権力に屈することにく己の信念を貫き通し、
王の離婚を認めなかった法官トマス・モアの半生を描くドラマ。

わが命つきるとも

A MAN FOR ALL SEASONS

1966  イギリス

120分  カラー



<<解説>>

『アラビアのロレンス』、『ドクトル・ジバゴ』の脚本で知られるロバート・ボルトの戯曲を自ら脚色した作品。監督は『真昼の決闘』、『地上より永遠に』のフレッド・ジンネマン。十六世紀にイギリリスに実在した思想家トマス・モアの半生を題材にした本格歴史劇。時の国王王ヘンリー八世の離婚にカトリック教徒の立場から反対し、反逆罪で逮捕されても屈せずに信念を主張し続けたモアの姿を描く。俳優たちの確かな芝居が、時代考証が丁寧に行われていると思われる映像の中で炸裂する見応えのある一作である。
離婚の是非を問う物語ではなく、一個人の主張をねじ伏せようとする権力の恐ろしさ、そしてなにより、いかに信念を貫くかということをテーマとした物語である。プライドでも、信仰のためでもなく、自分を裏切らないために信念に背かず、法廷でも自分の意志を確かめるかのように最後まで抗弁を続ける主人公の姿は圧巻。適当なところで妥協することが大人だと信じ、世の中に飼いならされた我々現代人にとっては、主人公の姿から「なぜそこまで?」という衝撃を与えられる作品である。



<<ストーリー>>

16世紀の英国、チューダー朝の王ヘンリー八世は、亡き兄の妻カテリーヌと結婚するが、世継ぎに恵まれなかった。そこで彼は、別の女性アン・ボーリンと結婚するため、離婚の法案化を画策していた。
真面目一徹で国中から尊敬をあつめるの法官トマス・モア卿は、大法官ウルジー枢機卿から呼び出され、離婚の法案化に賛成するよう命令された。家に帰ったモアは、妻のアリスからノーフォーク卿がモアを大法官に推薦していることを知らされた。
まもなくウルジーは死に、大法官の後継者としてモアが就いた。法案化の全権を握ったモアのもとへ、ヘンリー八世が離婚を認めるよう直談判にやってきた。国への忠誠を誓いながら、カトリックの離婚の禁止を守りたいモアは、苦悩した挙句に大法官を自ら退くのだった。
大法官の秘書であるクロムウェル卿は、兄の妻であるカテリーヌとの結婚は、そもそも無効だとし、王の離婚を認めてしまった。さらに、クロムウェル卿は、モアの友人のリチャード・リッチを抱き込み、モアを罠に嵌めようとした……。