テレビの人気クイズ番組で行われたヤラセという
全米を震撼させたスキャンダルを実話に基づき描くドラマ。
クイズ・ショウ
QUIZ SHOW
1994
アメリカ
133分
カラー
<<解説>>
ロバート・レッドフォードの監督4作目。リチャード・N・グッドウィンのノンフィクション「クイズ・ショウ 60年代アメリカ衝撃の真実」の一節を映画化。50年代のアメリカで実際に起きたテレビのクイズ番組でのヤラセ事件を通して、メディアが多大な影響力を持つアメリカの側面を描いた社会派ドラマである。
物語の中心人物は、番組の前チャンビオンのステンペル(ジョン・タトゥーロ)と現チャンビオンのバン・ドーレン(レイフ・ファインズ)。方や下町のユダヤ人。方やエリートのカトリック。失うものがない前者と守るべき地位のある後者。そして、その間に立ち敢然と不正に立ち向かう調査員グッドウィン(ロブ・モロウ)。事件の経緯と世間のリアクションという大きな流れをダイナミックに描くと共に、対比的な三人の間の濃厚な人間ドラマも大きな見どころである。
本作の題材となっているクイズ番組のヤラセだが、日本でも解答者の誰それが答えを教わっているといった噂は昔からよくある。しかし、その真偽はともあれ、噂が笑い話のネタにしかならず、問題となることはない。もちろん、テレビの過剰な演出や事実の捏造行為のすべてが許されているわけではないが、エンターテインメントが主である番組に関して言えば、視聴者にもある程度容認されていると見ても良いようだ。また、エンターテインメントでないにしても、名誉毀損としての告発を除けば、ヤラセそのものが告発されることは稀である。
そういう日本の実情を鑑みると、本作に描かれる事件に若干の違和感は否めない。しかし、ステンペルにしてもバン・ドーレンにしても、クイズ番組に挑む際の意識というのが、娯楽の提供ということよりも、国民の教育という名目のほうが大きかったことを認識しておけば、彼らの苦悩の一端を理解できるかもしれない。また、視聴者や出演者、もしかしたらテレビマン自身も、それが教育であると信じ込み、信じ込ませせられていたことは、当時のアメリカにおけるテレビの影響力のすさまじさを想像させられる。
実際のところ、この事件が当時のアメリカ国民に与えた影響がどの程度だったのかは分からない。しかし、メディアの影響力の啓発という普遍的なテーマを伝えるという目的を果たせる題材をチョイスできた時点で、レッドフォードら製作者側の勝利と言えよう。地味な題材ながら確かな演出力で魅せ、観賞後も考えされる逸品であるが、特に日本人にとっては、アメリカ人との正義感や倫理観のギャップは興味深いものがある。「ブラックソックス事件」を題材にした映画『エイトメン・アウト』と合わせて観れば、さらに興味が深まるかもしれない。
<<ストーリー>>
1956年。アメリカ中が熱狂するテレビのクイズ番組「21」。だが、チャンピオンのハービー・ステンペルは、視聴者にもスポンサーにも飽きられ始めていた。スポンサーからチャンピオンを交代させることを要求されたプロデューサーのダン・エンライトは、予選に来ていた大学講師チャーリー・バン・ドーレンに目をつけた。
エンライトはステンペルに命じられ、本番でわざとクイズを間違えた。ステンペルは敗れ、バン・ドーレンが新たなチャンピオンの座に着いた。一夜のうちにバン・ドーレンはたちまちスターとなった。一方、ステンペルは釈然としなかった。実は番組では今回のチャンピオン交代劇のような不正が、視聴率を得るために繰り返されていたのだった……。
<<スタッフ>>