無免許の天才外科医ブラック・ジャックが超人類の謎に迫る。
手塚治虫の代表作、初のアニメーション映画化。
ブラック・ジャック
BLACK JACK
1996
日本
93分
カラー
<<解説>>
手塚治虫の代表的な名作漫画「ブラック・ジャック」の劇場版長編アニメーション。同作は、1977年に大林宣彦監督により『瞳の中の訪問者』という実写映画が作られているが、アニメとして映画化されるの今回がはじめて。1993年から劇画タッチのアニメ監督で知られる出崎統によるオリジナル・ビデオのシリーズがリリースされていたが、それの劇場版という位置付けのようだ。監督はビデオ・シリーズと同じ出崎。脚本は原作にはないオリジナル・ストーリーとなっている。
ファン待望のアニメ映画化ということだが、作品の雰囲気は原作と大きく異なっている。当時、社会問題となっていた薬害エイズ事件から着想を得たと思われるハードでシリアスなストーリーは、原作のような人間ドラマというより、SFチックな医療サスペンスである。また、原作では冷徹であった主人公ブラック・ジャックが正義漢として描かれ、感情を爆発させる場面があり、原作ファンには違和感のある作品となった。
陰影の強調、留め画の多用、ケレン味の効いた派手で力強い演出といった出崎監督の作家性が存分に発揮された世界観は完成度が高く、原作云々を抜きにすれば、オリジナル作品として評価に値する水準と思われる。とりわけ、原作をハードボイルドとして解釈したことは、ファンにも好意的に受け入れられたようで、以降のブラック・ジャック像を決定付けたといっても過言ではない。キャラクターに関しては、後のテレビ・シリーズや2005年の劇場版もこれを踏襲している。
<<ストーリー>>
スポーツ、芸術、学術界で超人的な活躍を見せる“超人類”がもてはやされるようになってから二年。無免許の天才外科医ブラック・ジャックは、自分が完璧に治療したは異常なずの少女リサ・シゲールり死の連絡を受けた。そんな時、ブラック・ジャックは、ジョー・キャロル・ブレーンという謎の女に、助手のピノコを誘拐されてしまった。ジョー・キャロルの目的は、超人類の研究にブラック・ジャックを協力させること。ブラック・ジャックはピノコを救うため、ジョー・キャロルの研究所に向った。
超人類たちは皆、身体機能が異常に向上するモイラ症という病気だった。ブラック・ジャックは、超人類たち超人的な能力を持つようになった原因が、視床下垂体の活性化であるという仮説を立てた。その時、事件が起こった。ジョー・キャロルが人体実験を行っていたという疑いがかかり、研究所がボランティア医師団MSJに占拠されてしまったのだ。さらに、研究所の母体である製薬会社ブレーンが、超人類と呼ばれる人々とかつて関っていた事実が明るみになった。やがて、ブラック・ジャックは、患者の脳外科手術により、視床下垂体に病原体を発見するが……。