飛行機事故で奇跡的に生き残ったことで死を恐れなくなった男を描く。
重大事故後の心のケアを題材にした異色のドラマ。
フィアレス
FEARLESS
1993
アメリカ
112分
カラー
<<解説>>
ラファエル・イグレシアスの同名小説の映画化。原作者自ら脚本も担当。監督は、『モスキート・コースト』、『いまを生きる』など、問題提起を含んだシリアスドラマでも定評のあるピーター・ウィアー。主演は、ベテランの性格俳優ジェフ・ブリッジス。共演は気鋭の女優ロージー・ペレス。
飛行機の墜落という大事故に遭遇したことをきっかけに、死を恐れなくなり、危険な行動をとるようになってしまった男の姿を描く。理不尽な事故や事件でショックを受けた人のケアを題材にした内容は、当時としてまだ、心的外傷という概念自体になじみが薄かっただけに、画期的であり、かつ、衝撃的であった。生と死の境目をテーマにしたドラマであるため、観る者に息が詰まりそうな緊張を強いるが、その緊張から一気に解放されるラストは感動的。生と死を扱いながら、宗教的な暗示があまり入っていないところも、万人に受け入れ安いのではないだろうか。
許容を超えた恐怖を克服するため、精神的自己防衛のように命知らずの行動をとる主人公。一方、同じ事故の被害者でありながら、子供を亡くして自分だけ助かったことで、自分を責め続ける女性。まったく異なる反応を示しながらも、同じ苦しみを持つ二人が、癒しを求め合うようにに交流していく様を中心に物語は展開していく。ブリッジスとペレスは、いとも簡単にバランスを崩される人間の心の脆さを表現する一方、恐怖に捕らえられた悲痛な魂の叫びも見事に表現している。二人の真に迫った芝居が、本作を、観る者に生と死の尊さについて考えさせる秀作に押し上げたといっても良いだろう。
<<ストーリー>>
飛行機の墜落事故で奇跡的に命をとりとめたマックス。彼は生き残りの乗客を導いて飛行機から脱出させた後、事の重大さに関わらず、現場からそのまま友人の家へと向った。その時から、マックスの中で何かが変わってしまった。事故のショックか、苺アレルギーがなぜか治っていたが、変わったのはそれだけではなかった。
警察に発見され、家に帰らされたマックスに、事故後の心のケアのため、航空会社からセラピストのビルがつけられることになった。ビルの目からも、落ち着いていて見えるマックスだったが、彼は自分を不老不死と思い始めているようだった。
航空会社に賠償を請求するため、裁判が開かれることになった。マックスは弁護士のブリルスタインから被害者に有利な証言をするように言われてたが、上の空だった。また、マスコミからは多くの乗客の命を救ったことでヒーロー扱いされるが、それにも上の空だった。マックスのただ一つの関心は、事故の瞬間の感覚をもう一度掴むことだった。
マックスは、ビルからの引き合いで、あの事故で子供を亡くしたカーラという女性と出会った。事故以来自分を責めつづけるカーラを救いたいと考えたマックスは、彼女と度々会って話をするようになった。よかれと思って二人をひきあわせたビルだったが、マックスの精神状態が危険な状態に向ってしまうのではないかと心配した……。