山間の小さな町に流れ着いたベトナム帰還兵ランボー。
地元警察の虐待に怒りが爆発した彼は千人の警官にたった一人で戦いを挑む。

ランボー

FIRST BLOOD

1982  アメリカ

94分  カラー



<<解説>>

デイヴィッド・マレルの小説「一人だけの軍隊」の映画化。主演のスタローンが自ら製作やスタントをこなした意欲作である。
元兵士の主人公にランボーに扮したスタローンが、その鍛え抜かれた肉体を武器に、千人の警官たちに戦いを挑んでいくというアクションもの。しかし、戦争を背景にした非常にシリアスなテーマで、言いようもない悲しみに満ちた作品である。アメリカのどの地方にもありそうな小さな町で起こうる事件として、戦場で辛酸を舐めさせ兵士たちの悲痛な叫びをより身近なものに捉えようとしたポスト・ベトナム映画の一種といったほうが良いようだ。本作からアクションを抜けば『7月4日に生まれて』になったかもしれない。
テーマは重く暗いが、はじめは何も持たなかった主人公がゲリラ戦を通して逆転に転じていくという部分は、アクションものとして面白く描かれている。また、「世間に対して憤りを抱いていた主人公がフラストレーションを発散させる」という部分も分かりやすい。これは後の『フォーリング・ダウン』(キレるサラリーマンを描いた映画)とメンタル面で通ずるものがあり、ある種の痛快さを感じるのを禁じ得ないものがある。テーマの重さというハンデを乗り越えてヒットしたのは、アクションとしての面白さに加えて、この精神衛生面も要因としてあるのかもしれない。
作品の完成までの経緯で有名な話としては、原作ではランボーが自殺するという結末であり、それに従ったラスト・シーンも実際に撮影されたが、試写で不評だったため、現在の形のようなラストなったということがある。ランボーが生き残った結果、彼が再び戦場に戻るという本作のテーマを翻すような続編が作られたことは皮肉だが、より高度なアクション映画としての評価は高く、80年代を代表するアクション・シリーズのスタンダードのひとつとなったことも事実である。
ちなみに、日本では「ランボー」という題名で認知されている本作だが、原題は"FIRST BLOOD(最初の血)"というまったく異なるもの。この言葉は「先制攻撃」を意味するスラングで、劇中でランボーがこのことに拘っている様子がみてとれる。また、「ランボー」という題名は日本のみのものだったが、この邦題でヒットを飛ばしたことを受け、続編では逆輸入される形で正式な題名となった。このようなことは極めて異例であると共に、日本での人気が特に高かったことが伺える。
80年代に2本の続編が製作されてシリーズは終わったかに見えたが、2006年に「ロッキー」シリーズの久々の続編が公開されたのに続き、本シリーズも2008年に20年振りの続編が製作された。



<<ストーリー>>

ベトナムで戦った元兵士のジョン・ランボーは、戦友と会うため山間の町にある彼の家を訪ねた。だが、戦友は既に死んでいた。母親の話では、戦友はべトムで軍がまいた枯葉剤のせいで癌に侵されたのだという。
戦友の家を離れあてもなく歩いたランボーは、“ホリデーランド”という小さな町にたどり着いた。ランボーにはじめに声をかけたのは保安官のティーズルだった。ティーズルは、寝袋一つ担いだだけの薄汚い格好のランボーを見て、彼が面倒を起こすだろうと判断した。この静かな町を流れ者から守ることを使命とするティーズルは、ランボーを追い出すように、町のはずれの橋までパトカーで送っていった。だが、パトカーを降りたランボーは、踵を返して町の方向に歩き始めた。反抗されたと思ったティーズルはランボーを取り押さえると、ナイフを所持していることを理由に署まで連行していった。
ランボーは無理やり指紋を採取された後、ホースの放水で動物のように身体を洗われた。保安官助手のガルトにいたぶられても、ランボーは黙って耐えていた。だが、彼の脳裏にはべトナムで捕虜となった時の記憶がチラついていた。ガルトの部下が髭剃り用の剃刀を取り出したときだった。剃刀の刃の閃きを見て、ランボーの脳裏にベトナムでの拷問の記憶がはっきりと蘇った。突然、恐ろしい力を出したランボーは、ガルトたちをなぎ倒して署から脱走。通行人から奪ったバイクで山へ向かって走り去っていった。ティーズルはパトカーで後を必死に追いかけたが、ついに山の奥深くに入っていったランボーを見失ってしまった。
ティーズルはドーベルマンとヘリを用意させ、部下たちと共にランボーを追跡した。ランボーは追っ手から逃げるうちに峡谷の断崖に追い込まれた。ヘリで追跡をしていたガルトは、絶壁にしがみついているランボーを発見。生け捕りにせよというティーズルの命令を無視したガルトは、ランボーをライフルで銃撃した。崖から転落したランボーはヘリに投石で対抗。ランボーを仕留めようとヘリから身を乗り出していたガルトは、石の命中でバランスを崩した機体から放り出された。ガルトは岩に叩きつけられ死んだ。ランボーはティーズルたちの前に姿を見せ、投降を申し出た。だが、ティーズルたちはランボーを信用せず、彼に発砲した。ランボーは再び山の中に姿を消した。
親友だったガルトの死を目の当たりにしたティーズルは、意地でもランボーを捕らえることを決意。日が暮れてもランボーの追跡は続いた。やがて、ティーズルたちはランボーの素性について連絡を受け、彼がエリート部隊であるグリーンベレーに所属していたことを知ることに。部下たちはやはり只者ではなかったランボーに恐れをなした。だが、ティーズルは部下たちに無うを言わせず、ランボーを追跡に従わせた。
山に銃声がこだまし、ドーベルマンの飼い主が倒れた。撃ったのはランボーだった。ガルトのライフルを奪っていたのだ。ランボーは二頭のドーベルマンを殺すと、ティーズルの部下たちを周囲に仕掛けた罠で倒していった。辺りに鳴り響く部下たちの悲鳴。部下を助けようと走り回っていたティーズルの前にランボーが現れた。ティールズの喉元にナイフを突きつけたランボーは、「これ以上自分に構うな」と警告すると、闇に姿を消した。
ティーズルの追撃が失敗したことで、事件は州警察に引き継がれた。事件を嗅ぎ付けたマスコミにより、ランボー事件は世間に報じられた。山狩りは千人規模となった。山狩りの指揮を執っていたティーズルの前に一人の軍人が現れた。軍人はランボーを戦士に育て上げたグリーンベレーの上官トラウトマン大佐だった。トラウトマンは、ランボーがどんな過酷な状況下でも生き抜き必ず敵を仕留めるよう訓練されていることを明かし、多くの部下たちが死ぬことになるだろうと警告した……。





<<スタッフ>>