大富豪の愛人が無教養を克服しようと努力する様を描くコメディ。
ボーン・イエスタディ
BORN YESTERDAY
1993
アメリカ
100分
カラー
<<解説>>
1950年に一度映画化されたガーソン・カニンの舞台劇の再映画化。大富豪の愛人である無教養の女性が教育を受け、知識を得ることや自分で考えることに目覚めていく様を、教育係とのロマンスもからめて描くコメディ。愛人がレディに教育されていくという内容や、舞台劇が原作であることが共通する『マイ・フェア・レディ』と比較したくなる作品だ。
本作おいては、レディとしての教育の内容が、マナーや着こなしといった体面部分に関するものより、知識や教養といった頭脳の部分に特化している。メラニー・グリフィス演じる主人公が知識を得、それを活用するすべを得た結果、物事がよく見えるようになるのだが、それに伴って、周囲の男たちの本性にも気付いてしまうという、『マイ・フェア・レディ』のロマンティックさとは逆を行く現実的な展開が面白いところである。コンゲームものを彷彿とさせるラストも痛快。
主人公は利口になっていくだけでなく、一人の意志ある人間として歩き始めようとしていくところまで描かれていく。単なるロマンティック・コメディにせず、女性の自立を扱っているところが現代的だ。主人公がディナーの席で、憲法修正第19条を暗記するための歌を披露する場面は、劇中でも特に楽しい場面だが、この法律が女性の参政権に関するものであることは、作品のテーマを象徴していると言えよう。
利口になるにつれ、はじめはセクシーだった主人公が、急速に老け込んでいくように見せてしまうのは、ステロなインテリ女性の描き方であり、やや気になるとこである。ただし、それでも頭のよさを鼻に掛けず、持ち前の優しさと愛らしさを持ちつづける主人公の姿は素敵だ。メラニー・グリフィスの魅力爆発といったところである。他のキャストも恵まれていて、ジョン・グッドマン扮する大富豪は、物語的には敵役となるが、どこか憎めない人間臭さを出しているところが良い。
<<ストーリー>>
不動産で財を成したシカゴの富豪ハリー・ブロックが、ワシントンに降り立った。公的には観光であるが、本当の目的は、基地のそばにあるショッピングモールの存続のため、基地廃止派の議員を買収すること。そんな金もうけがすべてのハリーにも、可愛くて仕方のない愛人がいた。ベカスで知り合ったビリー・ドーンとは、キュートでセクシー。だが、世間知らずでちっっとバカなところが玉に傷。議員との顔合わせのパーティでは、話についていけずに恥をさらしたり、勝手にラジオに出演して、彼との馴れ初めを語ってしまったり、とハリーの頭を痛めるのだった。
ビリーにとって知識や教養ほどどうでも良いものはなく、それよりも欲しいものをどうやって手に入れるかが大事だった。ついにたまりかねたハリーは、ビリーを教育をして教養を身につけさせることを思いついた。ハリーがビリーの家庭教師に選んだのは、ある時、取材にやってきたフリーの記者ポール・ベロール。彼は日給500ドルで教育ががりを引き受けた。ところが、授業の一日目にして、ポールはビリーの美貌に参ってしまい、別れ際のキスの誘いに応じてしまうのだった。
翌日のパーティで、ビリーは事前に暗記させられていた「知的に思わせる返答」を駆使して、ハリーとその周囲を驚かせた。ポールはビリーの潜在能力を高く評価し、「もう教えることはない」と判断した。それからというもの、ビリーはすすんで本を読むようになり、ゆっくりではあるが、読んで得た知識を我が物にしていくのだった。
やがて、知識を得る以上に自ら考えること目覚めたビリーは、これまでの自分には見ることの出来なかった現実の本当の姿に直面することになった……。
<<スタッフ>>