死後、記憶を保ったまま10年前に戻った二人の女性。
二度目の人生で成功をおさめた二人だったが、10年後に再び死を迎え…。
藤子・F・不二雄の漫画の映画化。
未来の想い出
Last Christmas
1992
日本
118分
カラー
<<解説>>
“SF=すこしふしぎ”を提唱していた藤子・F・不二雄の漫画を森田芳光が映像化。主人公を女性に変更し、主題歌にワム!の名曲を主題歌に据えて、“クリスマスの奇跡”をイメージした企画、そして、映像の美しさにより、藤子・F・不二雄が原作とは思えない小洒落たファンタジーになっている。原作ものに関しては、原作のイメージを変え過ぎるという批判も多い森田監督だが、テーマが最重要な本作にとっては、大胆な翻案も成功といえるだろう。主演の工藤静香と清水美砂の相手役に、デビット伊東と和泉元彌を配するという当時にしても異色のキャスティングや、狂言回的な役の原作者、そして、彼と親交の深い有名漫画家たちの特別出演も話題になった。
もし、人生をやり直せたら何をする?――というのは、誰でも一度は夢想したことがあることだろう。夢をかなえる? 莫大な富を手にする? 好きな人と幸せになる? 主人公の二人は、繰り返し経験するいくつかの人生の中で、それらを一通りやってみせる。そして、未来を知っていることで、人生のすべてが思い通りなることに満足した二人は、一度きりの人生しか送れない人々を憐れむ。しかし、やがて、二人は、一度きりの人生を懸命に生きるそれらの人々から、人生の本当の素晴らしさを教わることになる――“人生は精一杯生きるからこそ意味がある”というメッセージはありきたりかもしれない。しかし、新しい未来が訪れることを切望させるクライマックスが、それを素直に受け入れさせる。
人生のやり直しというSFの追及する永遠のテーマのひとつを徹底して描いていた本作は、ジャンル的にはタイムトラベルものの一種ということになる。しかし、時間を遡るために、タイムマシンを用いるのではなく、記憶を保ったまま精神だけ過去の自分自身に戻るというところが面白い。実は、これは古典的な方法ではあるものの、意外にもあまり描かれることのないので、なかなか新鮮である。構成も工夫が凝らされていて、人生の繰り返しという事態に巻き込まれた主人公たちの奇妙な体感時間を、映像として上手く現している。過ぎ行く未来と来るべき過去を巧みに交錯させた時空の描き方は感動的だ。時制を前後させた複雑な構成だが、複線の張り方が上手いため、混乱することなく観ることができる。
<<ストーリー>>
1991年のクリスマス。売れない漫画家の遊子は、街角で占い師の銀子と出会い意気投合。だが、遊子は翌日のゴルフ・コンペの最中に倒れ、急死してしまった。死んだはずの遊子が気がつくと、彼女は1981年にいた。
遊子は売れっ子漫画家の夢をつかむため、来年にヒットするはずの漫画を盗作した。そんな遊子のもとへ、彼女の盗作を知るという人物が接触をはかってきた。遊子の前に現われた人物はなんと、銀子だった。銀子も遊子の直後に死に襲われ、この時代に戻っていたのだった。
銀子は、前の人生で失敗した結婚を諦め、遊子に借りた金を競馬につぎ込んで増やした。そして、それを元手に経営コンサルタントとして活躍した。銀子は、前の人生でも憧れていたデザイナー・倉見と付き合うが、彼のデザインは認められることはなかった。一方、盗作の罪悪感に苛まれていた遊子は、狂言師・夏木と出会い恋に落ちた。だが、夏木はすぐに外国へ旅立ってしまうのだった……。
<<スタッフ>>