連れ去られた赤ん坊取り戻すため、団結した“おたく”たちの活躍を描くコメディ。

七人のおたく
cult seven

1992  日本

99分  カラー



<<解説>>

様々なジャンルのおたくたちが結集し、誘拐された赤ん坊を取り戻すために活躍する様を描いたコメディ。お笑いコンビのウッチャンナンチャンの初主演作で、彼らがかつて志していた映画への情熱や、当時のバラエティ番組からの影響も感じさせる総合エンターテインメント作である。黒澤×香港アクションといったノリがなんとも痛快。映画のアクの強さに引きずられてか、ラストに流れるバブルがム・ブラザーズの主題歌もなんとなく広東語に聴こえるほどだ。
本作が作られたのは、町の身近な変人さん“おたく”が、ひとつのサブカルチャーとして認知されてきた頃である。現在のおたくカルチャーはというと、以前では考えられないほど開き直られ、その上に居直られた感があり、変態的な部分もオープンされてしまっているが、この頃はまだ控えめな存在だったようだ。ただし、おたくの持つ暗いイメージとは抑えられ、趣味に生きる好人物として描かれているところが、今観ると興味深い。
「いろんなおたくを集めたら面白いだろう」という発想の作品だが、社会的にまったく無意味な存在であるところの“おたく”が、困っている人間のために戦うという物語はなかなか感動的だ。協調性がないからおたく化したはずの人たちが、協力し合って困難に立ち向かっていくという展開は意外。しかし、そうなるのには、おたくの中にはジャンルを越えた共通のモチベーションがあるからなのだろう。そして、そのモチベーションが何かといえば、やはり、現実逃避なのだろう。そのことは、都会で現実に屈したおたくたちが、再び島に戻ってくるくだりで示されている。現実に対する憤りが悪役との対決というかたちで爆発するクライマックスは、おたくの哀愁がにじみ出ていて、カタルシスすら感じられるものになった。
ところで、登場するおたくは六人しかいないように見えるが、パソコンおたくの彼女が、他の六人のおたくたちの“おたく”だったということなのだろう。映画おたく的な観かたをすれば、彼女が『七人の侍』でいうところの菊千代の役というわけなのである。



<<ストーリー>>

フィリピーナのティナの赤ん坊の喜一が、元夫の高松に無理矢理連れて行かれた。ティナの隣りの家に住むミリタリーおたくの星亨は、隣家での事件を知り、喜一を取り戻すことを決意。星は一緒に戦ってくれる仲間を求めて、町でおたくたちをスカウトした。事情もよく分からずに集められたのは、無線おたくの水上令子、格闘技おたくの近藤みのる、アイドルおたくの国城春夫、パソコンおたくの田川孝。それに、田川の彼女の湯川りさを加えた六人は、網元の高松が支配する漁村の孤島・井加江島に乗り込んでいった。
星の指揮により、喜一奪還作戦が決行された。おたくたちには、それぞれの特技を生かした役割が与えられていた。令子は、高松家の電話の盗聴する役。田川は、録音された会話の音声を合成する役。近藤は、電話でおびきだされて無人になった高松家の扉を蹴破る役。国城は、逃走用の足を用意する役だった。作戦は計画通りに進み、星たちは喜一を連れ出すことに成功。だが、あと一歩のところで高松とその部下たちに見つかり、喜一も奪い返されてしまった……。



<<キャスト>>

[星亨]
南原清隆 (ウッチャンナンチャン)

[近藤みのる]
内村光良 (ウッチャンナンチャン)

[田川孝]
江口洋介

[湯川りさ]
山口智子

[丹波達夫]
益岡徹

[国城春夫]
武田真治

[水上令子]
浅野麻衣子

[高松一]
中尾彬

[京野ことみ]
京野ことみ

[杉本理恵]
杉本理恵



<<スタッフ>>

[監督]
山田大樹

[製作]
村上光一

[企画]
堀口壽一
岡田裕介

[プロデューサー]
河井真也
茂庭喜徳

[助監督]
富永憲次

[脚本/原作]
一色伸幸

[撮影]
藤石修

[音楽]
山辺義大
崎久保吉啓

[主題歌]
バブルガム・ブラザーズ 「JUST BEGUN」

[美術]
石井巖 (いしいいわお)

[照明]
吉角荘介

[録音]
中村淳

[編集]
阿部浩英

[スチール]
笹田和俊