宇宙らかやってきたアルヒのハワードが、
悪い宇宙人から地球を守るため活躍する姿を描くSFアドベンチャー。

ハワード・ザ・ダック
暗黒魔王の陰謀

HOWARD THE DOG

1986  アメリカ

110分  カラー



<<解説>>

マーベル社のコミックを、「スターウォーズ」、「インディ・ジョーンズ」のジョージ・ルーカス製作総指揮で映画化。宇宙からやってきたアルヒ型宇宙人の活躍をユーモラスに描くSFアドベンチャーである。主人公のアヒルと行動を共にするヒロインは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のヒロインであるリー・トンプソン。その友人として、ハワードに協力する青年にティム・ロビンス。
本作の最大の見ものは、スツースアクトで演じられたハワードである。人形丸出しの着ぐるみは、CG全盛にの今にして見ると一見チープだが、その表情にはCGには出せない味がある。物語の終盤でハワードが対決することになる“暗黒魔王”は、ミニチュアのコマ撮りで表現。愛らしいハワードとは対照的に、その姿も動きも非常に気色が悪いものとなっている。
SFXに目をひかれるが、本作の最大の特徴は主人公の描き方だろうか。SF映画において、古くは地球を侵略しにやってくる者として描かれた宇宙人。それを友好的な者として、画期的に描いたのが『未知との遭遇』と『E.T.』なら、本作はさらにそれをもうひとひねりしているようである。
ハワードは、地球人に対して悪意があるとか友好的であるとか以前に、姿がアヒルという以外は、地球人のごく普通の青年とほとんど変らない存在として登場。プライドが高く、ちっょとキザな性格で、生意気なジョークを飛ばしたり、ヒロインを口説いたりもする。宇宙人を何か得たいの知れないものではなく、誰もが共感できるような人生の悩みを抱えた一個人として捉えられているところが斬新で、ハワードを感情移入できる人格を持つものとして描いているため、彼の視点でストーリーが展開しているところも特徴的である。
ハワードを紳士としたところは、ハードボイルだった原作にゆずったところらしく、物語の前半は、どちらかというやや大人向けの青春ストーリーといった雰囲気を持っている。しかし、後半では雰囲気が一変。突如現れた“暗黒魔王”との戦いに始終。粋なジョークや皮肉もなりを潜め、派手なSFXやアクションに頼りきった展開となっている。それはそれで悪くはないのだが、主人公のキャラクターとストーリーのズレは、原作のハードボイルドを期待した人にも、「インディ・ジョーンズ」ばりのアドベンチャーを期待した人にも、強い違和感を残したようで、コミック原作の失敗作の代表とまで言われる作品となってしまった。
ちなみに、日本語吹き替え版でハワードを所ジョージが演じていたは有名で、オンタイムで観ていた観客にとっては、「ハワード・ザ・ダック」と言えば所ジョージというイメージが強いようである。



<<ストーリー>>

この宇宙のどこかにある地球に良く似た惑星のアメリカに良く似た町。ただ一つ違うのは、そこに暮らす人々がアヒルであるということ。アヒルの青年ハワードは、親に行かされていた大学を中退し、ミュージシャンを目指していたが、それも諦めて今はコピーライターの仕事をしていた。彼は人生に物足りなさを感じていた。
ある日、仕事から帰宅したハワードがソファでくつろいでいると、突然の地震に襲われた。いや、地震ではない。不思議な力が彼をソファーごと吹き飛ばしたのだ。そのまま宇宙空間へまで飛び出したハワードは、広い宇宙を一気に旅し、地球のクリーブランドという町へ墜落したのだった。
ハワードは事態を把握する間もなく、近くにいた不良たちに絡まれたり、カップルに驚かれたりと、散々に振り回された。ようやく路地裏で一息ついていたハワードは、少女が不良に絡まれるのを目撃。黙って見過ごすせないハワードは、少女を助け、不良たち追い払ったのだった。
少女はビバリーという名で、スターになる夢を追い、ロックバンドを組んでクラブで歌っていた。ハワードは、自分の姿を見て目を丸くするビバリーから、ここが地球という惑星であることを知らされた。当然、どこも行く当てのないハワードは、ビバリーのアパートにやっかいになることに。
ビバリーは、ハワードが故郷の惑星に帰れるようにと、バンド・メンバーの恋人で博物館に勤める自称科学者のフィルビーに相談した。初めて地球外生物を目の当たりにして興奮したフィルビーは、ハワードに知能テストを受けさせようとした。無礼な扱いに腹を立てたハワードは、ビバリーに当り散らしてしまうのだった。
ビバリーと別れて、ひとりぼっちになり、ハワードは途方に暮れてしまった。やっぱりビバリーに誤ろう、ハワードはバンドが出演するクラブへ向った。バンドのギャラをピンハネしていたマネージャーを懲らしめた後、楽屋を訪ねたハワードは、ビバリーと仲直り、今夜も彼女の部屋に泊まることに。
ハワードがビバリーの魅力に気付いて、種の壁を越えて良い雰囲気になりかけていた時、フィルビーが科学者たちと一緒に訪ねてきた。フィルビーの連れて来た宇宙物理学のジェニングス博士は、ハワードがこの地球にやってきた理由を知っていた。宇宙観測の実験中、実験装置が暴走し、観測用のビームがハワードの惑星、正確にはハワードの家の居間に直撃。ビームに捕らえられたハワードが、地球に引き寄せられてしまったのだ。
ジェニングスによれば、装置の動きを逆転させれることで、ハワードを故郷の惑星に帰すことが可能だという。ハワードは早速身支度をし、ジェニングス、フィルビー、ビバリーと一緒に実験場に向った。ところが、実験場に着いてみると、またしても事故が起きたところだった。ハワードの出発は延期になったが、心配なのは、ビームがまた何かを引き寄せてしまったかもしれないことだった……。