第二次大戦中、空襲のショックで半狂乱になったシェークスピア劇俳優と、
彼をなだめすかして舞台に立たせようとする付き人のやり取りを描く。
ロナルド・ハーウッドの舞台劇の映画化。

ドレッサー

THE DRESSER

1983  イギリス

118分  カラー



<<解説>>

ロナルド・ハーウッドの舞台劇を名匠ピーター・イェーツが映画化。シェークスピア劇の名優と、その付き人兼衣装係の楽屋での喜劇じみた掛け合いを描く人間ドラマ。冒頭以外は、ほとんど楽屋の場面であり、かつ、ほとんど二人芝居である。“バックステージもの”というより“楽屋もの”と言えるような作品である。
主演のアルバート・フィニーが老座長を、同じくトム・コートネイが付き人を演じるのだが、過剰に滑稽に演じている。すぐに弱気になって泣き出す座長の情けないこと。そんな彼を言葉巧みに操縦する付き人の狡猾さもまた負けてない。しかし、彼らの無駄とも思えるやり取りは、持ちつ持たれつの信頼関係で結ばれている所以なのである。
見ようによっては痴話喧嘩のような恥ずかしい舞台裏を、赤裸々に見せてしまっているわけであるが、かと言って、格調ばかりを重んじるシェークスピア劇に物申しているというわけではない。座長が俳優の生き様を見せ、付き人が意外な独白をするラストは、シェークスピア劇に対する深い愛情と敬意が感じられる。



<<ストーリー>>

第二次大戦中のイギリス。シェイクスピア劇団は巡業にやって来たある町で、空襲で焼け出された人々と遭遇した。劇団を率いる老座長は大きなショックを受けた。
公演の数時間前の楽屋。今夜の演目は「リア王」の予定だった。ところが、座長は舞台に立ちたくないなどと言いはじめた。彼はまだ錯乱状態のままだったのだ。付き人兼衣装係のノーマンは困り果てた。
ノーマンに宥められ、どうにか舞台の準備をはじめる座長だったが、今夜の演目を「オセロ」と勘違い。さらには、メイクの仕方や最初の台詞も思い出せない始末。やがて、「リア王」の幕が開くが……。