ロボットたちの暮らす架空の世界を舞台に
発明家を夢見るロボットの夢と冒険を描くアニメーション。

ロボッツ

ROBOTS

2005  アメリカ

91分  カラー



<<解説>>

「アイス・エイジ」シリーズのクリスウェッジ監督とアニメーション製作会社ブルースカイ・スタジオによるフルCGアニメ。配給の20世紀フォクスにとっては、『アイス・エイジ』に続くの二作目のフルCGアニメ作品となる。日本語版は、草g剛、矢田亜希子、西田敏行の吹き替えで話題となった。
世界初のフルCG長編アニメ『トイストーリー』のヒットを皮切りに、続々と制作されたフルCGアニメは、今や海外においては2Dのアニメに置き換わるほどの勢いである。CGの表現力も豊かになり、無機的なものから有機的なもの、単純なものからより複雑なものを描くことに進化している。しかし、本作はその進化の方向に逆らうかのように無機的で単純な“機械”を描く対象に選んでいる。
あえて作り手が避けるものを描くことで、意外性を狙ったとも言えるが、無機的で単純なものをいかに表情豊かに描くかという、作り手のセンスや技が問われる課題に挑んだとも言えそうだ。以前のCGではギラついていた金属的なテクスチャーは、傷やくもりが加わりやりリアルなものになり、あらゆるものが金属で作られている世界をファンタジックな世界に変えている。また、ロボットの体をはじめ、世界のあらゆるものにルーブ・ゴールドバーグ・マシン的な動きが仕掛けられていて、機械の動きに生き生きとした表情をつけた。CGアニメの表現力、そして何よりも楽しさを再認識させるような作品となっている。
物語の舞台は、ロボッたちトが暮らし、彼らだけで成り立っている架空の世界。貧しい家に生まれたロボットが発明家を夢見て上京し、そこで厳しい現実を目の当たりにするというストーリーである。基本的にはコメディであり、アクション・シーンも満載だが、少年の旅立ちや夢の挫折というテーマとした青春ストーリーとして観ると、なかなかシリアスである。
世界観は一見するとファンタジックなだが、現実をロボットの世界に置き換えた緻密な設定には、SF的な発想と拘りが感じられる。スペアパーツの交換により成長するという物語の根幹となる設定はユニークで、クライマックスでは、登場人物が経験によってではなく、自らをカスタマイズすることにより劇的な成長を遂げるというのもの、青春映画へのアンチテーゼのような面白い。
企業がスペアパーツの販売を止め、より高価なアップグレードをロボットたちに売りつけようとし、それが買えない貧しきロボットたちは破滅するしかないという悲劇は、人々を消費の奴隷にし、貧富の差を広げるという資本主義経済社会の抱える問題を描き、そして、その顛末は、企業の正しいありかたを問うているようである。また、スペアパーツを医療と捉え、主人公の“赤ひげ”のような活躍を見るにつけては、裕福でなければ満足な医療を受けられないという福祉の問題を描いているようでもある。作り手がそのような重いテーマを意識していたとは思えないないが、深読みすればいかようにも愉しめるところもまたSF的である。



<<ストーリー>>

ロボットたちが暮らす田舎町リベット・タウン。皿洗いロボットのハーブ・コッパーボトムの息子として、ロドニーが誕生した。貧しいコッパーボトム家だったが、ロドニーはお下がりのスペアパーツですくすくと成長していった。
ロドニーは、ロボットの中でももっとも偉大とされる発明家のビッグ・ウェルドのことを、ハーブの次に尊敬していた。また、「どんなロボットも輝ける」というビッグ・ウェルドの言葉を信じ、将来は彼と同じ発明家を夢見ていた。
やがて、ハーブと同じレストランで働くようになったロドニーは、給仕の仕事の傍ら、ハーブの仕事を助けるために、ワンダーポットという皿洗いロボットを発明した。ロドニーは、完成させたワンダーポットをハーブに披露するが、レストランの支配人であるガンクが現れたとたんに暴走して、厨房をめちゃくちゃにしてしまった。
ガンクに怒鳴られ、店を追い出されたロドニーは、発明家の夢を叶えるため、ビッグ・ウェルドの会社のある大都会ロボット・シティに行くことを決意。母は反対したが、ハーブは息子を信じて、ロドニーを気持ちよく送り出したのだった。
こうして、生まれ故郷をはじめて飛び出し、大都会にやって来たロドニーは、都会の喧噪に戸惑いながらも、ビッグ・ウェルドの会社の前にたどり着いた。ロドニーは、ビッグ・ウェルドがワンダーポットを見て、自分にチャンスを与えてくれる思っていたが、門前払いを食ってしまった。
実は、その頃すでに、ビッグ・ウェルドの会社は、ナンバー2のラチェットに乗っ取られ、金儲け主義に方針が転換されていた。「どんなロボットも輝ける」というスローガンは取り外され、代わりに掲げられたのは、「新しい自分を手に入れよう」というスローガン。会社の主力商品も、旧式のロボットを長持ちさせるためのスペアパーツから、ボディを真新しくするアップグレードに切り替えられ、それらを価値観の変わったロボットたちに売りつけようと考えていた。
ラチェットを裏で操るのは、彼の母親であり、解体工場のボスであるガスケット。彼女は、ラチェットにスペアパーツの供給を絶たせることで、修理のできなくなった旧式のロボットを思う存分解体しようと企んでいたのだ。
諦めきれない、ロドニーは、ワンダーポットを使って、空から会社に忍び込もうとしたが、ラチェットに見つかり追い出された。追い出された勢いで下町まで転落し、気を失っていたロドニーは、自分の足を盗もうとしていた廃品あさりのウェンダーとその仲間たちと出会った。
貧しい旧式のロボットである彼らは、解体工場行きの回収車におびえながら、暮らしていた。壊れてしまったウェンダーの首を直してくっつけたロドニーは、仲間たちに気に入られ、彼らの暮らす下宿に泊めてもらえることになった。
翌日、下町のパーツ店の前で暴動が起こった。スペアパーツの販売を取りやめ、アップグレードしか売らなくなってしまったからだ。スペアパーツが手に入らないとなると、アップグレードを買う金のない旧式ロボットたちは、このまま壊れていくしかない。そんなロボットたちの窮状を知ったロドニーは、ウェンダーの首を直したように、皆の体も直すようになったのだが……。