アフリカ某国の王子が妃探しのためにニューヨークにやってきた。
『大逆転』のランディス&エディ・マーフィのロマンティックコメディ。

星の王子ニューヨークへ行く

COMING TO AMERICA

1988  アメリカ

116分  カラー



<<解説>>

「ビバリーヒルズ・コップ」シリーズの大ヒットでスターとなったエディ・マーフィが、主演二作目の『大逆転』の監督ジョン・ランディスと再びコンピを組んだ作品。某王国の王子がお妃を探すため、留学生に身をやつしてニューヨークの下町にやってくるという物語。前作では浮浪者から金持ちになったエディが、今回は逆にリッチな王子から貧乏人になるのである。似通った設定を意識してか、前作とは世界観につながりがあるようで、前作の敵役のデューク兄弟が浮浪者として登場している。
前作は人間の資質をテーマにし、思いも寄らない展開の連続で楽しませてくれたが、本作はおとぎ話的な設定そのままのベタなロマンティックコメディに仕上げている。しかし、そこはランディス。王子の恋をハートウォーミングで描き爽やかな感動を与えてくれる一方、本筋と関係ないところではブラックな笑いやパロディ(が、向こうのテレビをよく見ていないと分からないものがほとんどのようだ)が満載で、悪ガキ・ランディスの健在ぶりも見せ付けてくれる。また、宮殿のリッチぶりと下町のプアぶりのギャップがこれでもかと徹底して描かれているのもひとつの見どころ。特に宮殿での生活の描写が秀逸だ。
エディが新境地に挑んでいるところも見逃せない。慈悲と教養に溢れる真面目で正直な王子という役柄は、下品でおしゃべりでやんちゃなゴロツキというこれまでのエディのイメージとは真逆である。もちろん、まさにそのギャップの可笑しさを狙った配役なのだが、マシンガントークがなくてもこの王子の役も悪くはなく、ファミリー向けの作品の主役もこなせるという発見となった。また、主役の王子のほかに、床屋、床屋の常連客、ステージの歌手をリック・ベイカーによる特殊メイクにより一人で演じ分け、それらの自分と共演するというはなれ技にも挑戦。世話役を演じたアーセニオ・ホールと競うようにそれぞれ四役を演じている。一人四役は当時話題になったが、エディはこれをお家芸とし、「ナッティ・プロフェッサー」シリーズや『マイ・ファット・ワイフ』でも披露している。



<<ストーリー>>

アフリカの王国ザムンダのとてもつなく豪奢な宮殿の朝。楽隊の演奏で目を覚ました青年は、この王子のアキームである。今日、彼は二十一歳の誕生日を迎えた。
アキームは宮殿での暮らしに不満を持っていた。それは、身の回りのことはすべて世話係の家来がやってくれるため、靴の紐も結んだこともないということである。たまには自分で服を着てみたいし、妻だって自分で探したい。そうアーキムは父であるジャフィ・ジョッファ王に訴えた。
今日はアキームの誕生日であると同時に、彼の婚約発表の日でもあった。王が選んだという妻は、忠実なる家来イジ大佐の娘イマニで、彼女はアキームの妻になるために教育されてきたという。アーキムが妻と会うのは今日が初めてのことだった。
婚約の儀式に姿を現したイマニ嬢は誰もが羨むような美人であった。だが、アキームは、どんな質問をしても自分に合わせようとし、自分の意見を言わないイマニを愛せそうになかった。アキームは愛とは尊敬することであり、妻には自分の考えを持っていて欲しいと考えていたのだ。
アキームは婚約の儀式を中断し、国を出てみたい王に頼んだ。旅の目的は、今まで国を出たことのない自分を鍛えるため。そして、妃を探すためである。だが、王は結婚する前に遊びたいのだと解釈し、アキームの旅立ちを許可した。
アキームは世話係のセミをお供に、アメリカのニューヨークの下町クイーンズにやってきた。まさに、妃探しにうってつけの名前の街である。そこには、アキームの憧れていた貧しい庶民の暮らしがあった。
とびきり汚く安いい部屋を借り、服装もそれなりのものに換え、生まれたときから伸ばしてきたべん髪も切り落とたアキームは早速、妃探しに繰り出した。若い女性の集まるバーで、何人かの女性に声をかけ話を聞いてみたが、イカれた女性ばかり。街で親しくなった床屋のクラレンスは、素敵な女性は図書館や教会にいるとアドバイスしてくれた。
アキームはクラレンスに誘われ、教会で開かれる“ブラックは最高”大会に出かけた。ブラウン牧師のエキセントリックな司会による妙な大会で、素敵な女性は現れそうになかったが、最後にステージでしっかりと挨拶をした女性にアキームは釘付けたなった。
女性はこの大会を呼びかけたリサ・マクドウェール。バーガーショップ“マクドウェール”の娘だった。リサを気に入ったアキームは、セミと一緒に“マクドウェール”で働きはじめた。
アキームは、これまでやったことの無かった床拭きや窓拭きの仕事をしながら、店で事務をしているリサにアピールしようとした。だが、リサには既に恋人がいた。それは化粧品会社の御曹司ダリルである。親の金で暮らしているダリルは嫌味な男で、貧乏な留学生を名乗るアキームをはじめから見下していた。
アルバイトの先輩の「女は金についてくる」という言葉に従い、アキームはリサに匿名で高価なイヤリングを送ってみた。だが、とうぜん自分だと気付いてもらえるはずはなかった。一方、クラレンスは「親に気に入られることだ」とアドバイス。アキームはリサの父クレオに愛想を振り撒くが、逆に気持ち悪がられてしまった。
ある日、“マクドウェール”に銃を持った強盗が押し入って来た。店内が凍りつき誰一人動けず、ちょうどリサに会いに来ていたダリルも物陰に隠れていたが、アキームは果敢に果敢に強盗に立ち向かい、得意の格闘術で追い払ったのだった。
強盗の一件でクレオに気に入られたアキームは、マクドウェール家のパーティにウェイターとして招かれることになった。パーティの最中、突然クレオがリサとダリルの婚約を発表した。ダリルのプロポーズをリサが受け入れたというのだが、リサには覚えが無い。クレオとダリルが計ったのだ。
アキームは、ショックを受けてパーティを飛び出したリサを慰め、彼女がダリルとの結婚を嫌がっていることを知った。実はリサは、親を喜ばせるために金持ちのダリルと付き合っていて、クレオも娘が苦労しないよう、ダリムとの結婚を望んでいたのだった……。