世界各地で諜報部員を抹殺していく悪の組織スメルシュに
現役復帰したジェームズ・ボンドが珍作戦で挑む。
007シリーズのパロディ大会。

007/カジノ・ロワイヤル

CASINO ROYALE

1967  イギリス

131分  カラー



<<解説>>

イオン・プロの本家シリーズとは別に、ジョン・ヒューストン、ケン・ヒューズら五人もの監督によって作られた一大パロディ作。原作は、イアン・フレミングの007シリーズの第一作であり、ボンド・シリーズとしての映画化の予定もあったが、権利問題でお蔵入りとなっていたエピソード。本エピーソドは、2006年にようやく本家シリーズでも映画化された。
バート・バカラックの能天気なテーマ曲を伴う幕開けから、本家シリーズとは雰囲気はがりと異なる。監督が五人もいると、うまく責任を分散でき、外野の意見に左右されずにのびのびと撮れたのだろうか。そんな空気がテーマ曲から伝わってくるようである。五人の監督の資質がまったく異なっているため、クオリティにもだいぶ斑があるようだ。ボンドが大富豪やギャンブラーを雇い、巧みなチームプレーで、敵の組織に壊滅に追いやっていく本筋は、全体がギャグではあるけど、スリリングな演出はスパイ映画として面白い。その後のストーリーが急速に破綻していく中での、拷問シーンの映像表現やサイケ調の円盤の美術などの芸術性は今観ても刺激的。そんな完成度の高い部分がある一方で、合間に挟まれるのは、ちゃんと脚本を書いたのか疑わしくなるくらい、物語とまったく関係ないショート・ギャグ数々。悪ふざけとしか思えないそれらのギャグは、笑うより先にあきれかえってしまうほどのしょうもなさ。そんな感じに五人の監督がやりたい放題に取り散らかした作品ではあるが、それでも全体としては、本家の007シリーズを凌ぐほど、カッコ良く、オシャレに仕上がっているから不思議なものである。一見の価値がある作品である。



<<ストーリー>>

007の名を後輩に譲り、郊外で隠居生活を送るジェームズ・ボンド卿のもとに、かつての上司Mことマクタリーが訪ねて来た。世界各国の諜報部員が何者かに次々と殺されているのだという。力を貸しいと頼むMにボンド卿が首を振ったその時、ボンド邸にロケット砲が打ち込まれた。邸は木っ端微塵となり、Mも巻き添えを受けて犠牲となった。
ボンド卿はMの遺品を携えてマクタリー家を訪ねるが、それは敵の罠であった。ジェームズ・ボンドの名声の失墜を企む敵は、マクタリー夫人に化けた工作員ミミを使い、ボンド卿をたぶらかす作戦のようである。ミミの誘いを断ったボンド卿は、罰として屈強な下男たちとの力比べに挑戦させられるが、あっさりと勝利。そんな彼にミミはぞっこん惚れてしまった。そして、翌日。鳥撃ちに出掛けたボンド卿を鳥型ミサイルが襲いかかった。思わずボンド卿をかばってしまったミミは、組織から身を引き、修道女として生きる決意をするのだった。
敵が宿敵スメルシュだとにらんだボンド卿は、敵が自分の命を狙っていることを逆手に取る作戦に出た。すなわちそれは、諜報員全員に007ことジェームズ・ボンドを名乗らせて、敵を混乱させることである。まず、ボンド卿は、自分の身代わりに大富豪ミス・リンドを立て、バカラの天才イヴリン・トレンブルへと近づけた。トレンブルを、スメルシュの腹心の部下でギャンブラーのルシッフルと対決させるため、ジェームズ・ボンド養成所に入れるのだった。
一方でボンド卿は、自分とマタ・ハリの間に生まれた娘マタ・ボンドをマタ・ハリ舞踊学校へ入学させた。そこは表向きは舞踊学校だが、その実態はスパイ養成所である。学校でスパイの技術を得たマタ・ボンドは、競売に出品されたルシッフルのお宝の強奪に成功。金を稼がざるをえない状況となったルシッフルは、ボンド卿の目論見どおりカジノ・ロワイヤルに現れ、ジェームズ・ボンドを名乗るトレンブルに挑まれることに……。