スピードが一定以下になると爆発する爆弾を仕掛けられたバスから
乗客を救い出そうとするSWATが活躍を描くノンストップ・アクション。

スピード

SPEED

1994  アメリカ

116分  カラー



<<解説>>

『ダイ・ハード』、『ブラック・レイン』などのヒット作で撮影をつとめたヤン・デ・ボンの初監督作。スピードが一定を下回ると爆発してしまうというバスをシチュエーションとして、乗客を救出しようとする過程で発生する様々なトラブルや困難を間断なく見せていくアクションもの。監督は撮影出身だけあり、街中でのロケを中心に撮影されたバスの疾走シーンを中心に迫力ある映像で畳み掛けていく痛快作である。デ・ボンは監督としては一発屋となってしまったが、主演のキアヌ・リーヴスとサンドラ・ブロックは本作のヒットでスターの仲間入りを果たした。
本作はここ十数年の間に作られたアクション映画のなかでも屈指の面白さであることは、映画ファンの中でも異論はほとんどないと思われる。それだけの支持を得られた理由は、アクションそれ自体の面白さだけでなく、そのアクションの現場となるものが、エレベータ、バス、地下鉄といった日常生活で普通に利用とする乗り物にあるというところである。ご都合主義過ぎるという批判もありうる脚本も、想像しやすい身近なスリルを描いたという点が補っている。また、旅客機や客船といった比較的特別な乗り物を舞台にした場合はここまでの支持が得られなかっただろうことは、続編との評価が歴然としていることでも明らかだ。
大作アクションといえば、ヒーローものが主流だった当時にしては、キアヌ演じるSWAT隊員があまりでしゃばっていないところは、かえって新鮮だった。主人公はあくまで暴走するバスであり、それこそ監督が見せたかったものだったということもあのかもしれないが、ヒーローが犯人と派手に対決する場面はほとんどない。暴力よりもギリギリの駆け引きと騙しあいという頭脳戦に絞ってストーリーが繰り広げられていくころは、ヒーローものに食傷していた当時の観客には歓迎されたであろうし、特に日本人にとっては控えめなヒーローはなじみやすいものがあった。
ちなみに、デ・ボンと共に本作がデビュー作である脚本のグレアム・ヨスト(後に『ブロークン・アロー』や『フラッド』を手がける)によれば、本作は黒澤明脚本の『暴走機関車』を原案にしているという。しかし、同じ脚本をヒントにしたと言われる『新幹線大爆破』の方が「一定のスピードに落ちると爆発する」という設定が共通している点などで内容的に近いようだ。そのため、映画ファンの間では『スピード』と『新幹線大爆破』がペアで語られることが多い。



<<ストーリー>>

ロサンゼルスのある高層ビルで十数人の市民を乗せたエレベーターが爆発。非常ブレーキも爆破され、ワイヤーでかろうじて宙吊り状態となった。ロス市警へ爆破を行った犯人より金を要求する電話がかかってきたため、SWAT隊が乗客の救出に対応することになった。犯人は、制限時間までに金が用意できない場合、爆弾でワイヤーを切断し乗客を殺すという。SWAT隊の若き隊員ジョン・トレビンとハリー・テンプルは、隊長にマクマホンに命じられ、エレベーターに仕掛けられた爆弾を確認することに。二人がエレベータシャフトにやって来た時、既に犯人の提示した制限時間まで十数分と迫っていた。
間に合わないと思ったジョンは、ビルの屋上にあった建設用クレーンに目をつけ、それとエレベータをつないで急場をしのぐことに。だが、クレーンとエレベータをワイヤーでつないだ瞬間、SWAT隊の動きに感づいた犯人が制限時間前にも関わらず爆弾のリモコンを操作した。ジョンとハリーは、エレベータの重みに耐え切れなくなったクレーンが落下する直前に、乗客全員を無事救出。ジョンとハリーは近くで犯人がこちらの動きを探っていたことに気づいた。そして、貨物用エレベータの中で犯人を発見。逃げ出した犯人はハリーを人質にとりながら地下駐車場へ向かうが、ジョンたちから姿が見えなくなった瞬間に自爆したのだった。
それから数日後。ジョンとハリーが英雄として表彰された翌朝の午前八時。ジョンの目の前で友人の乗ったバスが爆発炎上した。ジョンは突然のことにどうすることも出来ず立ち尽くしていたが、その時、近くの公衆電話が鳴った。電話の相手はこの間の爆弾魔だった。彼は死んでいなかったのだ。犯人は先日の高層ビルの計画を邪魔されたことへの復讐として、別のバスにも爆弾を仕掛けたことをジャックに告げた。爆弾はバスのスピードが時速50マイル(80キロ)を超えたところで起爆スイッチが入り、時速50マイル以下になったら爆発。乗客を降ろした場合にもリモコンで爆発させるという。そして、十一時までに金を用意することを要求してきた。ジョンは犯人が出したヒントから爆弾が仕掛けられたバスを特定し、発見したそのバスを車で追跡した。
爆弾の仕掛けられた市バス2525は、15名の乗客を乗せてハイウェイを走り、スピードは既に時速50マイルに達していた。車をバスに近づけたジャックは運転手のサムに呼びかけ、スピードを落とさないよう警告。そして、サムに開けさせた乗降ドアからバスに飛び移った。ジャックは唖然とする乗客に事情を説明しようとしたその時、一人の乗客の男が立ち上がり銃を抜いた。犯罪を犯していた男はジャックが自分を追ってきた勘違いしたのだ。ジャックは男を落ち着かせようとするが、別の乗客が男に飛び掛りもみあいになってしまった。さらに、その弾みで銃が暴発し、弾に当たったサムが重症を追うことに。サムの代わって咄嗟にハンドルを握ったのは、彼と顔見知りの女子大生アニー・ポーターだった。
アニーに運転を任せたジャックは、ハリーと連絡を取り合いながら、バスに仕掛けられた爆弾を確認した。爆弾に使われていた腕時計は退職警官に送られるものだった。一方、バスは標識や渋滞中の他の車を押しのけながら、ハイウェイを降りた。マクマホンの指揮で警察車両が出動し、街中をひた走るバスを先導。いつしか、事件を嗅ぎつけたマスコミもヘリや車でバスを追跡していた。マクマホンは行く手に車の少ないハイウェイを選び出し、そこへバスを誘導した。
ジョンは重傷者だけという許しを犯人から得て、サムを警察の輸送車に移すことに成功した。だが、その様子を見ていた一人の婦人客もサムに続いてバスを降りようとした。その瞬間、乗降口が爆発。転落した婦人客はバスの後輪に巻き込まれて死亡した。意気消沈するジャックと乗客たちに追い討ちを掛けるがごとく、マクマホンから避けられない困難が迫っていることが伝えられた。実は走行中のハイウェイは未完成で、行く手の道路が15メートルに渡って途切れているのだという……。





<<スタッフ>>