元海軍兵士とその七人の仲間たちがテロを企むマインドコントロールの専門家と対決。
沈黙シリーズ第8弾。
沈黙の追撃
SUBMERGED
2005
イギリス/ブルガリア
96分
カラー
<<解説>>
スティーヴン・セガール主演のハード・アクション。名目上では「沈黙」シリーズの第8弾ということだが、他の作品とはなんのつながりもない。本国ではビデオでリリース。日本ではテレビ放映で需要がまだまだあるので、「映画」という体裁を与えるためか、一応、劇場公開されたようである。
今度の敵はマインドコントロールの専門家である科学者。明らかに武闘派じゃないので、セガールとの一騎打ちは期待しないほうが良い。マインドコントロールという題材は、微妙に旬を逃しているのはともかくとして、そんなややこしい設定おかまいなしに、とにかく自身満々のセガールが自分より弱い敵を叩きのめすだけというお定まりの内容である。
全盛期に比べて、老けた上に太ってしまったセガールは、アクションシーンはほとんどスタントがやるとの噂。本作はアクションシーン自体は少なくなく、むしろ多いくらいなのだが、もっぱら銃器に頼ったものが多く、セガールが素手で戦うシーンは以前の作品と比べて明らかに減っている。
セガール映画として変化をつけているのは、セガールに七人の仲間がついているという点。これはセガールだけにアクションの見せ場を作るのは、先のような年齢的な事情があるのかもしれない。それぞれ爆破、狙撃、偵察など秀でたプロであるというところが、『ナバロンの要塞』や『荒野の七人』を思わせる。
しかし、せっかくもったいつけて登場したそれらのプロも、特殊技能をほとんど活かすことは無い。セガールの強さを引き立てるために消費される雑魚キャラの扱いで、次々と殺されていく様にも悲壮感がなく、あっさりと処理される始末である。仲間の死をスパイスにしようとしたようだが、それが裏目に出て、セガール映画の強みであったはずの爽快感も殺がれてしまったようである。
アクションの舞台をダム、潜水艦、オペラ劇場と次々と移すという趣向で、単調になりがちな銃撃中心のアクションに変化をつけようという試みも悪くは無い。アンソニー・ヒコックス監督によるオリジナル脚本では、潜水艦中心の物語だったのだとか。その名残が中盤のシーケンスと、原題の"SUBMERGED(潜航)"にある。潜水艦内で洗脳された味方兵士の反乱を起こすという展開は、本作でもっともも緊迫感のある場面となっている。
いちばん目を引くのは凝った編集だろうか。マインドコントロールを表現するためのフラッシュバックをはじめ、映画全体にミュージックビデオ的な細かい映像処理が加えられているのは最近の映画の傾向に乗ったのだろう。かっこよさというより、ホラーっぽい不気味さを狙ったそれらの処理は、その効果が出ているようだし、映画にスピード感を与えている。ただ、過剰に映像処理をした分、アクションが空虚になってしまっているのは残念だ。
<<ストーリー>>
マヤ遺跡近くのダムに拠点を置き、強大な力を蓄えるテロ組織があった。組織のリーダーである将軍は、その力を完璧なものにするべく、マインドコントロールの専門家アドリアン・レイダー博士を雇い入れようとしていた。
将軍の動きをアメリカ軍が注視していた時、ウルグアイでアメリカ大使が三人のシークレットサービスより殺害されるという事件が起こった。自殺したシークレットサービスを解剖したスーザン・チャペル博士は、彼らが何者かにより洗脳されていたことを知った。
軍はレイダー博士を捕らえるべく、シャープ中佐を隊長とする部隊を現地に派遣するが、隊員の一人が洗脳を受けていたため、作戦は失敗。隊員たちは将軍側に捕らえられてしまった。
軍が捕虜を救い出すという危険な任務を与えたのは、服役中の元海軍兵士クリス・コーディと、その部下であるヘンリー、チーフ、ルイス、オハーン、ドク、エンダー、ロリンズの七人だった。コーディたちは、作戦の活躍で止む終えずにとった戦艦の撃沈という手段が国連の怒りに触れたため、政治的に責任を取らされる形で投獄されていたのだった。
コーディと特殊技能を持った部下たちは、莫大な金と自由の身という見返りを約束され、チャペルとCIAのスレッチャーと共にマヤ遺跡に向かうことになった。コーディは詳しい事件の経緯を知らされるままだったが、スレッチャーが敵の二重スパイであることを見抜いていた。コーディはフレッチャーを騙して、途中の草原に置き去りにし、代わりに、古くからの付き合いである女兵士のダミータを仲間に加えた。
その頃、将軍の基地では、レイダーが将軍の手下を洗脳することで味方につけ、将軍を殺害していた。コーディたちが基地に潜入した頃には、そこにレイダーの姿はなかった。コーディたちは、基地に残っていた将軍の手下たちとトンネル内で激しい戦闘になった。将軍の手下たちを倒し、捕虜たちを救出したコーディたちは、基地に残されていた潜水艦で、爆発する基地から脱出した。
チャペルは将軍が隠し持っていたディスクをコーディに渡した。その中にはレイダーの研究のすべてが収められていた。ディスクの中身をチェックしたコーディは、民間企業と思われるキリンダイル社の名前が現れたことを不審に思った。
チャペルは洗脳のことを伏せたまま、コーディにこの作戦に至るまでの経緯をすべてを話した。コーディは自分たちが軍にとって捨て駒であることを直感し、捕虜だけ残して仲間と共に潜水艦から逃げようと考えた。だがその時、基地で洗脳を受けていた捕虜たちが反乱を起こした。
事態に気付き動転したチャペルは、すぐに軍に通報。連絡を受けた軍は、潜水艦が浮上したら撃沈する決定を下した。コーディたちは襲い掛かかってきた捕虜たちと戦うが、多くの仲間が犠牲となった。結局、撃沈寸前の潜水艦から脱出できたのは、コーディ、チャペル、ダミータ、ヘンリー、ルイスだけだった……。