信金の隠し資金をめぐり極道の夫が何者かに殺害された。
妻(おんな)たちの壮絶な弔合戦が幕を開ける。
岩下志麻主演のシリーズ最終作(第10作)。

極道の妻たち
決着

1998  日本

116分  カラー



<<解説>>

10作目にしてシリーズにいったん幕を降ろした作品。今やヤクザというば、不動産や金融業にいそしむ経済ヤクザが一般的。シリーズが終了したのも、任侠道が時代にそぐわなくなったためなのか。本作が描くのも、跡目や縄張などの面目をめぐる争いではない。金という即物的なものを巡る仁義なき争いで、それを金融機関の貸し渋りや隠し資金など、不況の世相を反映させつつ描いていく。
監督は、5作目『新極道の妻たち』と前作『危険な賭け』を撮った中島貞夫。主演の岩下志麻、レギュラーで岩下の右腕とも言えるかたせ梨乃、人気女優のとよた真帆と藤田朋子など、キャストが充実。中条きよしの凄みのある敵役もラストを飾るに申し分なし。中条と、すぐに退場してしまう竹内力以外の男性陣は、愛川欽也、名古屋章、大杉漣といった味のある三枚目が揃って、まるで“極妻”の引き立て役のよう。しかし、意外な活躍をするキンキンはかっこいい。
初期のような濃厚なドラマや復讐劇のカタルシスは弱いものの、テンポがよいストーリーは、途中でだれることなく一気に見せられる。豪華キャストのそれぞれに見せ場を持たせた脚本が良く練られていて、物語の中でうまく登場人物を立ちまわせている感じだ。賭場でのコンゲームから銃撃戦の修羅場へ、静から動へと展開するクライマックスも痛快。しかし、なにより、作品によってはギャグされていた岩下志麻の“極妻”キャラが、凛として描かれているところが良く、物語も引き締めている。まさに集大成といった見応えのある娯楽作品に仕上がっている。



<<ストーリー>>

大阪のヤクザ組織・井出組の傘下の秋葉組の組長・秋葉吟二が殺害された。その容疑者として逮捕されたのは、井出組の組長の井出篤志。秋葉をかわいがっていた井出が何故? 井出の妻・春日には到底信じられなかった。
遡ること三ヶ月前。妻・杏子と生まれてくる子供のため、秋葉は合法的な事業に精を出していた。今度のリゾートホテルの建設という大事業が成功した暁には、カタギになる覚悟だった。だが、そんな時、取引先の堺和信用金庫がマスコミから暴力団とのつながりを叩かれ、融資を打ち切られてしまった。
一方、杏子は、競輪場で五橋東造という賭博師を拾い、刑務所を出たばかりで行く当てのない彼を、井出組で預かることになった。五橋が客間で相部屋となったのは、玉城元真というチンピラ。人生のほとんどを刑務所で過ごしているという玉城は、娑婆に残している妻と子の写真を五橋に見せた。
井出は苦境に立たされている秋葉を心配し、堺和信金の理事長・岩岡と話をつけるために一千万円を用意した。だが、切り札を持っている秋葉は、井出の金を押し戻し、カタギになるつもりでいることを告白。井出は激怒し、秋葉に破門を言い渡した。
秋葉の切り札が、岩岡が中小企業から集めた金をトンネル会社に流して作った五十億の隠し資金であることを知った秋葉の兄貴分・名越兼良は、岩岡の秘書・磯辺七歩に近づきいた。そして、名越は玉城を連れて、秋葉の舎弟・徳田甫と会い、自分の側につくよう説得した。
秋葉は、隠し資金の存在を公表すると脅し、岩岡に融資の継続を迫った。岩岡が取引に応じ、彼から融資の継続の約束をとりつけた矢先、秋葉はトレーニングジムで何者かに殺されているところを発見された。杏子はショックで流産してしまった。
春日は、井出が秋葉の殺害を指示したとされる日のアリバイを証明するため、東京へ向った。その日、井出は入れ込んでいる台湾人のホステス・金蘭と会っていたという。金蘭のマンションを訪ねたその時、中国マフィアの鉄砲玉が踊りこんできたが、春日が返り討ちにし、事なきを得た。
一方、杏子に恩義を感じていた五橋は、独自に秋葉を殺した犯人を追究し、ついに玉城が実行犯であることに気付いた。五橋は証拠を掴んだところを徳田に見つかり、半殺しの目に会うが、どうにか井出組に戻り、東京から帰ってきた春日に玉城の妻子の写真を渡した。春日はその写真を、名越の兄弟分・番水司郎の妻で杏子の姉の彩子に託した。
番水は名越から、大組織・明野組のナンバー2・川西を紹介された。何か裏かあると感じた番水が名越に問い詰めると、彼は岩岡の隠し資金のリストを出してきた。秋葉への裏切りだと憤慨した番水だったが、名越は強引に仲間に引き入れようとした。一方、退院した杏子は、秋葉の家が、社長職をついだ徳田とその妻・紗織のものになっていることを知り、呆然とした……。