戦前の大津波で犠牲になった子供たちの呪いにより、
小さな海辺の町から子供たちが次々と失踪。
劇場版「学校の怪談」シリーズ最終作。

学校の怪談4

1999  日本

99分  カラー



<<解説>>

「学校の怪談」シリーズの最終作となった第4弾。第1、2作の平山秀幸が再びメガホンをとった。キャストは、前田亜季といったスター子役や野村宏伸、西田尚美といった人気俳優の出演はなく、前作までと比べるとグレイドは落ちている。
ある小さな海辺の町で、津波で死んだ子供たちの呪いによって起こる、子供の連続失踪事件を描いた物語。終盤に学校の場面があるものの、前作までのように学校に閉じ込められた子供たちが恐ろしい体験をするというアトラクション映画ではなくなっている。シリーズ中、“怪談”という看板に最も近い内容だが、学校の中で流れる怖い噂話という当初のコンセプトから外れているようである。コメディ色は極度に薄れ、ストーリーは静謐な展開を見せる。脅かし役も個性的なお化けや妖怪などではなく、人間の子供の幽霊なので、あまり愉快なものではない。
前作で派手さを極めたシリーズの続編としては大きなギャップがあり、当時の子供たちはさぞ面食らったことだろう。コンセプトのずれや、コメディ色が薄れた点では、子供たちの期待を大きく裏切る結果となってしまったと思われるが、前三作から確かに受け継がれたものもある。それは、友情や兄弟愛、そして、過去の者や亡くなった者との感動的な交流であり、前作までは付随的だったこの二つの要素を中心に据えられている。つまりは、娯楽性を切り捨て、ドラマ性を重視したのが、本作といったところである。
校舎でかくれんぼをしている最中、気が付かぬ間に大津波に飲まれて死んだ子供たち。彼らにとって、かくれんぼはまだ終わっていない。自分たちを見つけてくれる鬼を求め、現世から子供たちを次々と連れ去っていく――怖いことは怖いが、幽霊側の心情を思うと、なんともせつなくなる話である。恐怖描写は派手さはないものの、構図や音響が洗練されている上、怪談の名に相応しく、湿っぽい情緒のあるものに仕上がっている。また、ストーリー上、昭和の風情が随所に織り込まれているので、大人が見てもそこそこ楽しめるホラーではないだろうか。
ちなみに、本作は前作から二年振りの新作であり、前年の1998年には『リング』が公開され、ちょうど真っ只中であった和製ホラーブームに乗った形の公開となった。しかし、今にして思えば、子供を中心にブームとなった「学校の怪談」は、『リング』から始まるブームの礎を築いていたのかもしれない。そういう意味では、満を持しての登場ということになるのだが、当時にしても本作は地味な印象であった。
その後のホラーブームは、ただ驚かすだけの作品に観る側も作る側も飽きてしまい、恐怖の意義付けが行われるようなストーリー重視の作品が現れてくる。すなわち、『灰暗い水の底から』を頂点とする“しんみり怖い”ホラーへと遷移していくのが、同時にそれはブームの終息への始まりでもあった。前三作で同じようなネタを繰り返し、四作目にして趣向を変えた本作は、奇しくも“しんみり怖い”系。いずれ行き詰まるホラーブームを予言していたかのようである。



<<ストーリー>>

お盆休みに両親が旅行に出かける間、都会っ子の安西恒(こう)と弥恵の兄妹は、叔母の国見晴美が旅館を営む海辺の田舎町・戸野崎で過ごすことになった。恒と弥恵がやって来たその日、戸野崎は台風が直撃して大嵐だった。二人を迎えたあゆむは、お盆と時は海で死んだ霊が嵐に乗って返って来る、と言って恒を脅かした。
翌日、恒と弥恵とあゆむは、児童会長の楡林周治ら地元の小学生たちと海に出かけた。台風一過の海岸にはさまざまなものが打ち寄せられていて、周治はその中からランドセルを拾った。一方、周治の友達の野々井護、菊池倫平、米山恭一の三人組は、海岸に立つ地蔵にいたずらをして、鼻を欠けさせてしまった。
戦前、戸野崎の小学校は海に面した場所に建っていた。だが、大津波が襲い、学校は水没。その時、子供たちが何人か校舎に残っていたのだという。あゆむからその話を聞かされた後、恒は、当時の小学校の写真の中の少女に指を指されたような気がして、ぞっとした。
海で遊んだ周治が帰宅すると、海岸に置いてきたはずのにランドセルが玄関に置かれていた。誰かのいたずらと思って、ランドセルを海に捨てに行った周治が海を覗き込むと、水の中にぼんやりと青白い顔ま少年の姿が浮かび上がった。周治は驚いて身を引くが、海の中に引きずり込まれてしまった。
その夜、旅館に周治が行方不明になったという連絡が入り、恒たちは総出で探しにいくことに。一人で周治を探していた護は、昼間の地蔵に後をつけられていることに気付き、倫平と恭一に助けを求めた。その時、廃線になったはずの線路に列車が現れ、倫平と恭一の目の前で護が連れ去られてしまった。
結局、周治を発見できないまま、捜索はいったん打ち切られた。深夜、トイレに立った恒は大浴場に人の気配を感じた。大浴場の奥へ行くと、そこはなぜか学校の教室で、恒はかくれんぼをしている二人の少女を見てしまった。翌日、倫平と恭一が護のことを話しても、誰にも信じてもらえなかったが、恒だけは二人がでたらめを言っていないと確信していた。
周治がひょっこりと帰ってきた。見舞いにいった恒たちが詳しい話を聞こうとするが、周治はほとんど思い出せないようだったが、一晩中かくれんぼの鬼をさせられていたという記憶があると言う。周治の母親がもつてきたジュースがひとつあまっていた。その時、あゆむは、親友の保科須美子の肩に少女の人形が乗っているのを見た。
周治が失踪した夜から、恒の様子がおかしかった。かくれんぼしている少女たちを見つけ出すという使命にとりつかれていたのだ。少女の手がかりを求めて小学校に弥恵と一緒に向かった恒は、職員室の隅の戸棚の中に少女の幽霊を目撃。その直後、恒は学校が高波に飲み込まれる幻影を見て、倒れてしまった。
弥恵が戸野崎に来てから親しくなった文房具屋のおじいさん・関川幸一は、あの津波の生き残りだった。あの時、かくれんぼの鬼だった幸一は、津波が近づいているを気付きながら、隠れている友達に危険を報せることが出来なかったのだ。幸一は死んだ友達を思い、ときどき海を見に行くのだという……。