近未来のロスを舞台に殺人エイリアン“プレデター”と刑事の攻防を描く
SFバイオレンス・アクション。

プレデター2

PREDATOR 2

1990  アメリカ

108分  カラー



<<解説>>

前作の南米のジャングルから舞台をロサンゼルスの大都市に移し、装いを新たにさせた「プレデター」シリーズ第2弾。前作の主演シュワルツェネッガーは出演せず、「リーサル・ウェポン」シリーズのマータフ刑事役で人気の出たダニー・グローバーが主演。お人好しのマータフとは正反対のアグレッシブでタフな刑事に扮したグローバーが、無敵のプレデターに果敢に挑むというストーリーになっている。
本作は、前作の3年後に作られた続編だが、劇中の時代は公開当時から少し先の未来。前作の事件から10年後という設定になっている。犯罪が激化したロサンゼルスを舞台にした近未来SFアクションということになるのだが、未来感が現れているのは銃や地下鉄の造形ぐらいであり、ほとんど現代劇として観ることが出来る。
闘いの舞台がジャングルから都市に移った点については、エイリアンが人間の窺い知れぬところで生活圏に侵入してくるというSF映画として、『ヒドュン』や『ゼイリブ』といった佳作があるので、目新しさは無い。しかし、プレデターと刑事との死闘が地下鉄、工場、ビルの屋上などの大都市の死角で繰り広げられるの場面は引き込まれるものがある。屋根の上に現れる現れては消えるプレデターなどは、前作のジャングルにも相当する新鮮な画である。プレデターの視点を現したサーモグラフィの映像も前作以上に多用し、シューティング・ゲーム感覚のスリルも楽しめる。しかし、この点に関しては、ゲームの方が本作の演出に影響を受けていた可能性もなくはない。
前作では、見えない敵の正体がなかなか明らかにされないという『ジョーズ』方式の演出が功を奏していたが、続編ではもうプレデターの正体がバレてしまっているため、サスペンス要素はほとんどない。その代わり、プレデターの目的が侵略ではなく、文化として狩を行っているという設定が掘り下げられ、ユニークなキャラクターを深めている。人間の醜さを鏡に写したようなプレデターは、妙に感情移入を誘うものがあり、グロテスクではあるが憎めないという特異なキュラクターとなった。この点、ライバル視されているエイリアンとは逆である。意表をつくラストシーンもプレデターの人間味(?)のある性格を如実に現したようで興味深い。
主人公が敵の正体を突き止めるために頭を使うより、体を使って敵を打ち倒すことを主目的にしているところは前作と同じであるが、特に本作はアクション・シーンは格段に派手になった。というのも、製作のジョエル・シルバーとローレンス・ゴードンは、前作の後に『ダイハード』を成功させたプロデューサであるし、シルバーは「リーサル・ウェポン」シリーズも手がけてるからだろう。「リーサル…」の第一作で敵役として共演したゲイリー・ビューシーがグローバーと再共演させたことからも、「リーサル…」シリーズを意識したことが伺える。『プレデター』の続編というよりも、『ダイハード』をSF仕立てにしたバリエーションとしての意味合いが強かったのではないだろうか。グローバー扮する刑事を高所恐怖症というヒーロー未満の設定したところも、まさに『ダイハード』風である。しかし、結果としては、プレデターというキャラを描きこんだSF部分と、『ダイハード』風アクションのミスマッチが痛快で、画期的とも感じられる快作に仕上がっている。



<<ストーリー>>

1997年の犯罪都市ロサンゼルス。警官と麻薬組織が真っ向から対立し、白昼から繰り返される銃撃戦で市街はさながら戦場の様相を呈していた。コロンビア人の麻薬組織“スコルピオ”を追っていた市警のマイク・ハリガン警部補は、ついに、敵をアジトのビルまで追い詰めていた。
同僚のダニーやレオナらと共に、まさにビルー強行突入をしようとした時、突如、ビルの一室が爆発。破壊された部屋にハリガンらが踏み入れてみると、そこにはズタズタに引き裂かれたスコルピオのメンバーらの死体があり、その中のひとつの死体は天井から逆さ釣りにされていた。人間業によるものとは思えない惨状に呆然としたハリガンたちは、透明の人影のようなものを見たような気がした。それが十年前に南米のジャングルに現れた怪物プレデターであることを、ハリガンらは知る由も無かった。
今回のアジトへの強行突入は、連邦麻薬局を権利を無視した行為だとして、ハリガンは本部長ハイネマンから叱責を受けた。処分の代わりにハリガンは、連邦麻薬局からやってきたピーター・キースという男の捜査に協力させられることになった。また、ハリガンは、刺激を求めて転属してきたジェリー・ランバートという新入りの面倒もみなくてはなせなくなった。そんな時、麻薬王レイモンのマンションの一室で事件は起こった。
現場のマンションに駆けつけたハリガンらが見たものは、逆さ釣りにされ、皮膚をはがれた何体もの死体だった。それらは、レイモン自身と、彼をレイモンを襲撃した敵対するジャマイカ人の組織のメンバーたちだった。物陰に隠れていて生き残っていたレイモンの愛人は、怯えきった様子で「悪魔がやってきた」などとうわごとのように言うだけだった。ハリガンは壁に穂先のようなものが刺さっているのを発見。これが普通の事件でないことを確信したハリガンは、レイモンの愛人がどこへ連れて行かれるか確かめるようジェリーに命じた。
ジェリーが救急車を追跡した結果、レイモンの愛人が病院ではなく、ヘリでどこか別の場所に連れていかれたことが分かった。しかも、ヘリのそばにはキースの姿もあった。それはハリガンの予想通りだった。キースはいったい何者なのか。ハリガンはジェリーに、引き続きキースに張り付くよう命じた。一方、ダニーは人気のない深夜に現場に進入し、槍の穂先を回収しようとしたが、待ち伏せていたプレデターに惨殺されてしまった。
翌日、相棒の死を知ったハリガンは悲しみと怒りに燃え、自分で犯人を挙げようと心に誓った。自重せよというハイネマンの命令を無視して、署を飛び出しハリガンが向った先は、ジャマイカ人の組織のボス、キング・ウィリーのもとだった。ハリガンは共同戦線を張るつもりで、ウィリーに殺人鬼の正体を尋ねた。だが、ウィリーに分かっていることは、相手が異世界からやってきた悪魔であることだけだった。ハリガンが去った後、ウィリーの目の前にプレデターが現れた。
ダニーに続き、ウィリーも殺された。次の標的はハリガンだろうか。ハリガンはレオナとジェリーに電話をかけ、状況を伝え合った。レオナとジェリーは検視局で槍の穂先を調べ、その結果、牛の血液と成長ホルモンが付着してることが判明。犯人は犯行の直前に食肉工場にいた可能性が高くなった。昨日、ジェリーはキースに張り付いていたが、ある場所で見失っていた。そこが食肉工場だと知ったハリガンは、現地に向うことにした。
レオナとジェリーは地下鉄で移動中、車内で騒ぎを起こしたチンピラを逮捕しようとしたその時、あの影が出現した。居合わせた乗客は次々と影に殺され、車内はパニックに。レオナが乗客を避難させている間、ジェリーは果敢にも見えない敵に立ち向かっていた。列車が急停止した後、レオナはジェリーの様子を見に行った。そこにはジェリーの姿は無く、代わりにプレデターが姿を現し、レオナに掴みかかった……。