親戚に会いにニューヨークを訪れた香港の刑事が暗黒社会の犯罪に巻き込まれる。
ジャッキー・チェンのハリウッド進出作。
レッド・ブロンクス
紅蕃區
RUMBLE IN THE BRONX
1995
香港/カナダ
104分
カラー
<<解説>>
ニューヨークの下町を舞台にジャッキー・チェン扮する刑事が活躍するアクション作。監督は、『ポリスストーリー3』でタッグを組んだスタンリー・トンで、大掛かりなアクションか見どころ。カナダでロケを敢行して撮影された本作は、台詞が英語で吹き替えられ、音楽も差し替えられたバージョンがアメリカで公開され、成功収めた。『バトルクリーク・ブロー』と『プロテクター』で二度のハリウッド進出に失敗していたが、これで三度目の正直となった。
香港から英語がまあまあ話せる刑事がおじの結婚式のためにニューヨークにやってくる。刑事はおじの経営するスーパーの手伝いをはじめるが――そんなちょっと朴訥としたすべりだしだが、他のジッャキー主演作と比べるとコメディ色は薄め。ラストの悪の親玉への仕打ちなど、笑わせる場面も随所にあるが、少なくともドタバタはない。一貫してシリアスな内容である。暴走族とのご近所トラブルで終わると思わせ、突然、暗黒社会の犯罪との戦いへと物語のスケールがシフトしていくストーリーは、ジッャキー映画的には斬新だ。
ストーリーの二段構えに対応するかのように、ヒロインも二段構えになっているい。ヒロインの一人は、スーパーを買う実業家に扮するアニタ・ムイ。ジッャキーとユーモラスなやり取りが楽しい。もう一人のヒロインは、暴走族のボスの恋人に扮するフランソワーズ・イップ。ひょうきんなアニタに対して色っぽいキャラクター。ジャッキーとは恋人のような関係になるが、ロマンスよりも人情ドラマになってしまうところが、やはり香港映画なのだ。
本作におけるジャッキーのキャラクターだが、警官という定番の設定ながら、異国の地での活躍というところなので少し事情が違ってくる。超人的な活躍は見せるが、ヒーローではなく、いざとなったら警察頼みという一般人なのである。特に本作は、ジャッキーがやられて、血と汗にまみれるシーンが印象的。もちろんやられるシーンは珍しくないのだが、本作は特にひどい仕打ち遭う回数が多いようだ。ユーモアが薄くシリアスだと感じられるのも、そのせいかもしれない。
アクションシーンに関しては、従来のカンフー・アクションと『ポリス・ストーリー』以降スタント・アクションの双方とも好調と言って良いだろう。中盤の倉庫での多勢を相手にした格闘シーンはジッャキー流カンフー・アクションの真骨頂。倉庫に置かれた電化製品をうまく利用したリズミカルなアクションは、真似できる者は居まい。一方、派手ではないが、建物を垂直に上る、ビルからビルに飛び移る、などの命がけのスタント・アクションも何気にいくつもこなされているので、見逃さないように。
香港映画としては巨費がつぎ込まれて作成されたというだけあり、ジッャキーが体を使ったアクション以外にも、見どころは多い。建物の倒壊、自動車の破壊などは、派手さで目を引く場面の連続だが、単に派手ではなく、ユニークで刺激的なアイデアに溢れているところが素晴らしい。その最たるものが、クライマックスでのホバークラフトを使ったチェイス・アクションで、暴走ホバークラフトVSカウンタックの対決は必見。
<<ストーリー>>
香港の警官クーンは、ブロンクスでスーパーマーケットを経営するおじのビルの結婚式のため、ニューヨークにやってきた。ビルは店を売りに出していたが、できれば、経営をクーンを任せたいと考えていた。クーンはビルの家に着くと、隣りに住む足の悪い少年ダニーとさっそく仲良くなった。
ビルの結婚式前夜、ビルのアパートの前で、暴走族たちが大騒ぎをはじめた。結婚式に使う借り物のリムジンに傷をつけられることを恐れたクーンは、暴走族たちのレースに割って入ってしまった。その時、クーンは、暴走族のボス、トニーの恋人ナンシーと出会った。ナンシーがダニーの姉であることを、クーンはまだ知らなかった。
ビルが経営のことを断ったため、店は女実業家のエレインに売却されることに。はじめは契約金に納得がいかないでいたエレインだったが、クーンの誠実な人柄を気に入り、契約を決めた。ところが、エレインが店を手に入れた矢先、あの暴走族が店で万引きをした。クーンは、アンジェロという暴走族のメンバーを追い払うが、そのせいで暴走族から目を避けられることに。
その夜、クーンは暴走族の罠にはまり、路地裏の袋小路に追い詰められた。割れビンを何棒も投げつけられ、傷だらけになったクーンは、這うようにしてアパートに帰り着くが、気を失ってしまった。ナンシーと介抱で気が付いたクーンは、ナンシーとダニーの姉弟の事情を知ることに。いつも家を空けている姉がどこ何をしているのか知らないダニーは、独りぼっちて寂しそうだった。
スーパーは暴走族のやりたい放題になっていた。暴走族からみかじめ料を要求されたエレインは、これでは詐欺だとクーンに怒り、契約の撤回を迫った。その時、またしても暴走族が現れ、店を滅茶苦茶に。止むを得ず警察を呼んだクーンは、暴走族からの怒りを買い、白昼の町を執拗に追いまわされるのだった。
クーンがナンシーに代わり、ダニーと車椅子を押して散歩に出かけた時のことだった。二人の目の前で黒塗りの車が事故を起こした。居合わせたアンジェロは、怪我で動けなくなっていた運転手から指輪や時計を盗み、ついでにアタッシュケースも奪った。アタッシュケースには、密取引されたたくさんのダイヤモンドが入っていた。ダイヤは盗品で、殺し屋を介してシンジケートのボスの手に渡るものだった。
危険を察したクーンは、ダニーを抱きかかえて、アパートの部屋に身を潜めた。殺し屋は、事故車を爆破して証拠を消した後、アパートに逃げ込んだアンジェロを追った。逃げ切れないと思ったアンジェロは咄嗟に近くにあったダニーの車椅子のクッションにダイヤの袋を隠し、殺し屋に白を切りとおしたのだった。
アパートでの騒ぎの通報を受けて駆けつけた警察は、殺し屋とアンジェロを捕まえたが、両者とも口を割らなかった。警察はアンジェロを解放し、様子を見ることにした。アンジェロはダイヤを取り戻すため、ダニーのクッションを狙い、後をつけた。一方、殺し屋も、ダイヤを探すため、FBIを名乗ってアパートに姿を見せるようになった……。