NYで殺人事件を起こしたヤクザを追い、大阪の街を駆け巡る日米の刑事。
国境を越えた刑事の友情を描くポリス・アクション。
ブラック・レイン
BLACK RAIN
1989
アメリカ
125分
カラー
<<解説>>
『エイリアン』、『ブレード・ランナー』のリドリー・スコット監督が日本の大阪を舞台に撮ったノワール風味の刑事アクション。路上に水をまいた上にスモークをたき、光と影を巧みに浮かび上がらせることで、なにわの街が危険な香りいっぱいの暗黒街に変貌している。見慣れた大阪がソリッドでメタリックな質感で描き出されるという、『ブレード・ランナー』を彷彿とさせるファンタスティックな世界観が魅力の作品となっている。
ニューヨークの刑事が現地で事件を起こした容疑者を日本へ護送。ところが、油断をした隙にまんまと容疑者に逃げられてしまう――というころが物語の発端。マイケル・ダグラス扮する主人公は、アメリカの刑事ものありがちなスタンドプレーを好む刑事。そんな彼の相棒となったのは、高倉健扮する刑事。これがまた、組織に殉じるを潔しとするような典型的な日本の警官なのである。二人が考え方の差に苦しみながら容疑者を追っていく、という話になっていくのだが、単にカルチャーギャップを興味本位に描くのではなく、男と男の友情を重きを置いているあたりは、ちょうど、ウォルター・ヒルの『レッドブル』にも近いテーマの作品といえるかもしれない。
日本映画ファンにとっては、本作には松田優作の遺作という大きな付加価値がある。物語の後半は大阪の街シーンが減り(これには街中での撮影にかなりの制限があったためだとか)、せっかくの積み上げた世界観が急速に崩れていったことは明らかなのだが、しかし、このままトーンダウンすることなく映画を最後までもたせたのが、優作の芝居だったことも疑いがないのである。本作では、短く髪を刈上げた優作が、若々しくアグレッシブな野心家のヤクザをギラギラした眼光で熱演。度々、主人公をおどけた仕草で挑発するシーンも強い印象を残した。
<<ストーリー>>
ニューヨーク市警の警官ニック・コンクリンは、妻と別居中。また、売人から金を受け取っていた同僚の汚職疑惑に巻きこまれ、窮地に立たされていた。疑惑の件で観察部との面談があったその日、ニックは相棒のチャーリー・ビンセントと一緒に入ったレストランで殺人事件を目撃。店に入ってきた日本人が、商談中の二人の男を瞬く間に殺害し、木箱を奪っていったのだ。ニックは逃走した日本人を追いかけ、身柄の確保に成功した。
殺された男たちの身元を確認したところ、二人はマフィアとヤクザだった。事件の背後にマフィアとヤクザの抗争がある可能性があったが、大使館は黙秘を続ける犯人の佐藤を引き渡すよう要求してきた。佐藤の護送役に選ばれたのはニックだった。ニックは自分が厄介払いされようとしているのを感じつつも、渋々命令を受けることに。ニックとチャーリーは佐藤を連れて飛行機で日本に発った。
飛行機が大阪につくとすぐに府警から警官がやってきて、佐藤の身柄を引き取っていった。任務を終えたことでホッとしたニックの前に、府警を名乗る別の警官が現れた。気づいた時には既に遅く、佐藤はその仲間と思われる偽警官と共に行方をくらましてしまった。
府警の大橋警視から一方的に責任を問われたニックとチャーリーは、アメリカへ送還されそうになった。だが、ニックが事件捜査に関わりたいと強く迫ると、大橋は彼らの滞在を許可した。大橋からニックたちの案内兼監視役を命じられたのは、英語が話せるベテラン刑事の松本正博警部補だった。
その夜、クラブ“ミヤコ”で殺人事件が発生した。山田に付き添われニックとチャーリーが現場を見に行くと、殺されていたのは空港で見た偽警官だった。クラブのホステスに事情を聴こうとしたニックは、店で働くシカゴ出身の女ジョイスと知り合った。警察では部外者として扱われるニックとチャーリーは、行動にも制限があった。自由に捜査も出来ないことに、ニックの苛立ちは募っていった。
松本が事件の重要人物について照会した結果、逃走中の佐藤浩次はチンピラ上がりから異例の速さで幹部にのし上がったヤクザ、そして、“ミヤコ”のオーナーである菅井国雄はヤクザの親分だった。ニックはナンバー2とボスの争いである可能性を考えた。
ニックは、佐藤のアジトが発見されたことを松本から知らされ、武装警官による手入れに強引についていった。ニックたちの乗り込んだアジトには、佐藤の手下たちがいたが、佐藤自身の姿はなかった。ニックは周囲の警官に見つからないように、テーブルの上に置かれていたドル紙幣をポケットに忍ばせた。
松本は、ニックたちが手入れに参加したことについての責任をとらされ、監視役からはずされた。また、ニックがアジトで金を盗んでいたのを見ていた松本は、そのことをニューヨーク市警に報告していた。汚職の疑惑が持たれているニックは、職を失いかねない松本の告げ口に怒り、二人は対立した。
ニックがアジトからドル紙幣を持ち持ち帰ったのは、刑事の勘からだった。ニックは松本と大橋の前でド紙幣を燃やして見せ、それが偽札であることを証明した。その上でニックは、佐藤が持っていった木箱の中身はおそらく偽札の原版だろうると自分の見解を述べた。
その夜、ニックとチャーリーは“ミヤコ”で飲んだ。店には松本の姿もあったが、ニックは昼間のことを気にしていて、仲たがいしたままだった。席を立ったニックは、ジョイスを捕まえ捜査への協力を求めた。だが、ジョイスは「ここでは自分たちはガイジン」と言い、協力に応じようとしなかった。
ニックとチャーリーが歩いてホテルに帰る途中、バイクの男が現れ二人を挑発してきた。遊びのつもりで挑戦を受けたチャーリーは、男に上着を取られてしまった。チャーリーは男を追いかけるが、その男が佐藤であることに気がつかなかった。それに気づいたニックはチャーリーに逃げるよう叫んだ。佐藤は刀を振りかざして、チャーリーに迫った……。
<<スタッフ>>