クリスマスの家族旅行にひとりおいていかれてしまった8才の少年が、
コソこそ泥から家を守ろうと奮闘するコメディ。

ホーム・アローン

HOME ALONE

1990  アメリカ

103分  カラー



<<解説>>

8才の少年による空き巣撃退コメディ。監督は『グレムリン』、『グーニーズ』の脚本家クリス・コロンバス。本作にて、興行成績歴代10位内に入る(当時)メガヒットを飛ばし、一流監督の仲間入りを果たした。脚本は、青春映画の監督として知られていたジョン・ヒューズ。本作以降、ファミリー向けの作品を多く手がけるようになった。主演は抜擢されたマコーレー・カルキンは、一人での留守番の体験を通して家族に対するコンプレックスを克服し、泥棒に立ち向かう決意を固めていくという難しい役をこましゃくれた演技で見事にこなし、一躍トップの子役スターに。本作のヒットを受けて、引き続きカルキン主演の続編と、主人公を変えた3作目が劇場版として製作された。さらに、2作目の続編にあたる4作目(主演はもちろん交代)がテレビ映画として製作されている。
『ダイ・ハード』ブームの余波はこんなところにもおよんでいたのだろうか。一見するとそうは思えないが、発想はあの作品から得ていると思われるし、テーマも似ているようだ。子供までもがたった一人で悪人と戦うことを強いられることになってしまうとは……。とは言って、なにも8才の少年が泥棒と肉弾戦を繰り広げるような映画ではない。主人公の少年が駆使するのは肉体よりも頭脳。泥棒の行動を予測しながら家中に仕掛けられた様々なトラップは、さながら人間版ゴキブリホイホイ。作戦を立てた時点で勝負が決まっているようだが、子供の仕掛けたユニークなトラップに大人たちが翻弄され、まるで歯が立たないのは痛快だ。さらにコメディを盛り上げてくれるのが、マヌケなコソ泥コンビに扮したジョー・ペシとダニエル・スターン。彼らの一流のリアクション芸は、一歩間違えば大怪我に至る過激なアクションも笑い変えてくれている。
クライマックスの泥棒撃退シーンが本作の肝でありいちばんの見どころなのだが、そこ至るまでの留守番生活の描写もほのぼのしていて楽しい。一人でいると広く感じられる家(実際、豪邸だが)。怖くて入れなかった地下室。近寄れなかった隣のおじいさん。でも、ほんのちょっと勇気を出してみれば、なんてこともないものだった。些細なことだが、テーマ的にはかかせないほほえましいエピソードの数々。一人で留守番することの自由さと寂しさ。そして、ほんの数日の間に大きく成長していく少年の姿。それらすべてをタイトにまとめた脚本の達者さは、さすがヒューズ。そしてなんと言っても素敵なのは、ひとりでいるからこそ家族の大切さに気づかされるというクリスマス映画の王道を行くラストだ。もし、本作が『ダイ・ハード』の亜流だとしても、主人公を子供に置き換えることで、まったく新しいコメディに化けたばかりでなく、より明確にテーマを伝えたという意味では、いちばんの成功作と言っていいかもしれない。



<<ストーリー>>

シカゴに暮らすマカリスター一家は伯父一家とクリスマスをパリで過ごす予定。出発を前日に控え、出発の準備に大忙しだった。マカリスターの八歳の息子ケビンは、皆に邪魔者扱いされて面白くなかった。ケビンは、みんななんか消えてしまえ。と願いながら眠りについた。
翌朝、一家はうっかり寝坊してしまった。飛行が飛び立つまであと一時間あまり。大急ぎで支度をした一家は、大人四人と子供十一人が揃っていることを確認するとすぐに出発。ところが、人数を数えた時に他所の子が紛れ込んでいて、実際には一人足りなかったことには誰も気づいていてなかった。
一家が飛行機でダラス経由でパリへ向けて飛び立った頃、マカリスター邸ではようやくケビンが目を覚ました。ケビンは皆の姿が消えているのに気づくが、不安になるどころか大喜び。自分を邪魔者にしたのだから、消えてしまうなんていい気味だと思っていたのだ。ケビンは兄の他人の宝箱を開けたり、暴力ビデオを見たり、ピザを一枚を一人で食べたりと好き放題に一人の家を楽しむのだった。
その頃、マカリスター夫人ケイトは、何かを忘れたのではと胸騒ぎを覚えていた。そして、ようやくケビンを忘れてきたことに気が付いた。ケビンと電話をとろうにも、昨夜の嵐の際の倒木で電話線が切れたままになっていて連絡が取れない。一家はパリに到着するや否や旅行を中止し、折り返しの飛行機を予約するのだった。
マカリスター邸のある住宅地の一角は、どの家もクリスマス休暇を利用して旅行に出かけていた。誰もいない町の通りに停められ車には、ハリーとマーブのこそ泥コンビが乗っていた。事前に電話工事夫に化けたことで、どの家も留守であることを知っていた二人は、まずはいちばん金目のありそうなマカリスター邸に狙いをつけ、裏口のドアから潜入を試みた。裏口から物音を耳にしたケビンは飛び上がり、急いで家中の明かりを点けて回った。ハリーとマーブは、家にまだ人がいると思い、ひとまず退散するのだった。ベッドの下で震えていたケビンだったが、これではあまりに自分が情けないと思った。ケビンが勇気を振り絞って外に出て、「怖くないぞ」と叫んだ時、目の前にシャベルを持った見るからに怪しい老人が現れた。兄のバズから老人が殺人鬼だと聞かされていたからケビンは再びベッドへ逆戻り。
翌日、ケビンはヘソクリをくすねて町に買い物に出かけた。ハブラシを買うつもりで入った薬局に入ったケビンは、レジの前で昨夜の老人とまた出くわした。恐怖のあまり後ずさるように店を出たケビンは、ハブラシの代金を払っていないかったため、万引き犯として店員や警官から追いかけられるはめに。どうにか警官たちをまいたケビンだったが、自分が泥棒になってしまったことにショックを受け、落ち込んでしまった。
白昼の空き巣を終え、車で出発しようとしたたハリーとマーブは、通りをぼんやりと歩いていたケビンを危うくひきそうに。ハリーに注意されたケビンは、相手の顔を見て昨夜の泥棒だとピンと来た。ケビンは泥棒を自分の手で追い払うことを決意。その夜、ケビンは居間にに並べたマネキンを紐で操り、一家が旅行から帰ってきたように見せかけた。ケビンの目論見どおり、家の前まで来ていたハリーとマーブは諦めて引き上げていった。さすがに二日目となると一人が寂しくって来たケビン。皆が現れてくれることを願い、眠りについたのだった。その頃、パリでは、空港の搭乗口で粘っていたケイトが、同情した乗客からチケットを手に入れることに成功。スクラントンへ向けて飛び立っていた。
クラスマスイブ。ハリーとマーブはマカリスター邸に様子を見に行ったが、昨日とはうってかわって人の気配が感じられなかった。様子を見に行かされたマーブは、裏口から潜入を試みた。それに気付いたケビンは、すかさず暴力ビデオを再生。マーブは家の中から鳴り響いてきた銃声をビデオの音声とは気づかず、這う這うの体で逃げ出したのだった。たが、ハリーは家の様子を観察し続けることで、先日車ではねそうになった子供が一人でいることを確信。ハリーとマーブは今夜九時に盗みを決行することにした。家の前で相談をする二人の会話を耳にしたケビンは不安に。近所にいたサンタをつかまえ、どうにかみんなを返してくれるようにお願いするのだった……。





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