実在の英雄・黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)の活躍を描くシリーズ第2弾。
動乱の中国を舞台に、外国排除を目的とする教団と対決する。

ワンス・アポン・ア・タイム
天地大乱

( ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱 )

黄飛鴻之二 男兒當自強
ONCE UPON A TIME IN CHINA II

1992  香港

113分  カラー



<<解説>>

19世紀末に実在した中国の武術家・黄飛鴻を描いた映画は無数に存在する。關徳興が同一の役で八十作近も主演して、ギネス・ブックにも認定されたことは有名である。81年に關徳興のシリーズが終了した後、しばらく黄飛鴻映画は作られなかったが、十年振りの91年にツイ・ハークとリー・リンチェイ(ジェット・リー)のコンビにより復活させた。黄飛鴻の若々しく精悍な魅力とスタイリッシュなアクショにより、黄飛鴻映画の刷新をはかり、現在の映画ファンの間に、“黄飛鴻=リー・リンチェイ”というイメージを決定付ける至った。
新シリーズ2作目となる本作は、ストーリー、アクション共にスケールアップし、シリーズ最高傑作されることが多い。また、ジョージ・ラムとジャッキー・チェンが歌った「男兒當自強」は、香港映画ファンの間で人気が高い主題歌だ。映画のオープニングは、その勇ましい「男兒當自強」が流れる京劇風の舞踏シーン。これから始まる活劇への期待が含まる素晴らしいオープニングだが、本編はその期待をはるかには上回る、まさに“大活劇”と呼ぶに相応しい極上のエンターテインメントで楽しませてくれる。清朝時代が終り告げ、国際化へ向かい始めた中国の動乱という複雑なテーマを外国人排除をうたう秘密結社との対決という劇的な物語で見事に描き出している。若き孫文まで登場するサービス旺盛の展開も見応え十分だ。
アクションシーンは前作のアイデアを膨らませたものが多いが、それらのアイデアが最高の形で実を結んでいる。今回はドニー・イェンを迎え、リー・リンチェイとの人間業を越えたアクションの共演が堪能できる。華麗な棒術対決は溜息ものだ。クライマックスの教祖との対決は、その斬新さではアクション映画史に残る名シーンと言えるだろう。椅子を利用した戦いの末、いつのまにか、「地面に足をついたら負け」のようなルールに変わり、文字通りの空中戦。積み上げられた不安定な椅子や布(!)の上を繰り広げる、舞のような動きに、ただただ呆然。武術であるクンフーをファンタスティックな芸術にまで昇華させることに成功させた映画は、後にも先にもこの作品だけかもしれない。
ちなみに当初日本では、本作はシリーズの第1作目として劇場公開されていた。その後、『天地争覇』(第3作)、『天地黎明』(第1作)という変則的な順番でビデオ発売されているので、中古のソフトを購入したりレンタルする時は注意が必要だ。リー・リンチェイは、ツイ・ハークとの関係決裂後、93年に『天地雄覇』という、まるであてつけのようなパロディ編に主演。「ワン・チャイ」シリーズは、チウ・マンチェクに主演を交替し、第4作、第5作がられた。リー・リンチェイの黄飛鴻は、第6作『天地風雲』で復活した。



<<ストーリー>>

清朝末期の中国。医学会に出席するため、黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)は、弟子の梁寛(フー)、叔母の十三姨(イー)を伴ない、広州にやってきた。ウォンたちは街に着いて早々、異国人と異国文化の排除をうたう白蓮教という結社が、街の人々を脅(おびや)かしていることを知った。
翌日、ウォン自身も学会で講演中に白蓮教の襲撃を受けることに。ウォンは物騒な広州から発とうとするが、その時、彼のもとに、外国語学校が白蓮教に襲われているといる情報が飛び込んできた。ウォンたちが現場に駆けつけると、大人たちは皆殺しにされ、残っていたのは床下に身を隠していた子供たちだけだった。
子供たちを連れて領事館に逃げ込んだウォンたちは、学会で通訳をしてくれた孫文という男と再会した。だが、その時既に、領事館は白蓮教に包囲されていて、ウォンたちは外国人たちとともに、身動きが出来ない状態に陥ってしまった……。



<<キャスト>>

[黄飛鴻]
リー・リンチェイ (ジェット・リー)

[陸]
ジョン・チャン (デイヴィッド・チャン)

[十三姨]
ロザマンド・クワン

[クン]
ション・シンシン

[ラン提督]
イェン・チータン (ドニー・イェン)

[チャン]
ヤン・イークァン

[梁寛]
マク・シウチン

[孫文]
ジャン・ティエリン



<<スタッフ>>

[監督/製作]
ツイ・ハーク

[製作総指揮]
レイモンド・チョウ

[脚本]
ツイ・ハーク
チャン・タン
チャン・ティンスン

[撮影]
アーサー・ウォン

[音楽]
リチャード・ユエン
ジョニー・ニョー

[美術]
エディ・マ

[編集]
マク・チーセン (マルコ・マク)

[アクション監督/武術指導]
ユエン・ウーピン

[スタント]
ション・シンシン