服役中の組長に代わり抗争から組を守ろうとする極道の妻の姿を描くドラマ。
シリーズ第1作。
極道の妻(おんな)たち
1986
日本
120分
カラー
<<解説>>
家田荘子のルポタージュを五社英雄が映画化した任侠物。これまでのヤクザ映画が裏の社会で生きる男たちの生き様を描いてきたのに対し、本作は極道の男たちを支える女たちにスポットを当てた異色作となった。「極妻」は東映のドル箱シリーズとなり、主に岩下志麻の主演でシチュエーションを毎回変えながら作を重ね、98年の『極道の妻たち 決着』まで10作作られた。現在もなお、主演を高島礼子に代えて新シリーズが続けられている。
記念すべき1作目の主演は極妻の代名詞でもある岩下志麻。シリーズ2作目では十朱幸代、3作目では三田佳子の主演となるが、4作目以降は一貫して岩下の極妻を演じることになる。後にイメージが固定される極妻にはまだ至っていないが、それでも岩下の芝居はインパクトは大。岩下に勝るとも劣らない鬼気迫る演技を見せた共演のかたせ梨乃もほとんどの作品に出演しシリーズにはかかせない顔になった。
シリーズを重ねるにつれて、作品は殺伐としているが親しみやすいという「極妻」独特の雰囲気が出てくるが、本作はまだ伝統的なヤクザ映画のノリを踏襲している。しかし、それがかえって男社会の中で必死に生きていく女たちの姿を浮き彫りにした。物語も、今まさに極道の妻として生きている姉と、これから極道の妻になろうとする妹の姿が良く描かれていて、極妻の敵討ちを主とした活劇色が強まっていく後の作品と異なっている。極道の女たちの真の姿を鮮烈にとらえているところは、シリーズ中でもっとも原作のルポタージュの意向が汲まれていると言えるかもしれない。非情なラストも印象的だ。
<<ストーリー>>
粟津組の組長の妻である環は、夫が服役している間、ひとりで組を守っていた。ある日、上位組織である堂本組の組長が病死し、新組長として若頭の柿沼が任命された。だが、それを不服とする舎弟頭の蔵川と小磯たちが堂本組を離れて、新しい組・朋竜会を旗揚げした。こうして堂本組は分裂。小磯は傘下の組に命じて柿沼を暗殺した。
環はカタギの妹の真琴が今度の抗争に巻き込まれることを心配して、彼女に絶縁を持ちかけていた。だが、その頃、真琴は旅行先で知り合ったヤクザ・杉田と恋をしていた。真琴は杉田が柿沼の暗殺に関与していることは知らなかった……。
<<スタッフ>>