市長の不実を告発するために落書きを始めた青年が、
街の英雄として祭り上げられていく様をコミカルに描く
本邦未公開の社会派ドラマ。
ターク182
(
怒りの街ニューヨーク
)
TURK 182!
1985
アメリカ
102分
カラー
日本劇場未公開
<<解説>>
「ポーキーズ」シリーズのボブ・クラークが、兄の名誉を守るために落書きという手段に打って出た青年の姿を青春コメディのノリで描いた作品。人命救助の際に怪我を負った消防士の兄に年金を支払おうとしない市長に対して、消防士の弟は“ターク182”名乗り、街の様々な場所に市長のスキャンダルを書きなぐる。しかし、彼の意図に反し、“ターク182”はまたたくまに街の英雄になってしまう。
神出鬼没の愉快犯と、それを取り締まろうとする警察の攻防というサスペンスをからめつつ、“ターク182”騒動が街全体を巻き込む一大イベントに発展していく様が、非常にテンポよく描かれている。主人公が市長と市民の前で最後の大パフォーマンスに挑むクライマックスは大いに盛り上がり、スポーツ中継を観戦するような興奮と感動を受けることだろう。
しかしながら、主人公のパフォーマンスは犯罪であり、告発の手段としても決してフェアとは言えないものであった。一方、市民は、主人公が捨て身で発したメッセージを理解しようとせず、ただ面白がって彼を英雄として祭り上げていく。主人公の反権力的な告発を痛快に描くという点だけ観れば無邪気な作品だが、皮肉めいた社会派のテーマも含んでいるようだ。結果として、主人公が引くに引けなくなっていく様は、無責任に面白いことに群がり、擬似イベントを作り上げていくマスコミや大衆への痛烈に批判と言え、それは現代のネット社会で顕著な問題だろう。面白くも恐ろしい作品である。
<<ストーリー>>
消防士のテリーは非番の日に火事に遭遇。火事場から子供を救い出し、その際に怪我を負ってしまった。だが、市長は、非番の出来事だったことを理由に、テリーに年金を支給しようとしなかった。
テリーを誇りとする弟のジミーは、市長に直訴するが、まともに取り合ってもらえなかった。怒ったジミーは、“ターク182”を名乗り、市長のスキャンダルをあちこちに落書きをするようになった。
ジミーが落書き始めたのは、年金が支払われないことへの抗議だったが、本当の目的は、テリーの名誉を守ることにあった。ジミーは皆の注目を集めることには成功したが、市民は神出鬼没の“ターク182”を英雄とみなすようになっていった……。