している。同時期にこうした映画が作れたのは、成長一辺倒からふと立ち止まり、社会を見つめ直したいといった社会的意識があったのかもしれない。



<<ストーリー>>

博多行きの新幹線ひかり号は1500人を乗せて東京を発車。その時、国鉄本社に脅迫電話がかかってきた。新幹線に速度を80キロに落とすと爆発する爆弾を仕掛けたのだという。五百万ドルを要求した犯人は、デモンストレーションとして、同型の爆弾を仕掛けた北海道の貨物列車を爆発させた。
事件の発生は国鉄の運転指令室へ伝えられた。室長の倉持は、直ちに対策本部の設置を指示した。また、鉄道警備隊を通じて、乗客に事件の経緯を説明させるが、乗客たちは「すぐ停めろ」「いや停めるな」の大混乱を起こすことになった。
事件を計画した犯人は、不況のあおりで工場を倒産させてしまった経営者の沖田を中心とするグループだった。沖田は工場で働いていた若い工員の大城と元過激派の古賀を金の受け渡しに向かわせることに。だが、警察の手が回っていて、受け渡しに失敗。警察に追跡された大城は事故死し、古賀も銃による深手を負った。
沖田は万全の対策を講じて二回目の金の受け渡しに挑んだ。受け渡しは成功し、沖田は500万ドルを手にすると、約束通り、国鉄に爆弾解除のための図面のありかを教えるが……。