腕利きのボディガードと依頼者のトップ女優の恋を描くラブ・ロマンス。
ボディガード
THE BODYGUARD
1992
アメリカ
130分
カラー
<<解説>>
人気スター、ケビン・コスナーとカリスマ的歌手、ホイットニー・ヒューストンが共演した大ヒット作。コスナー扮する孤高のボディガードと、ヒューストン扮するわがままなスターのロマンスを、見えない脅迫者との戦いというサスペンスを交えながら描く。映画と合わせて、カントリーのカバー「オールウェイズ・ラヴ・ユー」を含むサントラもヒットした。この曲は、劇中では二人の思い出の曲であり、ラストシーンでレイチェルが歌いロマンスを大いに盛り上げる。ちなみに、典型的なお別れソングなのに、なぜか、日本では結婚式でかかる定番曲になったりもした。
"The Bodyguard"という題名は、主人公二人がデートで一緒に観る黒澤明の『用心棒』のアメリカ公開題と同じであるように、日本文化からの影響が見られる作品である。『用心棒』について語り合う場面がクライマックスの重要な複線となっているだけでなく、コスナー扮するボディガードの生き方自体にも武士道思想が反映されている。武士道に生きるストイックなヒーローを演じたコスナーはとにかく格好良いのが、そんな彼がはからずも恋に落ちてしまうというところが、本作の面白さのすべてと言っても過言ではないのである。
住む世界がまったく異なるボディガードとスターは、はじめのうちはソリが合わずに互いを毛嫌い。だが、執拗な脅迫者に立ち向かううち、二人の距離は急速に近付く……というベタ過ぎるシチェエーションは、そのままラブ・コメにもなりそうなほどである。しかし、「互いをプロと認めてリスペクトし合う」という進歩的で男女関係が提示されているところは興味深い。また、ヒロインが単なる守られる対象で終わるのではなく、一人の自立した人間として、ボディガードと対等かそれ以上の関係を築いていく部分も、現代の恋愛を象徴しているようだ。このあたりも、女性の観客にアピールし、ヒットに繋がったのかもしれない。決して、コスナーが格好良いだけの映画ではないのである。
<<ストーリー>>
フランク・ファーマーはかつて、シークレットサービスにいたが、彼の非番の時に起きたレーガン狙撃事件に責任を感じて辞任した。今はフリーのボディガードとし、依頼者の警護にあたっていた。ひとりの依頼者に長くつかないことが彼の信条だった。ある日、フランクは、人気女優で歌手のレイチェル・マローンのマネージャーのビル・デヴァニーから警護の依頼を受けた。楽屋で爆発事件が起こったことが依頼のきっけだった。大スターは苦手なフランクだったが、週3000ドルの報酬を条件に警護を引き受けることにした。
ビバリー・ヒルズにあるマーロンの自宅を訪ねたフランクは、危機管理の意識が著しく低いことにまず驚かされた。警備がいるにも関わらず、誰でも門を通してしまい、邸の中は公園のように大勢の人がうろうろしていたのだ。当のレイチェルも自分が狙われているかもしれないという意識はまったくなく、用心棒のトニーや宣伝担当のサイやとも友達みたいな関係だった。レイチェルはフランクを雇う代わりに、8歳になる息子のフレッチャーには警護のことを話さないで欲しいと彼に頼んだ。フランクは、考えもフィーリングも異なるレイチェルとは一緒にやっていけいなと判断し、邸を出て行こうとした。ビルはフランクを止め、これまでにレイチェルに宛てられた脅迫状の山を見せ、何者かが邸に忍び込んでいたことを教えた。サイはそれらをレイチェルに知らせていないという。
翌日からフランクは、レイチェルの邸の警備の強化と改装を指示。手持ちぶさたにしていた運転手のヘンリーを助手に指名した。邸の中を見回っている最中、フランクは、レイチェルの秘書をしている姉のニッキーと出会った。彼女は10代の頃にバンドを組んでいて、そこそこ人気があったが、レイチェルを入れた瞬間から彼女に人気を奪われてしまったのだという。その時からニッキーは、レイチェルの活躍のために身を捧げることにしたのだった。フランクは、レイチェルが外出すれば彼女のそばにぴったりとそばに張り付き、その警護は徹底していた。だが、レイチェルは、ファンが寄ってくるのも拒否するフランクに窮屈さを感じていた。というのも、まだ彼女は自分の置かれている立場を理解していなかったからだった。
ある夜、レイチェルが新作ビデオのPRのため、急遽、ディスコに出かけることになり、フランクも同行した。ディスコに到着したレイチェルは、自分宛ての脅迫状が届いているのを見つけた。レイチェルはフランクやビルに尋ね、はじめて、自分が狙われていることを知った。フランクはステージの中止を考えたが、レイチェルは危険を承知でステージに上がり、新曲を熱唱。だが、興奮した客たちがレイチェルを担ぎ上げてしまった。危険を感じたフランクは、消火剤を客席に撒いて、レイチェルを助け出し、裏口から店を脱出したのだった。邸に帰り着いたフランクは、レイチェルをフレッチャーと会わせて安心させた後、彼女をベッドまで運んだのだった。
翌朝、邸内の設備を点検していたフランクに、レイチェルが駆け寄ってきた。昨晩のことでフランクを見直したレイチェルは、「ボディガードがついていたのではデートもできない」という理屈で、ボディガード自身であるフランクをデートに誘った。その夜のデート中、レイチェルはフランクに、依頼者の身代わりになれるかどうか尋ねた。フランクは頷き、「身代わりになれるかはボディガードの根性次第」と言った。レイチェルには、「そんな根性は信じられない」とフランクに言った。フランクはレイチェルを自宅に誘い、そのまま、ベッドを共にすることになった。だが、翌朝のフランクの態度は一変していた。仕事を忘れ、依頼者と寝てしまったことを深く後悔したフランクは、「こんなことでは君を守れない」とレイチェルに言い、それから彼女と距離を保つようになった……。
<<スタッフ>>