カナディアン・ロッキーの大自然を舞台に、
寄り添うように生きる二頭のヒグマと、それを狙うハンターたちの姿を描く。

子熊物語

THE BEAR

1988  フランス/アメリカ

96分  カラー



<<解説>>

絶滅危惧動物の保護のメッセージを明確に打ち出した動物映画。監督は、『薔薇の名前』のヒットで知られるフランスの名匠ジャン=ジャック・アノー。ハンター役には、『ニキータ』で有名になる前のチェッキー・カリョが出演。主役のヒグマは、実際は野生のものではないとは言え撮影は難しく、特に芝居の出来ない子熊を撮るのには、そうとうの根気と苦労があったという。
親を事故で失った子熊と、ハンターに撃たれて傷ついた大熊。寄り添うように生きる二頭の熊と、それを仕留めることに執念を燃やす人間のハンターの戦いのドラマ。邦画の『子猫物語』を意識した邦題だが、子熊の愛らしさを前面に出したファンタジーではない。雄大な大自然の中で生き抜いていくヒグマの姿をダイナミックに描き、大人にとっても見応えある作品に仕上がっている。ドキュメンタリー・タッチでありながら完全なリアリズムではなく、ヒグマへの共感を呼ぶような分かりやすいドラマティックな演出を盛り込み、あくまで映画的なリアリズムを出しているところがアノー監督らしい。
ちなみに、アノー監督は2004年に『トゥー・ブラザーズ』で、同様の手法でトラの兄弟の姿を描いているが、そちらは本作より幾分ファミリー向けになっている。



<<ストーリー>>

カナディアン・ロッキーの春。山中に親子のヒグマの姿があった。蜂の巣を採るのに夢中になっていた母熊は、落盤事故で死んでしまった。独りぼっちになった子熊に餌をとってくれる者も、守ってくれる者もいなかった。
一方、同じ山中に、ヒグマの毛皮を狙うハンターのトムとビルの姿があった。ある日、トムは丘の上に一頭の巨大な雄のヒグマを見つけ、反射的にライフルで撃ってしまった。肩を撃たれたヒグマは姿を消し、もうやってこないと思われた。だが、キャンプに戻ってみると、トムたちの愛馬たちが襲われ、傷ついていた。トムは、ヒグマの仕業と考え、彼を必ず仕留めることを決意した。
独りで山中を彷徨っていた子熊は、ハンターに撃たれ傷ついた大熊と出会った。大熊は傷を庇うあまり、子熊を避けていたが、やがて二頭は行動を共にするようになった。子熊は大熊を実の親のように慕い、大熊も子熊を実の子のように慈しむようになっていた。
トムとビルは、あの大熊を探すため、仲間に数匹の猟犬を連れてこさせた。猟犬の中にはトムの愛犬もいた。その頃、子熊と大熊は切り立った崖を越えようとしていた。崖のぼりに慣れておらず、大熊に遅れをとっていた子熊は、トムの猟犬たちに見つかってしまった。猟犬に吠え立てられ、逃げ場を失った子熊。取って返してきた大熊は子熊を庇って、猟犬を蹴散らした。トムとビルが崖にやってきた時には、トムの愛犬は大熊につけられた傷で虫の息だった。ビルは止む無くトムの愛犬を射殺した。
愛犬を失ったトムはよりいっそう大熊に執着するようになったした。彼は、再び姿を消した大熊をおびき寄せるため、ちょうど独りでいた子熊を生け捕りにし、キャンプに連れて帰った。トムとビルは子熊にミルクを与えたりしていくうち、子熊に愛情を覚えるようになり、子熊の方も警戒心を解いて人間に慣れていった……。