エイズに感染していることを告白した少女の青春を描くドラマ。
秋桜
コスモス
1997
日本
103分
カラー
<<解説>>
エイズと戦った17歳少女の青春を、親友の少女の視点で描いた闘病もの。監督は、『マリリンに逢いたい』のヒットで知られるすずきじゅんいち。主演(エイズにかかった少女役)は人気アイドルの小田茜。原作でなくノベライズだが、「秋桜 17歳女子高校生のものがたり」が公開前に刊行された。
啓蒙・啓発色の強い作品で、主人公とその親友以外の登場人物のエイズに対する差別意識や偏見がことさらに強調されて描かれている。こうした描き方は、社会的にエイズに対する意識が「死の病」から変りつつあった当時から既に違和感があるものだった。しかしながら、未だ多くの人にとっては、エイズは他人事という認識が強いのが現実。自分や友人がエイズだったらどうだろうか? 想像もつかないという限りにおいては、本作で描かれる理不尽なほどの差別や偏見にもリアリティがあるのかもしれない。
啓蒙・啓発色の強いため、陳腐な内容に見えてしまうが、主人公と親友の友情を軸にした青春物語としては見どころがある。感動的なのは、病気と戦う主人公の姿よりも、差別や偏見にさらされるのは分かっていながも故郷で親友と過ごすことを選んだ少女の覚悟と、その覚悟に賢明に応えようとする親友の姿ではないだろうか。主人公の苦しみを親友に代弁させるクライマックスは、泣かせの最後の一手というだけでなく、テーマへのひとつの回答として、人を思いやるために最も必要な「共感」を示したと言って良いだろう。
<<ストーリー>>
高校生の夏実の町に、南米に移住していた親友の明子が数年振りに帰ってきた。明子は、向こうで交通事故に遭った際に受けた輸血でHIVに感染していた。夏実は、明子からエイズであることを告白されても、昔のように友達でいたいと望んでいたが、学校関係者、クラスメイト、近所の人々の理解は得られず、白い目で見られたのだった。
ある日、夏実は明子を家に遊びに来るように誘うが、父は明子を拒絶。冷たい父に反発して家を飛び出した夏実は、行く当てもなく、しばらく明子の家に泊めてもらうことになった。夏実は、明子と一緒に暮らす中で、改めて彼女の悩みや苦しみを知った。こうして、かつて以上の友情で結ばれた夏実と明子は、学園祭の出し物で二人でコントを演じることに決めた。
夏実と明子は毎日、コントの稽古に精を出し、その成果は担任教師からも絶賛されるが……。