渋谷駅で帰らぬ主人を待ちつづけた忠犬ハチ公の生涯を映画化。

ハチ公物語

1987  日本

107分  カラー



<<解説>>

渋谷駅の待ち合わせスポットでも有名な忠犬ハチ公の物語を仲代達矢をはじめとした豪華キャストで映画化。あまりにも有名なエピソードであるが、意外にも劇場長編としては初の作品であった。犬に目をうばられがちだが、丁寧に再現された大正から昭和にかけての当時の渋谷周辺の町並みも見もの。本作はヒットしたが、前年の『子猫物語』、翌年の『マリリンに逢いたい』と動物映画のヒット作が続いた時代であったことも記憶したい。2009年、『HACHI 約束の犬』としてハリウッドリメイク。
原案と脚本は、新藤兼人が担当。駅前で主人の迎えを待つ犬という話を増幅させ、ハチが誕生する場面から死までを描き切る。史実には基づいているが、新藤の創作が多く入っているため、彼オリジナルのシナリオといっても過言ではない。特徴的なのは、感動的な誕生シーンから主人公であるハチの主体を意識させ、感情移入させていくところである。犬を見て“かわいい”とか“かわいそう”などと思わせるのではなく、犬への共感をはかったところは意欲的で、あまたある動物映画とは一線を画している。少なくとも、主人公である子猫をひたすらに突き放して描いた『子猫物語』とは対称的である。



<<ストーリー>>

大正初期。大学教授の上野秀次郎博士の娘・千鶴子が亡くなった飼犬の代わりとして、新しく秋田犬の仔犬をもらってきた。だがまもなく、千鶴子は嫁に行ってしまったため、代わって上野が仔犬を飼うことになった。上野は犬にハチと名付けた。
上野はハチを可愛がり、ハチも上野にたいへん懐いた。いつしか、ハチは毎日夕方になると渋谷の駅前に行き、汽車で仕事から帰ってくる上野を待った。だが、いつものようにハチが駅で主人を待っていたある日、上野は出先で急死してしまったのだった……。