家族には平凡なセールスマンを装いながら、
実は凄腕のスパイである男の活躍を描くアクション・コメディ。
トゥルー・ライズ
TRUE LIES
1994
アメリカ
141分
カラー
<<解説>>
妻や娘ま前では平凡な夫であり父であるセールスマン。しかし、その正体は政府の重要秘密機関で働くスパイだった。と、いうシチュエーションのアクション・コメディ。大枠は、スパイのプライベートを描くという往年のスパイ映画のパロディであるが、その他にもスパイ映画やアドベンチャー映画のオマージュンと思える演出が随所に見受けられる。『LA TOTALE!』という題名のフランス映画のリメイクで、主演のアーノルド・シュワルツェネッガーの持込企画である。監督は、シュワルツェネッガーの出世作『ターミネーター』のジェイムズ・キャメロン。前作『ターミネーター2』に続く三度目のコンビとなった。
物語の前半は、主人公の妻の浮気調査を巡るコメディが中心に描かれる。シュワはアクションもさることながら、『ツインズ』、『キンダガートン・コップ』でコメディの定評があるが、キャメロンにとっては、現時点で本作が唯一のコメディ作。キャメロンのセンスが微妙なのか、コメディ俳優としてのシュワの魅力を出し切れているとは言えず、ギャグで笑わせる場面もほとんど無いが、「国の最高の諜報機関が総力をあげて浮気調査を行う」という“もしも”を大真面目にやることのおかし味はなかなか。テロリストとの戦いという意外な方向へ急展開していくという、ご都合主義を逆手に取ったようなハチャメチャなストーリーも面白い。特に、国のためより、まずは家族のために戦うシュワの活躍は、下手なスパイ映画より手に汗にぎらされるのではないだろうか。
後半は、主人公とテロリストとの死闘を、超ド級のアクションで畳みかけながら描いていく。日本円にして120億という莫大な製作費が話題となり、ミサイルで破壊されるシーンのためだけに橋を建設、海軍の協力で垂直離着陸のハリアー戦闘機を借りる(ただし、アクションシーンは実物大の模型を使ったブルーバック合成)など、映画の内容にも負けない破天荒な撮影を敢行した。数々のアクションは、大作エンターテイメントとして満足の行くスケールであるだけでなく、馬とバイクのチェイスや戦闘機の上での取っ組み合いといった、普通のアクション映画では観られない奇抜なものが多い。コメディだからと言ってアクションに手を抜くのではなく、むしろ、コメディであるからこそ許されるユニークなアクションをフルスイングで演じたところは、評価されるべきところかもしれない。
<<ストーリー>>
政府の機関“オメガ・センター”で諜報員として活動するハリー・タスカー。彼は自分の仕事のことを、妻のヘレンや娘のデイルにもいっさい明かさず、表向きはコンピューターのセールスマンと偽って暮らしていた。夫の真実を知らないヘレンは、ただ善良で真面目なだけのハリーを退屈な男と思っていた。
ハリーのチームが今追っているのは、“赤いジハード”というアラブ系のテロリスト。彼らは、カザフスタンで手に入れた旧ソ連の核弾頭をアメリカに持ち込もうとしているようだ。だが、まだ確証がつかめず、上司のトリルビーから発破をかけられていた。
“赤いジハード”の支援者であるジャマール・ハレドから、美術商ジュノ・スキナーが多額の金を受け取っていたことが判明。ハリーは、以前ハレドの邸で出会い面識のあるジュノに近づき、探りを入れた。諜報機関に目をつけられていることに勘付いていた“赤いジハード”のリーダーのアジズは、素性の知れないハリーを警戒した。
その日は、ハリーの誕生日。パーティを用意してくれているヘレンと約束し、八時までに帰宅するつもりだった。だが、帰宅途中、アジズとその仲間につけられていることに気付いた。ハリーは公衆トイレにアジズたちをおびき寄せ、激しい銃撃戦に。ハリーに仲間を撃たれたアジズはバイクで逃走。ハリーも騎馬警官から馬を拝借して後を追うが、あと一歩のところで逃げられた上、パーティもすっぽかしてしまったのだった。
翌日、ハリーは、昨夜の埋め合わせのため、ヘレンを昼食に誘うことにした。ハリーがヘレンの働く法律事務所に向うと、ちょうど、ヘレンは電話中。電話の相手は男で、会話は不倫を匂わせるものだった。電話を切った後、いそいそと出かけていくヘレンの上気した顔を見たハリーは、目の前が真っ暗になった。その夜、それとなくヘレンの昼間の行動を探るが、明らかに何かを隠しているようだった。
ヘレンの不倫を確かめずにはいられなくなったハリーは、通話記録を取り、疑いをよりいっそう強くした。ハリーは、相棒のギブに頼み、違法を承知でヘレンの鞄に盗聴器を仕掛けると、男に会いに出掛けるヘレンの後をつけた。ヘレンの相手はサイモンという男。逢瀬の場となったレストランでは、周囲を警戒しているようだった。ハリーは、一瞬サイモンを同業者だと思ったが、彼がトイレでの騒ぎを自分のやったこととして話すのを聴き、スパイを騙っていることに気付いた。
サイモンの正体は中古車ディラーで、チンケなスケコマシだった。客としてやってきたハリーに自慢げに語ったサイモンの話によれば、夫に退屈している主婦は刺激に飢えているのだという。ちょっと危険な香りを匂わせてやれば、コロリなのだそうだ。ハリーは、サイモンがヘレンを毒牙にかけようとしてるのを知り、はらわたが煮え繰り返るが、ぐっとこらえたのだった。
ハリーは、ギブの報告書でヘレンがサイモンと再び会うことを知ると、ヘリまで駆り出し、二人の車を追跡した。サイモンは、隠れ家であるトレーラーハウスにヘレンを連れ込むと、「任務のために妻の役を引き受け欲しい」などと嘘を言って、迫ろうとした。ハリーは正体がばれないように覆面で顔を隠すと、仲間と共にトレーラーハウスに突撃。サイモンとヘレンはただただわけもわからず呆然とした。
ハリーは正体を隠したままヘレンをスパイ容疑の名目で尋問した。そして、ヘレンの意外な願望を知ることに。彼女はアドベンチャーに憧れていたのだった。サイモンとの間に何はもなく、自分への変わらぬ愛情を確認したハリーは、ヘレンの願望を少しだけ叶えてやることにした。ハリーはヘレンに、スパイ容疑を晴らす代わりに任務に協力するよう強く求め、“ドリス”という暗号名を与えた。
翌日、ヘレンにギブから電話がかかってきた。“ドリス”への任務の指示だった。一時間後、ヘレンはギブに指定されたホテルのスイートルームにやってきた。娼婦として男と会い、隙を見て盗聴器を仕掛けることが任務である。ヘレンは、相手がハリーとも気付かず、男の前で賢明に踊った。男の指示で仕方なくベッドに横になるが、ついに耐え切れなくなり、キスをしてきた男を側にあった電話機で殴ってしまった。
ヘレンは殴りつけてから、ようやく相手がハリーであることに気付いた。ハリーが事情を説明しようとしたその時、部屋に男たちが押し入ってきた。アジズの手下たちだった。ハリーとヘレンが連れて行かれたアジズのアジトには、件のソ連の核弾頭があった……。