犯罪のなくなった2032年のロスの街を舞台に
冷凍睡眠から蘇った前世紀の凶悪犯と刑事の戦いを描くSFアクション。
デモリションマン
DEMOLITION MAN
1993
アメリカ
115分
カラー
<<解説>>
スタローン、スナイプス共演による近未来SFアクション――舞台は2032年のロサンゼルス。そこに暮す人々は体に埋め込まれたコンピュータ・チップにより、徹底的に管理されている。管理に従う人々は健康的、平和的な生活を送るようになり、街に犯罪はまったく起こらなくなった。そんな街に、冷凍睡眠刑に処されていた凶悪犯が脱獄を成功させる。ある最終目的のために殺人を繰り返す犯罪者。彼を止めることが出来るのは、同じく冷凍睡眠刑に処せられていた一人刑事だった――スタローンの刑事とスナイプスの犯罪者の戦いを壮絶なアクションの連続で描いていく。
まだまだ現役アクションスターのスタローンと、大スターにハイテンションの怪演で挑んだスナイプスの対決が良好。漫画チックなシチュエーションをはじめとした全体の雰囲気は、ややB級を匂わせているが、火薬や量や銃器の数もなかなかのもので、当時のアクション大作映画にもひけをとらない。後半からクライマックスにかけての、例のごとくの分かりやすい展開も、アクション大作映画の王道を行くものだった。
アクション一辺倒に見えながらも、ユートピア/デストピアもののSFとしては正統的で、かつ、良心的な内容である。平穏すぎて刺激を欲しがる警官。市民の絶対的な支配を企む権力者。管理社会に背を向け人間的な生活を望むレジスタンス。20世紀からやってきた刑事と犯罪者の対決が、未来に暮す様々な立場の人々を心を揺さ振り動かしていく風刺的な展開は、しっかりとSFしていて見応えがある。また、そこそこのリアリティを感じられる程度に丁寧に描かれた未来社会も見どころであり、例を挙げれば、裕福な階級の住まいや服装が和風(“健康指向→和食→着物”という連想か?)なのが興味深い。
この手の作品に期待されるカルチャーギップ・ネタもふんだんに用意されている。すっかり骨の抜かれた未来の人々と、生活様式や社会通念の変化に気付く度に、いちいち戸惑うスタローンが可笑しく、実はここにいちばん力が入っているようにすら思える。もしかしたら、後半のアクション・シーンよりも前半のカルチャー・ギャップ・コメディの方が楽しめるかもしない。また、パロディ的なサービスもあり、サンドラ・ブロック演じるヒロインのオフィスに『リーサル・ウェポン』のポスターがこれ見よがしに張られていたり、未来ではシュワルツェネッガーが大統領になっていたという話(まったく絵空事でなくなってしまったのが恐ろしい)に、スタローンが過剰に反応したりする様がお楽しみだ。
<<ストーリー>>
1996年。ロス・アンジェルスの刑事ジョン・スパルタンは、犯人逮捕のためなら、建物や器物の損壊も辞さないため、“ぶっ壊し屋(デモリションマン)”と呼ばれていた。ジョンは、2年間追いつづけていた恐怖犯サイモン・フェニックスを、彼のアジトである廃空港へ追い詰めた。バスジャックの人質30人の居場所を吐かせようとしたが、サイモンは追及に応えずアジトを爆破。廃墟の中から人質全員の遺体が発見された。サイモンは逮捕されたが、ジョンも故意に人質を犠牲にした罪で逮捕され、70年の冷凍睡眠の刑に処せられた。
それから時が経ち、2032年。ロスはサフランシスコと合併し、サン・アンジェルスという都市に変わっていた。2010年に起きた大震災以来、コクトー博士により再建された街では、人々は体に埋め込まれたチップによって管理されていた。健康や思想に悪影響があるものは街から徹底的に排除されたため、人々は健康で犯罪もほとんど発生しなくなっていた。だが、そんな清潔で平穏な管理社会に嫌気がさしている者たちも少なからずいた。“クルー”と呼ばれる反逆者たちである。彼らは、管理の及ばない地下空間に住まい、革命のチャンスを窺っていた。
サン・アンジェルスの警察に務める婦警のレニーナ・ハックスリーは、20世紀に強い憧れを持つ変わり者で、映画や博物館で独自に研究をしていた。また、世の中な平和ではあまり役に立たなくなった警察の業務に退屈していて、密かに何か事件が起こらないか期待していた。そんなある日のこと、冷凍刑務所で脱獄事件が発生した。警報を受けて現場を監視モニターで確認した警官たちは、看守が三人も殺害されるという事態を目の当たりにして震撼した。殺人事件は震災以来起こっていなかったのだ。
脱獄したのは、仮釈放審査を受けていたサイモン・フェニックスだった。彼自身も不思議に思ったのだが、なぜか手錠を外すためのパスワードを知っていたのだ。街に出たサイモンは、はじめて見る街頭のコンピュータ端末の使い方もなぜか知っていて、それを使いこなして必要な情報を集めていった。彼の頭の中には、エドガー・フレンドリーという名前があり、それを殺害するという強い義務に動かされていた。エドガー・フレンドリーとは、クルーのリーダーの名前だった。
警察は早速サイモンの逮捕に出動した。だが、凶悪犯に対応するノウハウを持っていなかったため、警官達は成す統べなくサイモンの暴挙を見ていることしか出来なかった。サイモンは逃走を続け、瞬く間に11人が殺されていった。脱獄犯の連絡はコクトーのもとにも届いた。コクトーはジョージ・アール警察庁官に、全力で対処するように要請。アールは、96年当時を知る警察の長老ザックの提案を受け、かつてサイモンを逮捕したことのあるジョン・スパルタンを解凍することを決断した。
36年振りに解凍されたジョンは、まず、妻や子供の生存を確認。だが、震災で亡くなったことを知らされることに。落ち込んだジョンだっだか、感傷に浸る間もなくアールからサイモン逮捕のために働くよう命令された。ジョンはすっかり変わり果てた未来の社会に戸惑いながらも、レニーナとその相棒アルフレードたち警官と共に行方を暗ましたサイモンを捜すことに。サイモンにはチップが埋め込まれていないので、彼が犯罪を犯さない限り居場所は特定できそうになかったが。だが、ジョンは、刑事の勘からサイモンが銃を欲しがっていると考え、それが唯一手に入る博物館に行くはずだと推理した。
ジョンたちが博物館に向かうと、案の定、サイモンが武器展示コーナーで大暴れしていた。思わぬ形で再会することになったジョンとサイモンは、博物館内で激しい銃撃戦を繰り広げた。ジョンをレーザーガンで牽制し、博物館を脱出したサイモンは、偶然、近くを通りかかったコクトーと秘書のボブと鉢合わせ。サイモンはコクトーに銃を突きつけるが、なぜかそれ以上彼に歯向かうことが出来ず、追ってきたジョンの姿を見ると逃げていった。
その晩、ジョンとレニーナは、コクトーの危機を救った礼として、ピザ・レストランでの食事に招待されることになった。だが、ジョンは、この街で救世主と言われるコクトーの思想が気に入らず、反感を抱いていた。その時、ジョンは刑事の勘で事件を嗅ぎつけ、レストランの外に出た。ジョンの勘の通り、地下から次々と現われたクルーが暴動を起こした。ジョンはクルーを叩きのめして、暴動を収めるためが、彼ら奪おうとしていたものは食べ物の瓶だった。ジョンは、地下に飢えた人々がいることを知り、コクトーに対する疑念を強くした……。
<<スタッフ>>