死刑囚から政府の工作員となった不良少女の姿を描くサスペンス。
『ニキータ』のハリウッド・リメイク。

アサシン

THE ASSASSIN

1993  アメリカ

109分  カラー



<<解説>>

殺し屋版「マイ・フェア・レディ」こと、リュック・ベッソンの『ニキータ』をハリウッドでリメイクした作品。監督のジョン・バダムは、当時、『バード・オン・ワイヤー』、『ハード・ウェイ』、「張り込み」シリーズといったコミカルなアクションを撮り続けていたが、それらで培った演出力を生かしながらも、本作はオリジナルと同じくシリアスな作品として撮り上げている。
オリジナルを尊重した作りになっていて、独自の解釈をあまり入れず、名場面の数々を忠実になぞっている。ただし、ヒロインの魅力を前面に押し出したところがハリウッド的でだ。当初予定されていたジュリア・ロバーツから交代したというブリジット・フォンダは、思いの他の好演。彼女の憂いを含んだ表情が美しく撮られていて、オリジナルより本作を好むファンも少なくない。
ヒロインと二人の男と関係も丁寧に描かれているが、特に、組織の上司との関係の描き方が絶妙で、上司に扮したガブリエル・バーンが秘めた男心を見事に表現。オリジナルにも勝るとも劣らないせつない作品に仕上がっている。その分、オリジナルのハードさが薄れて、甘いロマンスに向いがちなところはあるが、始末屋を演じたハーベイ・カイテルの存在感が物語をぐっと引き締めている。



<<ストーリー>>

悪い仲間とつるんで、すさんだ暮らしをし、麻薬や犯罪に手を染めていた少女マギー。ある深夜、仲間と商店を狙って強盗をはたらいた彼女は、麻薬で朦朧とした意識の中、通報を受けてやって来た警官を射殺してしまった。
逮捕され、第一級殺人としての死刑を宣告されたマギーのもとへ、一人の男が訪ねてきた。男は政府の秘密の諜報組織の一員というボブ。マギーはボブから、このまま死刑となるか、それとも秘密工作員として働くか、どちらか選ぶよう選択を迫られた。
マギーはボブのもとで働くことを決断した。そして、その日から、過酷な訓練が始まった。マギーは、工作員としての特殊技能を身に付けるだけでなく、女性としての気品を身に付けることを要求された。それには、マギーと同じ女性の工作員であるアマンダが教育者となった。
二年後。かつて野獣のようだったマギーは、美しいレディに変身していた。マギーはボブに伴われ、レストランでのディナーに出かけた。これまで訓練施設の中での生活を強いられてきたマギーとって、はじめての外出だった。ボブからプレゼントを渡され、無邪気に喜ぶマギー。たが、箱の中身はピストルだった。
これから店内にある要人を仕留めることが、マギーに課せられたテストだった。マギーは指示どおり動き、要人を撃った。だが、ボブから教えられた逃走経路の窓は壁でふさがれていた。自力で危機を乗り越え、組織の本部に戻ったマギーは、ボブを激しく非難した。だが、ボブは落ち着き払い、最終テストに合格したことを告げた。
マギーは、クローディアという名とシカゴ出身という偽の経歴を与えられ、外で生活することを許された。仕事の上でのコードネームとしては、マギーの好きなニーナ・シモンにちなみ、“ニーナ”を与えられた。
海辺の町でマギーの新しい生活が始まった。マギーは、部屋を紹介してくれた写真家の青年J・Pと恋に落ちた。J・Pと情熱的に愛し合い、女性として幸せな日々が過ぎていった。マギーが町にやってきてから四ヶ月が経ったある日、ニーナ宛てに電話がかかってきた。
マギーは指定されたホテルに向った。マギーに与えられた仕事は、ある部屋にルームサービスを届けるというものだった。意外と簡単な仕事を終え、ほっとしたマギーだったが、その直後、ルームサービスを届けた部屋が爆発した。
ボブはマギーに恋人が出来たことを知っていて、J・Pがどんな男か確認したいと言ってきた。マギーは渋々ボブを夕食に招き、J・Pにはおじと紹介した。J・Pは、マギーが身の上をまったく話さないことを気にしていたが、代わりにボブがうまく取り繕ってくれた。最後にボブは、マギーとJ・Pにニューオリンズ行きのチケットをプレゼントした。
マギーとJ・Pはニューオリンズでのバカンスを楽しんだ。マギーはそれをボブの好意だと思っていた。だが、その夜、ホテルの部屋に仕事の電話がかかってきた。マギーはバスルームにこもり、窓から外へ向けライフルを構えた。マギーがターゲットの情報を待っていたその時、J・Pから突然のプロボーズを受けた……。





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