週末を一人で過ごすことになったアルコール依存症の小説家が
酒の誘惑に抗えずに苦悩する姿を描くドラマ。
失われた週末
THE LOST WEEKEND
1945
アメリカ
101分
モノクロ
<<解説>>
ワイルダーが監督としてはじめて高い評価を得え、巨匠として飛躍するきっかけを与えた作品。原作はチャールズ・R・ジャクソンの小説。脚本は相棒のチャールズ・ブラケットとの共同執筆。アルコール依存症を題材にした内容で、酒で身を持ち崩した小説家がひとりで過ごす週末を描いていく。
依存症患者の小説家に扮するレイ・ミランドは、一見してそれと分かるような芝居はしない。しだいに酒に行動を支配されていく者の心理状態を内面的な芝居で表現していく。頭ではやめなければならいなと分かっていても、酒の誘惑に勝てない自分に幻滅し、卑屈になっていく主人公。自分の置かれている問題を受け止めることが出来ず、自分を主人公とした物語を介して間接的に吐露することがやっとだ。まさに無間地獄である。
依存症更正施設の場面は、依存症の恐怖を視覚的に分かりやすく伝えているが、それ以外は過度に恐怖を煽ることをしない。大声で助けを求めることができず、ただあえぐように苦悩し続けるミランダの真に迫った芝居が雄弁だからだ。依存症の擬似体験をさせる本作は、一種のドラッグ・ムービーとも言えるが、観るものにもたらすものはバッドトリップである。同じテーマの作品に『酒とバラの日々』(1962)がある。こちにも傑作。
<<ストーリー>>
泣かず飛ばずの小説家ドンは、書けない苛立ちから酒に手を出し、アルコール依存症なってしまっていた。ドンと一緒にらしている兄は、弟を酒から遠ざけるため、彼を旅行に連れ出す計画を立てた。だが、ドンは心配する兄の気持ちを裏切り、また酒場に入ってしまった。ドンが酒場で飲んだくれている間に、怒った兄は一人で旅行に出発してしまった。
ドンは酒場のマスターのナットを相手に飲み続け、酔ったついでに、自分が書こうと思っている小説のことを話した。その物語の主人公はドン自身。兄や恋人のヘレンへの迷惑を省みずに酒を飲むドン。やがて、自分がアル中であることを意識し、絶望的な気分に陥る……という自嘲的な物語だった。ナットはドンの語る物語に呆れ帰り、「その小説を書いてみろ」と挑発した。
家に帰ったドンは、さっそく小説を書き始めるが……。
<<スタッフ>>