名家で起きた連続殺人事件に警視庁一そそっかしいあの警部が挑む。
『ピンクの豹』の続編。
暗闇でドッキリ
A SHOT IN THE DARK
1964
アメリカ
102分
カラー
<<解説>>
『ピンクの豹』に登場したクルーゾー警部を主役としたスピンオフものだが、事実上の続編、すなわち、「ピンクパンサー」シリーズの第2弾である。スタッフとキャストは前作とほぼ同じ。ただし、こま時点では「ピンクパンサー」としてシリーズ化するつもりはなかったようで、タイトルバックのアニメにピンクパンサーは登場しないし、テーマ曲もあのお馴染みのものとは違う力が脱けそうな曲(これも名曲)になっている。後に『ピンクパンサー2』が公開されているが、あちらは3作目と見るべきだろう(アラン・アーキン版『クルーゾー警部』を勘定が入れるとまた違ってくるが)。
前作でのクルーゾーは強い印象を残したものの、あくまで主役である怪盗ファントムを引き立てるコメディリリーフだった。だが、本作でクルーゾーはピーター・セラーズの水を得た魚さながらの芝居により見事に一人立ちを果たした。ストーリーはミステリー仕立てにはなっているが、実態はクルーゾーのキャラクターを前面に押し出したナンセンス・コメディであり、目くるめくセラーズの世界を心ゆくまで堪能できるお馬鹿映画となっている。クルーゾーのキャラクターが確立された本作は、「ピンクパンサー」シリーズの礎を築いたといっても過言ではない。
クルーゾーと言えば、お家芸とも言える華麗なコケだが、前作よりパワーアップし、派手に転倒・転落する場面が増えたようだ。また、派手さはないが、クルーゾーが容疑者のメードを変装して見張っていると必ず警官に咎められという、ささやかなルーティン・ギャグもクスリとさせられる。署長がクルーゾー憎さで彼を殺そうとするスラップスティックなオチは衝撃的であると共に、積み上げてきたミステリーの複線を唐突にドブに投げ捨てるという爽快感もある。署長がクルーゾーを殺そうとするこのパターンはシリーズの名物になり、次作以降に引き継がれていく。
<<ストーリー>>
深夜、名家バロン邸で運転手のミゲルが射殺されるという事件が起こった。捜査に向かったのは、どういう手違いか、警視庁一そそっかしいクルーゾー警部。彼は事件直後、現場にメードのマリア・ガンブレリが拳銃を持って立っていたという事実を知った。マリアの美しさにまいってしまったクルーゾーは、頭を殴られて記憶がないという彼女の言葉を鵜呑みにし、彼女が庇おうとしている真犯人が他にいると推理した。
クルーゾーが現場に向かったことを知ったドレフュス署長は、すぐに代わりの者と交代させた。だが、ある超大物の指名により、クルーゾーはマリア・ガンブレリ事件の捜査に戻された。
クルーゾーは身柄を拘束されていたマリアを釈放し、様子をうかがうことにした。きっと彼女は真犯人のもとに行くはずだと踏んだのだ。ところが、第二の事件が起こってしまった。庭師のショルジュが殺され、そのそばには枝切りバサミを持ったマリアが立ち尽くしていたのだ。実は、ショルジュは、事件当夜、マリアの部屋からバロンが出てきたのを目撃していて、それをネタに主人をゆすろうとしていた。だが、その事実はクルーゾーの知ったことではなかった。
これだけの状況証拠を見てもマリアを信じ続けるクルーゾーは、逮捕された彼女を再び釈放した。クルーゾーは外出したマリアを追って、ヌーディスト村に潜入するが、そこにあったのは、マリアの友人ドゥ・ドゥの死体だった。
真犯人がマリアの昔の恋人であると推測したクルーゾーは、マリアを誘って夕食に出掛けた。真犯人を嫉妬させることで、おびき出そうというのだ。案の定、真犯人はクルーゾーの命を狙ってくるが……。
<<スタッフ>>