偶然、独身の億万長者と出会った娼婦が魅力的なレディに変身していく様を描く
ロマンティック・コメディ。
プリティ・ウーマン
PRETTY WOMAN
1990
アメリカ
119分
カラー
<<解説>>
リチャード・ギア、ジュリア・ロバーツ共演のロマンティック・コメディ。主題歌に起用されたオールディーズ、ロイ・オービソン「オー・ブリティ・ウーマン」と共に大ヒットした。孤独なエリート・ビジネスマンを母性本能をくすぐりそうなしょぼくれ顔で演じるギアは当時既にスター。一方、ヒロインに扮するロバーツはほとんど無名だった。人生に迷い娼婦になりきれない賢い女性を愛嬌いっぱいに好演した彼女は、一気にスターダムに踊り出た。他の注目キャストとしては、ヒロインのレディの教育係となるホテルの支配人役のヘクター・エリゾンドが良い味を出している。
『マイ・フェア・レディ』の現代版とも言われた本作だが、いまさらながらのシンデレラ・ストーリーである。金も恋人もなく、将来も見えないヒロインが、大金持ちに見初められた瞬間から幸福を掴んでいく物語。そして、分かっていながらも清々しい、ハリウッドの王道を行くハッピーエンド。しかし、ヒロインが娼婦で、セックスからはじまるロマンスという過激な設定になっているところは現代的と言えば現代的。女性にとっては、変身願望を満たし、ちょっと贅沢な気分が味わえ、男性にとっては、好みの女性を作り上げるというところに征服欲を刺激され、ちょっとこそばゆくなる作品である。女性の自立を入れながらも、結局のところ封建的な内容であるが、男女どちらも気持ちが良くみられるところが、ヒットの要因なのかもしれない。
<<ストーリー>>
大学院出のエリート、エドワードは妻と別れて今は独身。投資家である彼の仕事は、企業買収し、バラバラに解体して売り飛ばして利益を上げることだった。十億で買収しようと狙っているモース社の株価に神経質になっていたパーティの席、恋人でもある秘書から突然の別れを告げられた。一刻も早くパーティから抜け出したくなったエドワードは、自分の車が回されるのを待たずに、近くにあった弁護士のスタッキーの車で、独りホテルのあるハリウッドへ帰った。
ハリウッドの路上に金髪のカツラを付けて立つ娼婦のビビアンは、ルームメイトに貸していた家賃をドラッグにつぎ込まれてしまった。ドラッグの誘惑だけでなく、時には殺されることもある危険な仕事にビビアンは嫌気がさしてしまうが、家賃分を稼ぐための今夜も路上に立った。ビビアンは近くに停まった高級車に期待し、中の男に声をかけた。それは慣れないマニュアル車の上、道に迷っていたエドワードだった。エドワードはビビアンに、二十ドルで道案内を頼んだ。
道案内だけでなく、運転までビビアンに交代してもらったため、あっという間にホテルに到着した。エドワードは、約束の二十ドルをビビアンに渡すが、バスで帰ると言い出す彼女を放っておけなくなり、とりあえず部屋まで来てもらうことにした。エドワードは、奔放に振舞うビビアンの中に何か光るものを感じ、彼女を気に入った。エドワードは、ビビアンが思い切って発した二百ドルという言い値を飲み、一晩付き合ってもらうことにした。
翌朝、エドワードは起きぬけのビビアンを気遣い、朝食や風呂をすすめた。娼婦のビビアンにとって、男性にこんなに優しくされたのははじめてのことだった。今日、エドワードはモース氏に会うつもりだったが、氏は気難しい男のようである。スタッキーからは、一人で会うのは話がこじれるから、場を和ませるたるに女性を同伴すべきだ、と忠告された。うってつけの女性が目の前にいた。エドワードは、助手と正式に雇いたいとビビアンに申し出た。六日間3000ドルで交渉は成立した。
ビビアンは、大型顧客の獲得に小躍りするのも束の間、エドワードに言われたとおり、彼から渡された金を持って、ドレスを買いに出かけた。だが、ブティックの店員は、露出の多い派手な格好をしたビビアンに眉をひそめ、服を売ってくれなかった。落ち込んでホテルに戻ったビビアンは、部屋に行こうとしたところを支配人のバーニーに止められた。エドワードの姪だと見え透いた嘘をつくビビアンの事情をくんだバーニーは、ホテルの衣装係を紹介した。ビビアンはドレスを用意してもらった上、今夜のためにバーニーからテーブルマナーも教えてもらうのだった。
ホテルに帰ってきたエドワードの前に現れたのは、見違えるようなレディに変身したビビアンにだった。ビビアンは少々危なげながらも、大きな粗相もなく、モース氏とのディナーをこなした。だが、モース氏は、同伴した後継者の孫デイビッドの手前、頑なになっていて、会社を売らないの一点張り。エドワードも負けずにモース氏と徹底的に戦うことを表明した。商談が流れ夜、エドワードは、「一人になりたい」と言い、ホテルの部屋を出て行った。ビビアンが、帰りが遅いエドワードを探しに行くと、彼は下階のホールで一身乱にピアノを弾いていた……。