人間を決めるのは環境か?資質か?
大企業の創設者兄弟の賭けで立場を入れ替えられた
金持ちのエリートと貧乏なペテン師がたどる顛末を描くコメディ。
大逆転
TRADING PLACES
1983
アメリカ
118分
カラー
<<解説>>
『ブルース・ブラザース』のジョン・ランディスによる入れ替わりコメディ。有名大学出のエリート白人青年と、貧民出身のゴロツキ黒人青年。二人を入れ替えたらはたしてどうなるだろうか? そんな疑問を持った大企業の創設者の兄弟の陰謀により、黒人青年は大企業に高給で迎えられ、一方の白人青年は一文無しのヤクの売人に転落するという物語。
二人に与えられたのはチャンス?それとも罠? ここにヒューマンな味付けが加われば、小粋なキャプラ調喜劇の出来上がりといったところだが、ところがどっこい、これはランディス映画。当事者二人がこの事件を期にして、訳知り顔で何かを悟るなんて、そんな生ぬるい話ではない。とことんまで上り詰め、とことんまで落ちぶれていく人間の姿を徹底して笑い飛ばしていくのである。
事態が一変する後半はランディス節がいよいよ炸裂。特急列車の場面は『アニマル・ハウス』を彷彿とさせる悪ふざけスレスレのドタバタだ。これを見るにつけ、悟りの境地は人間の滑稽さを受け入れた先にこそあのかも、などと思わされたりされなかったり。そして迎える怒涛のクライマックス、さらになんとも能天気にラストは清々しい後味を残してくれるだろう。
ランディスのコメディ・センスを支えるのは、息がぴったりあった個性的な俳優たち。エディ・マーフィーのお調子ぶりと、エイクロイドの焦燥ぶりは爆笑必死。老獪な会長兄弟役のラルフ・ベラミーとドン・アメチー。クールな売春婦役のジェイミー・リー・カーティス。執事役のデンホルム・エリオットもいい味を出している。
ちなみに、本作は『トワイライトゾーン』での悲運な事故をきっかけにどん底にあったランディスが、自らを励ますために作ったと言われ、事故以来のヒットとなった。本作が観る者を不思議と楽しくさせてくれるのも、陰のエネルギーから転じた陽のエネルギーが満ち溢れているためなのかもしれない。
<<ストーリー>>
47年の歴史を持つフィラデルフィアの大手商品仲買会社“デューク&デューク”。設立者の兄弟ランドルフとモーティマーは、あるひとつの命題について長年議論をしていた。それは、「人間を決めるのは環境か、資質か」というものである。ランドルフは環境が人を育てるものだと信じ、一方のモーティマーや本来持っている資質が人を決めるのだと信じていて、結論は出ていなかった。
デューク社に勤めるルイス・ウィンソープ三世は、ハーバード大のエリート。デューク兄弟の姪のペネロピのフィアンセで、将来を有望視される若手社員だった。クリスマスが近づいたある日。ルイスは給与の小切手にサインを求めるため、デューク兄弟のもとに向かった。その時、ルイスは小切手の中にビークスなる謎の人物に宛てた5万ドルを発見して不信を抱いた。ルイスはビークスについて質問するが、デューク兄弟は調査員だと言い、慌てて小切手を隠した。
その頃、デューク社の周辺では、盲目で脚の不自由な黒人のベトナム帰還兵のビリー・バレンタンイが道往く人に物乞いをしていた。だが、警官に捕まり職務質問をされると、ビリーは突然立ち上がって逃走。帰還兵というのは真っ赤な嘘。彼は人を騙して金をせびり取るペテン師だった。警官から逃れてデューク社のビルの前まで来たビリーは、ちょうど小切手を入れた鞄を携えビルから出てきたルイスとぶつかった。ルイスは鞄を拾い上げたビリーをかっぱらいと思い込み、大騒ぎ。弁明の余地も無くビルに逃げ込んだビリーは居合わせた警備員に捕まり、警察に突き出されたのだった。
騒動の一部始終を見ていたランドルフは、ビリーが貧しい環境に生まれたから犯罪に走ったのだ考え、モーティマーに“科学的実験”と称した賭けを提案した。それは、ビリーとルイスの環境を入れ替えるというもの。環境説が正しければ、ビリーはデューク社社員として活躍し、一方のルイスは犯罪に走るはずである。掛け金はいつもの金額とした。早速、デューク兄弟は実験の計画をルイスの執事コールマンに知らせた。コールマンは腹の中でデューク兄弟をろくでなしだと思っていたが、雇い主には逆らえず計画に協力することに。
留置所にいたビリーは突然保釈された。ビリーが警察を出ると、前には高級車が止まっていて、その中からデューク兄弟が顔を出した。ビリーの保釈金を積んだのは彼らだった。デューク兄弟は「恵まれない人間に対する救済活動だ」などと言ながら、ビリーにデューク社で雇うことを申し入れた。年棒は8万ドル。デューク兄弟の言葉を疑いながらも、彼らに従ったビリーが案内された先は、高級住宅地に建つ豪邸。実はルイスの家である。豪邸と執事を与えられたビリーは、とりあえずこの状況を受け入れることに。早速、ビリーはなじみの飲み屋に行ってたまったツケを払うと、その場にいた客全員を家に招いて派手にパーティを開いたのだった。
デューク兄弟は工作員のビークスを使い、ルイスの地位を転落させる手はずも打っておいた。ビークスはエリートが集う由緒正しき社交クラブに向かうルイスにわざとぶつかり、彼のポケットに記付きの現金を忍ばせた。クラブが開会されるとビークスは壇上に上がり、「この中に泥棒がいる」と宣言し、会員全員にポケットの中身を出させた。ルイスのポケットの中から出てきたのは当然、記付きの現金。ルイスはその場で告発され警察に突き出された。さらにルイスは警官を買収し、ルイスにヤクの売人の濡れ衣を着せた。身に覚えのないルイスは懸命に無実を訴えるが留置場にぶち込まれることに。
留置所の中ではゴロツキに殴られたり、犯されそうになったりと散々な目にあったルイスだったが、翌日、ペネロピによってようやく保釈されることになった。ビークスは最後の駄目押しとして、留置所から出てきたばかりの売春婦オフィリアに金を握らせた。ペネロピと一緒に警察を出たルイスは改めて、自分の無実を信じて欲しいと訴えた。その時、ルイスにオフィリアが抱きつきキス。目を丸くするペネロピの前で、オフィリアはルイスににヤクをねだった。その瞬間、ルイスの信頼は完全に失われ、ペネロピは去っていった。
ペネロピに見捨てられたルイスが今頼れるのは目の前のオフィリアだけ。ルイスはオフィリアにタクシーで自宅に送ってもらうが、コールマンに相手されず門前払い。仕方なく、銀行に向かって金を下ろそうとするが、口座は凍結されていて、クレジットカードも取り上げられてしまった。銀行からつまみ出されたルイスは路上にへたり込みながらも、家や預金が自分のものであることを必死に訴え続けた。オフィリアは切実な様子のルイスに同情し、彼を自分のアパートに置いてやることにした。
初出社したビリーは大きなオフィスを与えられ、デューク兄弟と共に商品取引を行うことになった。商品取引の仕組みもすぐに理解したビリーは、豚肉を買い急ごうとするモーティマーに、クリスマス時期を理由にもっと値は下がるだろう忠告。ビリーの予測は的中し、たちまち数10万ドルを稼ぎ出した。一方、ルイスはタクシーでオフィリアのアパートに向かう途中、すれ違った車が自分のもであることに気付いた。その車に乗っていたのは、この間のかっぱらい。ルイスは自分を陰謀にはめたのがビリーだと信じるようになった。その後、ビリーは心労で倒れて寝込んでしまい、オフィリアの看病を受けることになった。ある朝、ルイスは新聞にデューク社のホープとしてビリーが紹介されている記事を見つけ、復讐に燃えた……。
<<スタッフ>>