ロシアの寒村に暮らすユダヤ人一家の姿を描いたミュージカル。

屋根の上のバイオリン弾き

FIDDLER ON THE ROOF

1971  アメリカ

182分  カラー



<<解説>>

ブロードウェイでヒットしたミュージカルの映画化。ロシア革命を背景に、ウクライナの寒村で、貧しく、厳しい政情にさらされながらも、誇り高く生きるマイノリティ=ユダヤ人の姿を描く。頑固だが家族思いの父親と、結婚のため家を出て行こうとする娘たちの関係を軸としたドラマである。家族愛を描いた人情ものとして日本でも人気が高く、森繁久彌や西田敏行主演の舞台が有名である。
主人公である五人の娘の父親は、わがままで計算高い頑固親父。主演の怪優トポルのおどけた様な芝居が、ちょっと敬遠したくなる人物を愛すべき父親像へと変えている。彼のカメラ目線の独り言も可笑しい。また、ユダヤ人の流転というテーマの重苦しさも、初期では喜劇を得意としていたノーマン・ジュイソンの軽妙な演出により、清々しいものに変えている。
物語の中で三人の娘が結婚する。はじめは突っぱねていた父親も、最後には彼女たちの旅立ちを見送っていく。そのような態度は、娘に対するだけでなく、時流に対しても同じ。主人公をはじめユダヤ人たちは、強制退去を受け入れて新天地へと旅立っていく。処せ術で肝心なのは引き際。と言って胸張っても、どうしても残る寂しさ。味わい深い作品である。



<<ストーリー>>

帝国ロシアのアナテフカはユダヤ人が暮らす小さな寒村。ユダヤ人はロシアの中では少数であったが、不安定な政情にさらされながらも、厳しい規律を守りながら誇り高く暮らしていた。あたかも、屋根の上でバランスをとりながら演奏するバイオリン弾きのように。
村で牛乳屋を営むテビエは、五人の娘の父親。ある日、テビエの知人の肉屋のラザールと長女のツァイテルとの縁談話が持ち上がった。テビエは勝手に承諾するが、ツァイテルには予てより結婚の約束をしていた仕立屋のモーテルがいた。
今度は、次女のホールデに求婚者が現れた。相手はユダヤの伝統を捨て、革命思想を持つ若者パーチック。テビエはパーチックには好感を持っていたので、ホールデとの仲も許した。さらには、三女のハーバからロシア人のフヨードカと結婚すると打ち明けられた。これにはテビエも頑なに反対するが……。