母親に捨てられた経験を持つストリートチルドレンと、
水族館で出会ったシャチ“ウィリー”の心を触れ合いを描くドラマ。
フリー・ウィリー
FREE WILLY
1993
フランス/アメリカ
112分
カラー
<<解説>>
少年のシャチの交流を描くファミリー向け動物映画。ハリウッドでは、古くは『フリッパー』といった映画などでイルカと子供のふれあいを描いてきたが、本作は、相手役の海洋哺乳類として、獰猛なイメージのあるシャチを扱ったところが面白い。やさしいイメージの定着したイルカでは収まりが良すぎるが、ある程度の大きさのあるシャチには、子供とも体格の差や泳ぐシーンに迫力があり、作品にサプライズを与えている。好評につきシリーズ化され、主演の少年(J・J・リクター)とシャチ(ケイコ)のどちらも交替することなく3作目まで作られた。
捨て子だった主人公の少年が、自分と近い境遇にあるシャチと共感し合い、それと同時に里親との関係を築いていくという、ドルフィン・セラピーを思わせる心の癒しの物語である。終盤には、シャチを家族と会わせるために少年が奔走するという、アドベンチャーも用意されている。トレーラーにウィリーに乗せる場面など、一部のシーンはロボットを使った撮影のようだが、プールでシャチと少年が遊ぶシーンは吹き替えなしの本物で、奇跡的な交流が感動的だ。とにかくシャチの姿が美しく撮られいて、クライマックスのウィリーの大ジャンプ(これもロボットっぽいが)は、息を呑むほど。少年の抱える問題の描き方は、ファミリー向けにしては全体的にややトーンは暗いが、過度に家族主義を押し付けることなく、誠意のあるものになっている。ラストもハッピーエンドで誤魔化すことなく、問題解決のヒントを与えるのみに止まっているところが良い。
<<ストーリー>>
少年ジェシーが母親に捨てられたのは6年前。彼は少年院に預けられたが、母親からの連絡はいっさいなかった。現在、ジェシーは少年院を度々、抜け出しは、同じ境遇の友人ペリーたちと路上生活を送っていた。
夏のある夜、ジェシーはマリーン・バークに忍び込んで、シャチの水槽にペンキで落書きをしていたところを、警備員に取り押さえられた。少年院に連れ戻されたジェシーは、監督係ドワイトから里親が挙っていることを知らされた。その日からジェシーは、彼を引き取る契約を少年院と結んだグレンとアニーの夫婦のもとで暮らすことになった。
里親と暮す傍ら、ジェシーは水槽のペンキを消すため、マリーン・バークに通った。毎日、水槽と向き合ううち、ジェシーはガラスを隔てた水の中に居る12歳のシャチのウィリーに興味を引かれていった。ハイダ族出身の飼育係ランドルフや調教師のレイの話によると、ウィリーは人に懐かず、芸をしてくれないのだという。
ウィリーがランドルフたちに懐かないように、ジェシーもグレンたちに心を開けないでいた。母親がいつか迎えに来ると信じていたジェシーは、グレンたちが少年院から自分の監視を依頼されていると考え、彼らと距離を置いていた。グレンはそんなジェシーの気持ちを汲み取ると、“相互協力”を彼に提案し、友人のような関係を築こうとした。
ある日、いつものようにパークに出かけたジェシーは、ハーモニカにウィリーが反応することに気付いた。ジェシーはもっとウィリーと触れ合いたかったが、ちょうど、ペンキを落とす作業が終わり、もうパークに来る用事がなくなってしまった。
その夜、ジェシーはウィリーに別れを告げるため、家を抜け出し、パークに向かった。ジェシーは誤ってプールの中に落ちてしまうが、これまで人間嫌いだと思われていたウィリーによって助け上げられた。ジェシーはランドルフに送られ、家に帰った。グレンとアニーに叱られたジェシーだった、ランドルフの機転により、夏の間、パークで働かせてもらえることになった。
翌日、約束どおりパークに出かけたジェシーは、レイとパークの経営側の人間がウィリーをめぐって言い争っているのを目にした。経営側は、パークの呼び物にするために外海からウィリーを捕獲してきたが、レイが芸を仕込めないでいたからだ。パークの社長ダイアルと支配人のウェイドは、多額の保険料がかかるウィリーをどうにかして始末しようと密かに考えていた。
ジェシーはウィリーにエサをやるうちに、いつしか彼と心を通わせるようになっていた。レイとランドルフは、ウィリーがジェシーと一緒に遊んでいるのを目撃して、目を丸くした。レイはジェシーを介してウィリーに芸を教えることにした。ウィリーはジェシーの言うことをよくきき、順調に芸を覚えていった。
ジェシーはウィリーの調教師として充実した日々を送る一方、グレンやアニーとの関係もうまくいっていた。だが、母親のことに話に及ぶと、ジェシーは冷静ではいられなくなり、グレンたちに対して態度が頑になってしまった。ついにグレンも苛立ちを爆発させ、このままジェシーを家に置くかどうかで、アニーと言い争いをしてしまうのだった……。
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