組長亡き後、組長代行と意見を違い戦争を仕掛ける若頭補佐と、
それを見守る組長の妻を描く。
シリーズ第3作。

極道の妻たち
三代目姐

1989  日本

119分  カラー



<<解説>>

極妻シリーズ第3弾。主演は岩下志麻、十朱幸代に続き、三田佳子。共演に萩原健一、萩健の対立する叔父貴に成田三樹夫、組長(極妻の夫)役に丹波哲郎といった豪華キャスト。もちろん、レギュラーのかたせ梨乃も出演。監督と撮影は、降旗康男と木村大作のコンビで、後に7作目『惚れたら地獄』で再登板することになる。
本作は前作に続いて異色の作品ではないだろうか。三田が演じる極妻は、岩下のようにカリスマ性のある象徴的な極妻でも、十朱のように女と妻の間で揺れる極妻でもない。妻であり女であり、そして母でもあるというシリーズ中もっとも多面的な存在として登場する。元宝ジェンヌで芸能界から極道の世界に飛び込んだという経歴もユニークだ。
物語は、萩健扮する行動派の極道・赤松を中心に展開し、組長の死をきっかけに跡目を取らんと、新組長に内定した叔父貴に戦争を挑んでいく様子が悲劇的に描かれていく。三田扮する極妻・葉月はもっぱら赤松を励ましたり自重させたりしながら彼を見守っていく立場であるが、葉月と赤松の複雑な関係がこのドラマの肝となっている。
葉月は赤松が自分に好意持っていることに気付いている。葉月も赤松を男と見ることもあるが、若い頃から手をかけてきて極道と育て上げたということもあり、彼への主な愛情は息子に対するものに近いようだ。赤松の写真の入ったアルバムを眺める横顔、面会室で赤松に向ける笑顔などにも母性的なものが現れている。赤松を組長にするためなら、組長の妻という立場も考えず、なりふり構わなないところも、極妻像として新鮮だ。赤松をめぐり、かたせ扮するクラブママ・操との女同士の激しい対決も見どころのひとつ。
一方、赤松の方も葉月の気持ちに気付いているようで、彼女の期待を背負いながら極道の頂点に上ろうとする。だが、それが結果的に自分を追い詰めることになってしまう。葉月と操の板ばさみにあって彷徨ううちに、別の女性に癒しを求めていく男の姿には哀愁がある。どうしてもは萩健中心の話になってしまい、極妻とは少し違うような気がするが、シリーズ中でも見ごたえのある佳作と言えるのではないだろうか。



<<ストーリー>>

一万五千の構成員を持つ関西最大級の極道組織・坂西組の三代目が倒れた。坂西の妻は、宝塚から極道という別世界に入り、今や極道の妻としての禄のついた葉月。彼女は坂西に代わり殺到するマスコミの取材攻勢の対応にあたっていた。
坂西が倒れた直後、服役していた若頭補佐・赤松徹郎が出所した。組は赤松が刑務所に入る以前とは様変わりしていた。坂西の兄弟分である舎弟頭・寺田竜吉は、ビジネス街に事務所を構え、財テクでシノいでいのだ。筋入りの極道である赤松にとって、寺田の方針には違和感があった。だが、それだけでなく、寺田がビジネスの顧問としてかつての対抗組織の組員である木曽を迎えていることが許せなかった。
赤松は寺田と対立し一歩も引かなかったが、葉月に諭されるとすぐに考えを改め、寺田に協力する約束をした。赤松が葉月に従順なのは、彼女を密かに慕っているからであった。また、葉月もそんな赤松の気持ちに気付きいていた。だが、坂西の間に子供がいなかったことが心残りだった葉月は、独り身の赤松に身を固めて家族を持つことを強くすすめた。
赤松は寺田に詫びを入れるためクラブ“モンパルナス”に向かった。赤松が寺田と和解した直後、坂西が急死したという連絡が入った。赤松と寺田が病院に向かうため席を立ったその時、ひとりのチンピラが踊り出てきて、赤松に向けて発砲した。幸い弾はそれるが、チンピラは取り逃がしてしまった。
三代目の死後、組長代行となった寺田は、幹部会に木曽を入れることを推薦した。杯を重んじる赤松にとって、木曽の受け入れは許しがたかったが、葉月との約束を守り、苦渋の表情で寺田の意見に賛成した。一方、葉月は坂西の死を期に彼の故郷である瀬戸に引き上げることにしていた。夫の死で極道の妻という重荷からの開放を望む葉月は、坂西の残していた遺言状も読もうとしなかった。
“モンパルナス”でチンピラが凶行におよぶ直前、ホステスの野方操は、松江という名のチンピラから妹の清美へ宛てた手紙を預かっていた。清美と接触し、松江の正体を掴んだ操は、赤松にその情報を売った。数日後、松江は他殺体で発見されるが、赤松と操はそれが自分たちのせいだということを清美に話すはずもなかった。松江のことを教えた見返りに一千万を手に入れた操は、赤松のすすめで“モンパルナス”を買い取り、自分の店“ローズ・タトウ”を開店した。
葉月は瀬戸に向けて発つ前夜、親しい友人たちとの送別会に出た。その時、葉月は赤松が操という女と付き合っていて、彼女のために店を与えたことを知った。葉月は赤松の相手がどんな女か確かめるため、友人を引き連れて“ローズ・タトウ”に乗り込んだ。対峙して激しくにらみ合う葉月と操。操から赤松へのヤキモチを指摘された葉月は、思わず手を上げてしまった……。





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