ブロードウェイの演劇界を舞台に、
スターを目指す新人女優イヴのしたたかな姿を描くドラマ。

イヴの総て

ALL ABOUT EVE

1950  アメリカ

138分  モノクロ



<<解説>>

スターになめためには手段を選ばない新人女優イヴと、彼女により大スターの座から蹴落とされたベテラン女優マーゴの確執を通して、生き馬の目を抜く演劇界の内幕をセンセーショナルに描いたシリアス・ドラマ。アカデミー六部門をはじめ、カンヌでも評価を得た名画である。後にマリリン・モンローが端役で出演していることでも話題になった。モノクロ作品だが、後にカラーライズ版も作られている。
イヴとマーゴという二人の女優の対決を中心に、演出家、脚本家といった利害の絡んだ周囲の人物の思惑が複雑に絡み合った人間模様を描いていく。諧謔を弄しながらて、互いに感情をぶつけ合う芝居が迫力。演劇界を舞台にした本作は、人物のややオーバーな挙動を見る限り、意識して舞台風の演出をつけているようだが、語り口がサスペンス映画の手法を用いているところが特徴。ともすれば、メロドラマに陥りそうなストーリーを引き締め、観る者を引き込んでいく。
大女優マーゴにとって、脅威の存在として描かれるイヴ。マーゴの周辺の人物を汚いやり口で巧みに操りながら、微塵の同情もなく彼女を追い詰めていく様は、ほんとうに戦慄すべきものである。しかし、映画は、イヴの悪女ぶりを観客にかれでもかと見せつけたところで、「はたしてイヴはほんとうに悪女だったのか?」と、疑問を投げかけて終わる。芸能界におけるスターをめぐるえげつない戦い。その戦いは、これまでにも幾度となく繰り広げられてきた。そして、これからも。



<<ストーリー>>

演劇界の大スターのマーゴ・チャニングは、自分を心から崇拝すると語るファンの田舎娘イヴ・ハリントンの話に感動し、彼女を自分のもとで働かせることにした。だが、イヴは、マーゴから女優としての一挙手一投足を盗み、劇作家のロイド・リチャーズの妻のカレンに、マーゴの代役を頼んでいた。
イヴはオーディションで見事な台本の朗読を聴かせ、審査員の度肝を抜いた。その結果、マーゴの役はイヴに奪われた。マーゴはイヴに怒りをあらわにするが、恋人で演出家のビル・サンプソンに別れを告げられると、感情的になってしまった自分を反省した。
マーゴはイヴを許していたが、舞台を成功させたイヴが、批評家のアディソン・ドゥイトによるインタビュー記事で、マーゴへの恩をあだで返すような発言をした。そのことは、マーゴばかりか、イヴの味方だったカレンにも我慢がならなかった。その後、カレンのもとにイヴが詫びを入れにやって来るが……。