家出した専業主婦が寂れた温泉町の村おこしに大奮闘。
卓球を通して夫婦の絆を描くハートフル・コメディ。
卓球温泉
1998
日本
110分
カラー
<<解説>>
なぜか温泉町の町おこしを手伝うことになった主婦の姿を通し、夫婦の絆を描いたコメディ。当時、にわかに盛り上がっていた卓球ブームに当てこんだ作品で、『Shall we ダンス?』の製作チームが手がけたことでも、話題となった。監督は、『Shall we〜』の監督補の山川元。コメディ女優が板についてきた主演の松坂慶子が、世間知らずの主婦をユーモラスに演じる。共演は牧瀬里穂、蟹江敬三、山中聡ほか。
一言で言い切ってしまえば、本作は『Shall we〜』ファンへのサービス。はたまた、リプライズやボーナストラックといったところだろうか。「ああいうやつをもう一本」という観客の求めに応じたとするならば、ひじょうに良心的な作品である。ただ、『Shall we〜』と比べると、さらに浮世離れした作品となっている。実際の話、変り映えのしない日々の繰り返しに疑問をもつ専業主婦はもっと真剣だろうし、客足が遠のき死活問題にあえぐ温泉町の悩みはもっと切実なものだろう。しかし、そういった重苦しいことは描かないし、人生について何か足しになりそうなヒントを与えてくれるわけでもない。夫婦の絆を卓球のラリーになぞらえたクライマックスに向かい、予定調和がソツなく続き、大方の予想をまったく裏切らないほど良く出来上がった物語。登場人物の内面をあえて描かず、平均的な“主婦”や“その夫”が描かれ、その他の人物は一様に愛すべき善人たち。真摯な家族のドラマを求めるのは少々お門違いだが、その分、日常から離れたささやかなリゾート気分や家出気分は大事にされていて、それを壊すようなリアリティは避けられているようである。
<<ストーリー>>
専業主婦の生活に飽きあきしていた園子は、ラジオ番組に手紙を出し、DJのかなえに悩みを相談した。「家出しちゃいなさい」というかなえの言葉に駆り立てられた園子は、家を飛び出し、かつて新婚旅行で行った「竜宮温泉」に向かったのだった。
竜宮温泉には、かなえもやって来ていた。実は彼女は、旅館「蓬莱屋」の跡取りだったのだ。かなえは園子を旅館に泊めるが、彼女がラジオ番組に相談してきた主婦だとは気がつかなかった。この頃、竜宮温泉では、遠のいていく客足を掴むための方法に行き詰まっていた。
新婚旅行当時を懐かしみ、温泉町を歩いていた園子は、廃校で卓球台を見つけた。卓球が得意な園子に誘われ、卓球で遊んだかなえの恋人・公平は、うまくいけばこれで客が呼べると思いついた。早速、公平は卓球で町おこしをする案を旅館組合に呼びかけたのだった。
園子は、東京に戻るかなえと一緒に家に帰るつもりでいた。だが、「しょせんは主婦」と中途半端な家出をからかうかなえに反発し、竜宮温泉にとどまることを決意。卓球大会を企画した園子は、その実行委員として、組合員たちと一緒に卓球の特訓をはじめるのだが……。