自らの最期を意識した大女優が探し求めた究極のお墓とは?
死をテーマにしたコメディ。
お墓がない!
1998
日本
109分
カラー
<<解説>>
“極妻”のイメージがすっかり定着した岩下志麻のコメディ初主演作。岩下が世間知らずの大女優をトボケた感じで演じているが、これも世間一般の持つ彼女に対するイメージのひとつなので、実は素なのではないかと思えるほどの自然体に感じられる。したがって、“極妻”とのギャップを楽しめる作品というわけでもない。また、“コメディ”というジャンルに分けられてはいるが、爆笑できることを期待してはいけない。死を題材にしているが、それをチャカすのではなく、死を厳粛に受け止め、それと真摯に向い合った真面目な作品なのである。物語の前半は比較的笑いが多いが、後半はシリアスに展開。理想の最後を描いた劇中劇のラストシーンは感動的だ。
世の中これだけ豊かになり、大抵の欲求が満たされたとなると、最後に欲望が向かうものは、やはり自分の死ということになるのかもしれない。しかし、自分のことであっても、死について好き勝手にものを言うことは憚られるようだ。本作は、死についてのフラストレーションを、大女優という世間の常識から逸脱した人物を借りて、解消することを試みている。主人公が「生まれてくるのは自分の自由に出来ないのだから、死ぬときは自分の自由にしたい」という信念を持っているのは痛快だ。巻き起こる騒動は、大女優にありがちなワガママとして描かれているが、葬儀屋や坊主に頼らず、自分で死体を運び、自分で葬るという、誰もが夢見る最期を表現したのは、さぞ勇気がいったことだろう。変な言い方になるが、胸のすく映画である。
<<ストーリー>>
女優の桜崎節子は、次の主演映画で癌の娘を持つ母親役を演じることに。役にのめり込むあまり、節子は自分も癌で余命わずかではないかと思いこんだ。だが、孤児として育った節子は、自分の入る墓がないことに気付いた。身分を隠し、自分の入る墓を慌てて探し始める節子。彼女が墓を探すのは、自分が良家のでであるという嘘をつきと通すためでもあった。
老婦人に化けた節子は、墓地斡旋会社を訪ねた。墓地斡旋会社の若者・川島は、節子が癌であることを知ると、親身になって彼女の相談を受けた。墓だけでなく、葬儀にも興味を持ち始めた節子は、川島に方々を案内させるが……。
<<キャスト>>
[桜咲節子]
岩下志麻
[一風弓]
安達祐実
[川嶋一平]
袴田吉彦
[田部井医師]
金田明夫
[高木登]
田口トモロヲ
[川嶋克子]
森山良子
[川嶋初美]
中山忍
[辻沼信一]
村野武範
[西大路陽三]
石橋蓮司
[松江敏子]
高橋ひとみ
[白鷺幸三]
橋爪功
天地真理
秋野太作
ミッキー・カーチス
三上大和
織田無道
友里千賀子
桜井センリ
竹下宏太郎
<<スタッフ>>
[監督]
原隆仁
[製作]
鈴木光
久板順一朗
関一由
[企画]
鈴木光
[プロデューサー]
山本勉
三沢和子
山形淳二
[製作担当]
原田文宏
[助監督]
杉山泰一
[脚本]
大森寿美男
[撮影]
前田米造
[音楽]
大島ミチル
[音楽プロデューサー]
祐木陽
伊藤圭一
[主題歌]
小比類巻かほる
「この素晴らしき世界」
[美術]
和田洋
沖山真保
[録音]
橋本文雄
[照明]
加藤松作
[編集]
川島章正
[スクリプター]
森永恭子
[スクリプトボード]
川越淳
[衣裳]
岩崎文男
[音響効果]
伊藤進一
小島彩
[スタイリスト]
高橋匡子
勝俣淳子
中村和子